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第37話 親子と宴の夜

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ツリーグルはトシユキたちを研究所に案内した。
あの精霊石のある部屋だ。
「トシユキたちのおかげで魔力エネルギーは十分に集まった。
あとは、トシユキがエネルギーに息吹きを注ぎ込んでくれれば完成するはずじゃ がははは」

俺は 精霊石に両手を触れた。
少し暖かいような血の通った感じのする精霊石とその奥にはリーファの母親である美しい女性が祈りを捧げている。
「なんで 祈っているのだろう?」
眠りについた理由については聞かされていなかったので目覚めたら聞いてみたい。
それよりもこれで親子対面をさせてやれると思うと体に力が入ってくる。

「やるぞ!」

ツリーグルが合図をすると建物が真っ暗になった。
エネルギーを精霊石に集中するためだ。
俺も同時にニンニクマンの力を精霊石に放出する。
するとグリーンに光る石の光が命の輝きを放ち始めた。
そして俺の体は・・・

「ぐ・・ぐぐぐぐ」

ニンニクマンのエネルギーを流し込むのと同時に精霊石からのエネルギーが俺の体の中へ入ってくる。

「ぐ。。がぁぁぁぁ」

黒いエネルギー。
これは 色々な人たちの想いのエネルギーだ。
 大好きだったあの子に実は彼氏がいたというエネルギー
 奥さんと仲良くなって覚悟を決めたのにからかわれていただけだったというエネルギー
 ずっとあの子を見ていたら、周りに好きな人がバレてからかわれたことにより告白できなかったエネルギー
 踊り子に人生を捧げて応援しようと思った矢先に結婚発表をされてしまったエネルギー
数々の負のエネルギーが俺の中に流れてくる。。

そして脳裏に何かが直接訴えかけてきた。

「我は。。龍王。すべての心を我に明け渡すのだ!さあ ニンニクマンの力をすべて流し込め。
お前の中に我を住まわせろ!
よ~し 我が手伝ってやろう がはは」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ」

「なんじゃ!精霊石が黒く光りを!!」
「トシユキ!!!」
「トシユキ」

ガシャンンンンンンンン!!!!

精霊石は砕け散り、エリーゼがトシユキの胸に飛び込んできた。
二人は無意識に抱き合ったまま動かない。
固唾かたずを飲む周囲に時間が止まる。

最初に動き始めたのはエリーゼだった。
エリーゼは立ち上がるとゆっくりと リーファの方を向く――表情は硬い。
だけど 両手を広げてハグをする姿勢をとるとすべてを理解しているようだった。

「お母さん」

リーファがエリーゼの胸に飛び込むとエリーゼは涙を流し少しずつ感情が現れ始めた。
「エリーゼ」
いつの間にかにツリーグルも仲間に加わり親子は硬く抱き合った。

熱い熱い対面が続いていたがトシユキは立ちすくんだまま。
ミリーとアケミがい心配をして声をかける。
「トシユキ大丈夫?」
我に返ったトシユキは一瞬だけ禍々しく見えたがすぐに笑顔を取り戻すと
リーファたちを祝福しているようだった。
それからトシユキは何を考えているのかも告げずに隣の部屋へ移動する。
大きな重たい鉄のビラを開けるとそこには元の世界に戻る転移ポータルがあるはず。
開かれた扉の先を見てトシユキは「ふっ」と安どの息を吐いた。

アケミが心配そうに後を追うとトシユキは振り返りざまに真実を伝える。
「ニンニクマンに 返信する力を失った。でも これを見てくれ!」
トシユキが一歩動くと部屋の奥が見える。
「まあ!私たちの世界が見えるわ」
そこには 起動している転移ポータルの姿があった。

転移ポータルは安定しており停止する気配はない。
それどころか街の入り口にある転移ポータルも軌道を始めて色々な人々が街から街へと
異動することが出来るようになったのだ。

ツリーグルはみんなを屋敷に集めた。
エルフの里のエルフたちや様々な人たちを集めた。

「今日は エリーゼが目覚めた宴の席を設けた! みなのもの今日は朝まで飲んで、踊って、歌うのじゃ!」
「おー!」

宴は盛り上がり俺も初めてのお酒を飲んだ。
「頭がふらふらして気持ちいいぞ~」

お酒を飲むと肩の荷がすべて降りた気持ちになる。
俺がヘロヘロと歩いていると それを見かねてなのかリーファが側に来た。
「トシユキ 酔っ払い? これ 食べて。後でね へへへ 」

何だか苦い物を一つ 口に含まされた。
俺にはまだお酒は早いという事なのか?
初めて飲んだんだから仕方がないだろう。
しかし。。なんだろう。 体が熱い。。 眠くもなってきたし
今日は休むか。。
俺は ベッドに向かってそのまま仰向けに眠ってしまった。

一方そこの宴の会場では思いもよらない人物が姿を現した。
「あなたは・・ 長老さま」
「ほっほっほ みなのもの久しいな。実はな転移ポータルが復活したことでここへ来ることが出来たのじゃよ。
それよりも ツリーグルよ!
大変な事をしてくれたものじゃ。
それから エリーゼ――申し訳ないのだが二人切りで話がある」

エリーゼはこくりとうなずくと「はい」と一言だけ言い残して長老と部屋に消えていった。
そして再び宴が盛り上がり何事もなかったように深夜になった。

そのころ 熟睡をしているトシユキの部屋に訪問者が現れる。
俺は眠っているのか・・でも 体が熱い。
お酒ってあまり飲まないほうがいいんじゃないか?
ああ 水が飲みたい。
でも 指先一本も動かせないぞ。
ニンニクマンともあろうものが デバフを食らうなんてあははは。
もう ニンニクマンじゃなかったな。。
少し悲しい気もするけど リーファたち親子が再開できて俺たちの世界への転移ポータルがも復活したのだからよかったのかもしれない。
ニンニクマン・・・いいや 球根マンって奴は言ってたな。
俺が力を失ったことで アイツはまたどこかに現れるような気がする。
だって あいつは世界樹の木の生まれ変わりなんだから。

それにしても体が熱いし おもい・・・
目をゆっくりと開けるとカーテンをしていなかったせいで月明かりが部屋に入ってきている。
ぼんやりとした焦点が徐々にあってくると そこには上に座っているリーファの姿があった。
「そんなところで、何してるんだ?」
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