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小人の弱点

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「大変だぁ!」
門番のガネルが丸太小屋のほうから走ってきた。
スーちゃんのいる丸太小屋だ。
何かあったのか?

「丸太小屋が小人に襲われている。
小人がいっ、生き返ったんだ。
木を生やしてボロボロな体のまま無理やり動いている」
「バカな。死んだ小人が生き返るなんて聞いたことがないぞ」

みんなは困惑しているようだ。
ガネルは一人のようでスーちゃんはどうしたのか?
親方は心配そうにスーちゃんの事を尋ねると ガネルが見回りから戻ったときにはもう
小屋が小人に取り囲まれていた。
スーちゃんが小屋の中にいることは明らかだけど火の矢を使うわけにも行かず 
数も多いので助けられなかったと言うことだった。

ボロボロの小人か?
普通の小人よりは弱そうだけど、
「ゾンビみたいでチュね」
「地に帰ったコビト、生き帰ラナイ、ナゼ?」

早く手を打たないと扉をこじ開けてスーちゃんが襲われてしまうかもしれない。
親方のスーちゃん救出作戦が始まった。
まず 戦士マクアと賢者スデーモを村まで呼びにガネルと足の速い数人を村へ向かわせると、
今度は救出作戦を立てだした。
「林道だ。小人をおびき出して俺たちが作った林道を迷路のように利用すればスーは助けられるはずだ」
「やるぞ!」「おー!!」
村人たちは逃走ルートの確認や
火の使えそうな場所に火をおこしたりなどの準備をし始めた。

「あまりいい作戦ではないでチュね。時間がかかりすぎるでチュ」
「小人の全員が小屋から離れると思っているゲロか?ありえないでゲロゲロよ」
「素早いコビト、いたら、ヤラレル人でる」

小人専門家のコルビンまでがそういうならこのままにはしておけない。
「オーレンス ちょっと アレを持ってきてくれないか?」
「アレってなんだ? どうせ行けばわかるだろう。まあ ちょっと行ってくるわ」
俺は作業に紛れてそっと抜け出した。
苔の生えた森を抜けて小屋を目指していると
「あれを見るでチュ オーレンス!」
とサブロウが叫んだ。

地面に小人の形のくぼみが出来ていた。
寝かせられていた小人たちが起き上がった後のようだけど・・
そして周辺には俺が貰った腐った玉ねぎ入りのラブレターと
同じものが破り捨てられ散乱していた。

小人に ラブレター・・・そうか そうだったのか!
「死んだ小人になんて ひどい事をするんだ!」

小屋には何体の小人が向かったのかはわからない。
もしかしたら、すでに何体かが中へ入ってしまっているかもしれない。
急ごう。

「ドン!ドン!ドン!ヒュー ギュー」

小屋にはたどり着くと小人が群がっていた。
小人のセイジがドアを叩き、下半身のないコショウが窓をよじ登ろうと壁にしがみつくが
生えている木が邪魔をして引っかかっていた。

小屋の屋根には天窓が作られていいるが
あそこから入れれば都合がいい。
けど屋根の上に上がらなくちゃいけないな
隣にはいている針葉樹から屋根に飛び移れないか?・・
無理か。ロープみたいな道具がいる。

「あそこから 入れないかな?ツタを探してロープみたいにならないかな?」
でも ロープと言ってみたものの 都合よくロープになるツタがあるわけじゃないし
二階の高さの窓にどうやってロープを縛ればいいだろう??

「任せろ ゲロ!屋根の高さまであの木に登るんだゲロ!」

フロンの作戦で 俺は木に登った。
そして・・「ベローチェ!!」とフロンは舌を伸ばすと小屋の壁を突き破って
フロンの舌が小屋と木をつなぐロープになった。

よしよし、小人は俺たちに気付いていない。
下を見下ろすと小人がガサガサとしていて落ちたらアリの様に群がられるだろう・・。
屋根にたどり着いて木の方をみるとフロンが手を振っていた。
そうか 協力的だなって思ったけど小屋に行かなくてもいいから手伝ってくれたわけだ。
それでいいんだよ!! フロンありがとうぉ!!と無言だけど手を振って合図した。

「ガサガサガサガサガサ!!」

中を覗き込むとドアが壊されて下半身のない小人たちが、
ゾロゾロと入って来ていた。
すでに窓から入り込んだ小人もいたようだけど
バルコニーのような中二階の階段を上がっては 木の枝を引っかけて落っこちたりしていた。
奥で細長い火種の入ったツボを抱きかかえて震えているスーちゃんが見える。
「スーちゃん、こっちだ!!」
「お、オーレンス」
俺は窓から飛び降りた。

「ガサガサ」
なだれ込むように階段を駆け上がってきた小人が迫るけど 
スーちゃんは硬直して動けないようだ。
間に合うのか! 
コルビ・・・んと叫ぼうとした。
多分 コルビンでも間に合わないだろうけど やらないよりましだろう!
そう思ったとき、時が止まった。
・・・・・
スーちゃんのお茶を入れるフィルターのネックレスが光り出した。

「スー!!」
「お母さん?」
「そうよ スー」
「スーちゃん。。」
「お おばあちゃん?」
「そうだよ」
「スーちゃんっていうんだね。娘の小さい頃そっくりだね。初めまして」
「はっ はじめまして」

「さあ 勇気をだして・・
頑張って走るのよ。
負けないで。
スーは お姉ちゃんになるんでしょ?」

「がっばって! スー!!」
重なる複数の声がスーちゃんに勇気を与えた。
「うん スーがんばる!」

ニーマン使い様。奇跡をありがとうございました。どうかスーをお願いします・・・
・・・・・
時が動き出した。
今のは一体なんだったんだ?
スーちゃんのお母さんは生きているはずだ・・フィルターに込められた想いなのか?
わからないけど 俺の広げた両手にスーちゃんは火種の入ったツボをもってこちらへ走り出した。
あれは ガネルが持っていた火種のツボか?
スーちゃんには大きすぎて動きにくいだろうしなんでそんなものを持っているんだ?
と思ったその瞬間。
スーちゃんは ツボを小人に投げつけた!

小人に投げつかられたツボは割れて中から灰と火の粉が飛び出した。
「ボボボーボ!メラメラ」

小さな火の粉だったのに一瞬で小人に火が付くと
炎はまるで揮発性の油でもしみ込んでいたかのように燃え上がった。
隣の小人にも燃え移って もがいているようだけど、
なんで こんなに小人が燃え上がるんだ?
無事に俺に抱き着くことのできたスーちゃんは
「火種のツボなのぉ。小人は火が弱点なのぉ」と
自慢げに知識を披露する、おませな顔付きになり引き上げられた口元には自信が溢れていた。
小人は火に弱かったんだ、それで門番のガネルは火種の入ったツボと矢をもっていたんだな。

「ぼぼぼぉぉ ゴトンゴトン・・・」
だけど 燃え上がる小人は燃えながらこちらへ向き直して迫ってくるぞ。
そして 新たに侵入してくる小人たちが 
燃えた小人を踏み付けて、追い越して、次々と燃え移っているのだけど・・・
「ボボボーボ!メラメラ」
これってさ 俺たちの弱点にもなってないか?
「ガサ、ガサ、ぼぼぼぉぉ・・」
炎に包まれた小人たちが 俺たちに迫ってくる。
炎の熱と香辛料の木の焼けるニオイが ローストビーフを作る窯の中を体験させてくれた。
このままでは俺たちまで丸焼きになるぞ。
「怖いよぉ オーレンスぅ~」
スーちゃんは事態に気付いて怖がると、俺をホールドするように抱き着いた。

サブロウに小屋が燃え尽きるまで隠れるのは無理だし・・
俺は近くにあったテーブルを引き寄せると窓の下へ運んで窓に手を伸ばした。
「ダメだ。届かない・・」
もう少しなのにあとちょっと足りない高さだ。
こうなったらスーちゃんだけでも屋根に放り投げるか?

「メラメラ! ドンドン!」
燃えた小人たちがとうとうやってきた。
テーブルを取り囲むように増えてきたな。
炎の熱が肌の表面をヒリヒリさせてきた。
もう 窓に放り投げるしかない!!
スーちゃんは? 
スーちゃんを見ると 口が半開きになって目が座っていない。
確りするんだ!放り投げたら 必死に窓を掴んんでよじ登ってもらわなくちゃいけないんだから!

「はひぃ・・ふぅ。。スーね。お家に帰るの。ふふふ」
ニヤニヤとほころんでいくスーちゃんの顔が異常だった。
そして なんか俺の股間が暖かいぞ。
どうやらスーちゃんアーマーの特殊能力が発動してしまったようだ。

これじゃ スーちゃんを窓に放り投げても自力でよじ登ってくれないし、
登ったところで怪我を覚悟で屋根から飛び降りる勇気もだせないだろう。
あと少し、椅子が一つあれば窓に手が届きそうなんだけどと言うことだった。

「オレの イス、使え」
コルビンの声が聞こえてくるとドームの中からイスが飛び出してきた。
今朝 コルビンが作ったテーブルとイスのイスがドームから出てきたぞ。
イスを使って屋根の明り取りの窓から出て屋根から外に出た。
強い風が俺とスーちゃんの汗を飛ばす。
屋根まで来たけどどうする? 一か八か、針葉樹の枝に飛びつくか?

「オーレンス そのまま飛び降りるでチュ!!」
そうか、その手があったな。

「スーちゃん 飛び降りるぞ!」
「うん。 あははは」
スーちゃんは 夢の世界へ行ってしまって全く恐怖を感じなくなっていた。

サブロウ!頼む!!
「でチュー」

地面に着地する頃合いを見計らって、サブロウは空間をのばし下半身が雪の上に着地するように沈んだ。
スーちゃんは気が動転しているようで、まだお花を摘みに行ってしまったまま帰ってきていなかった。
それにしても スカートのおかげでスーちゃんは無傷で逆に俺がお漏らししたみたいになってるな。
スーちゃんが気が付いた時に俺がやったことになってないよな?
大丈夫だよな?覚えているよな?

「オーレンス 木の上から降りたいゲロ、シクシク。キャッチするゲロ!」
サブロウにキャッチしてもらって音もたてることもなく、そのまま走って森の中へ逃げた。

「ここまで熱が来てるなんてすごい火力だ」
そして木製の小屋は大きな炎を上げて燃え上がっていった。
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