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第1話 オープン

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「そんな値段で売れるかよ!!相場って言葉を知らないのか?」

バシン! バシン!

「じゃぁ いいわ。ほか当たってみるから」

お客がセカンドバッグをギュっとつかむと後ろを振り向いて自動ドアから出ていった。

叩きつけた手を見ると手のひらが真っ赤になっていて マンガじゃないがピリピリとしびれている。
グー・パーと広げてみるたけど しびれたままだし目の前の視界がぼやけてきた。
のどが痛いし。
でも 顔に手をぬぐっても涙はついていなかった。

ふぅー

肩を掴まれたので振り向くと同僚の「平岡」だ。
平岡は肩から背中に手のひらを伸ばすと ゴシゴシと軽くこすり「気にするな」といった。

椅子から立ち上がって自動販売機へ行くと スマートフォンをかざしてタップするとコーヒーが出てくる。
ストレスフリー時代とかで 5つの商品がスマートフォンに表示されるらしいけど俺の場合は一つしか出てこなかった。

裏口から外に出て缶のタップを開けてコーヒーを飲む。
「はぁ~ コーヒーが飲みたい」
俺はスーツのポケットから テナント(旗)を取り出すとテナントには
「異世界ルマ・スエート」と書かれている。握りしめた。
そして仕事を終えて 家にいるペットのモルモットとたわむれてから山を目指した。
家から少し離れたところに緑豊かな山があって山を登って右へ左へ進んでいくと湖が見えてくる。
テントを張って屋根にテナントを付けた。

リュックを出してマキを割って細かく裂いていく、ナイフの後ろを引っ張ってマグネシウムの棒を取り出すとナイフで削り最後の一撃を与える

ジュジュジュゥゥ・・ パチパチパチ

炎が膨らんでいき小さなマキのログハウスの屋根に火が回っていく。
アミを乗せて鍋をかけると「北海道産天然水」と書かれたペットボトルから水をそそいだ。

コーヒーミルに豆を入れて取っ手を回せば香りがこぼれだし 取っ手を回す回数に予想を立てる。

ドリッパーも用意して大体の準備が整った。
後は待っていれば 今晩もきっと現れるだろう。

「こんばんわ」

現れて声をかけてきたのは 金髪の髪に耳こそ尖ってないが木の葉のように身軽そうな女性だ。

いつのまに!

気が付けば女性は俺の横に座っていた。
「コーヒーを淹れていたんだ。よかったら飲んでいかないか?」

「コーヒー? 紅茶より美味しいかしら?」
「それは 本人しだい」
「じゃぁ 頂くわ」

ドリッパーにコーヒーを淹れて お湯をゆっくり注いでいくとコーヒーが膨らんでいく、
しばらく待つ場合もあるけど 今回は待たずにお湯を注いでいく。
琥珀色のしずくが 一滴・・また 一滴と 落ちていく。

「今日は 私の誕生日なの。それで森の外までやってきたのよ」
「へぇ 何歳になったんだい?」
「200歳よ」
「もっと 若く見えるよ」
「もう! あなたまで子供っぽいと思っているのね。せっかく大人になれたのに・・。でも本当の大人になるのはもっと先なのかしら?」

コーヒーのドリップが終わりカップに注ぐと 彼女に手渡した。
手に取ると口に近づけて 鼻から息を吸うと口を付けて飲みだした。
そしてカップを両手に持って胸のあたりで握りしめると「美味しいわね」とウィンクをした。
だけど カップを見るとまだ半分以上のコーヒーが残っているようだ。
俺はリュックからマシュマロを取り出すと串に刺してあぶりカップの中へマシュマロを入れる。
「こっちも試してみてよ」

彼女は口を付けて すすった。そしてカップを上にあげるとカップの中は空になっていた。
「ありがとう」

「どういたしまして」

女性はお礼にドングリの実をくれて去っていった。
試しに一つ食べてみたけど 苦くて食べられるようなものじゃない。
テナントを下ろして テントの中で眠った。
・・・・

会社のイスに座ってパソコンの更新データをチェックしていると自動ドアが開いてお客が入ってきた。
この前のお客だ。

「あの・・その・・ 俺にとっては初めての買い物だったじゃないか?だから 相場を知らなくてほかの店で恥をかいたんだ。それで あんたが一番条件が良くてさ。あんたと契約がしたい」

引き出しにあった書類を出して にっこりと笑顔を浮かべるとお客にペンを差し出した。
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