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「祭事の戦士への挑戦」 前編

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「ここが ゴードッドの村よ。がははは」

王国を目指した俺たちは ゴードッドの村に立ち寄った。
ここは 金の鉱山がある豊かな村だ。
金が取れるなら 毎日忙しく働いてそうに思うけど
でも この世界の人たちは必要以上には働いたりしないようだ。

「出発するときに 取られた物資を取り返すわよぉ!! おう!!」

アーラルは元気うよさそうに おう!!とこぶしを突き上げている
街並みは基本的に石と緑のツタなんだけど 石造りの建物の坂道を登っていくと
鉱山でほられた山の上に、立派なお城のような石造りの建物があった。

姉さん 殴りこみですか?
と思ったが 建物の中に入ってみてビックリ。
にぎわう人々。加熱する叫び声! そして 昼間っから酒場で勝利を祝う人たちがいた。
ここは アレだ。地球で言うとカジノだろ?
アーラル姫様は 王国を出発早々にカジノの村に立ち寄っていたのだ。

「ライト。私のおすすめは コレよ!」

アーラルは 俺たちを大きな石の玉が二つ並んでいる場所に連れてきた。
どうやら 二つの玉を鉱山でほられた穴に転がして 先に外の穴に飛び出したボールが勝ちになるというゲームらしい。
鼻息の荒い、美形なお姫様は 物資をカウンターに持って行ってゴールドに変えると
早速 賭け事を始めようと踊り子っぽい薄い袖をまくって帰ってきた。
 いったいどのくらい、ゴールドに変えてきたのかと聞くと 「全部よ!がはは」と言っていたが
ここで旅が終わってしまうのではないだろうか?

球は二つだから1/2の確率で当たるわけだけど 
倍率はどうなっているかというと・・えーっと、「勝ったら2倍・負けたら掛け金没収」
50対50とか、さすが 異世界というか、掛け率をみて一安心した。
全額をゴールドに変えてもこれなら破産はしないだろうし、考えてみれば
旅立つときにゴールドから物資に交換できるわけだから ある意味都合よく物資が調達できるだろう。

「ライトさん 私たちはこちらでお茶でも飲みませんか?」

プラリムに誘われて 換金所の近くのテーブルで俺たちは待つことにした。
プラリムが仲間になってくれたから、いい話し相手を見つけることが出来てよかった。
なんせ この異世界にきて「俺は転移者です!」なんて言っても誰もわかってくれなかったからね。
遠い異国から移り住んできた旅人、みたいな設定になっているけど
プラリムは 最初から俺の事に気づいていたし、村人と話をするときは俺に合わせてくれるから助かっている。

「ライトさん あちらをご覧ください」

プラリムが指示したのは 交換所の景品だった。
壁に掲げられている 超豪華な景品がずらりと並んでいる。
1位の景品は バズーカーサイズのレーザー砲だろうか?灰色で石でできてます、って感じで
カモフラージュされているけど あれは魔法に科学的な何かがプラスされている匂いが、プンプンした。
でも プラリムが指しているのは1位じゃなくて 20位の丸い球のアクセサリーだった。

「あのアイテム、なんとか 手に入れることはできないでしょうか?」

あのアクセサリーは 通信用の魔道具のようだ。
魔力の力によって 声を届けられるようだけどトランシーバーみたいな使い方が出来るらしい。
ここに来る途中で モンスターと戦闘になったけどプテプテサウロンとか 
巨大なサボテンみたいなモンスターと戦うには、あったほうが便利だろう。
でも 俺はギャンブルはやらないんだよね。
アーラルに頼むといいよと プラリムに話をするとプラリムはしょんぼりした顔になった。

「イヤ ほんと ギャンブルとか苦手なんだ」

プラリムはさらに しょんぼりした顔になった。

「・・・・でございま・・・」
「え? 聞こえないよ?」

ダメだ。プラリムの元気がなくなった。そして カクカク動くようになった。
ゼンマイのネジが切れた お人形さんのようだ。
ギャンブルしてみるか。


色々なギャンブルがあるけど 
「モンスターバトル」
「フードファイト」
「石のダイス転がし」
「間欠泉当てゲーム」
「モルモット レース」
どれにしようかな。
モルモットって 大きなハムスターみたいな動物を走らせてレースをさせるようだ。
確か ペルーに生息している動物だったけ、
気候が似ているからこっちの異世界にもいたんだな。

ただ、ゲームの種類は他にもたくさんあって、
地球の知識を使えば、あからさまに勝ててしまうものもある。
でも そんなものをやってもつまらないだろう。

だから できるだけ運だけの要素のものにしようと思う。
ということで 間欠泉ゲームにした。
5本ある間欠泉が一定時間ごとに吹き上げる。
1/5の確率でどの間欠泉が吹き出すのか?
それを当てるギャンブルだった。
20位の景品が一発で 当たりる穴に賭けてみた。


「がはははは!! ライト プラリム 探したわよ、がははは。
店員さん~。ニードよ!!このテーブルにニード二つ!はい これチップよ、がはは」

ああ アーラルの「がはは」の数が多いな。
結果が出るまでしばらくかかりそうだったので、それまで プラリムとお茶を飲んでいた。
すると アーラルがやってきた。
調子はどうですか?と尋ねてみたら絶好調ということだった。
そして どの石に賭ければ勝つことが出来るのか、、石の色から形まで色々と説明してくれたのちに 
勝利のおまじないと言って、俺のホッペにブッチュ!!(*´ε`*)ブッチュ!!(*´ε`*)と 数回してから、
さっきの玉の賭け事へ帰ってしまった。
順調でよかったけど 周りを見渡してみると頭を抱えている人が結構多いな。
この世界の人は、一発勝負で全額賭けたりとかして無一文になってそうだ。

「ブッシャーーー!!!」
「おお おお!」
「なんてことだ!」

間欠泉ゲームの会場から音と声がする。
さて 様子を見に行ってみるか。
勝利のおまじないとか言っても 毎日おまじないされてるからな~。
でも 王女さまだし、ご利益があったりするのかな?
さて 王女様の御利益はいかに???
・・。
・。

「結果 大当たり」

さすが 神の祭壇を預かる王族だな。
俺は 20位のビー玉にヒモが付いたアクセサリーを手に入れることが出来た。
プラリムも 表情は読めないが笑っていると思う、というかいつも笑っているのだけど。


・・・・
「ゼルノス様 ここはゴーレムの宝庫でございますね」
「そこで頭を抱えている、あいつがいいかもしれぬ。。
それにしても アーラルは勝っているのか・・」
「ゼルノスさま ご指示の通りに賭けてまいりましたが。。
そろそろ おやめになられたほうがよろしいかと思われます。宿代がなくなってしまいます」
・・・・

叫び声が聞こえた。

「だれか! この人、倒れているわ!!」
「おい だれか キツめのニードを持ってこい!」
「ダメだ 目が覚めない」

さっき 頭を抱えて悩みこんでいた人が倒れてしまったようだ。
でもさ、負けて一文無しになっても 明日からまた働けば困ったりしないだろう。

しかし
「ゴゴゴゴロゴロゴロ!!」

カジノの壁が崩れ落ちたかと思ったら ゴーレムが現れた。
こんな 建物から現れるのか。
村のゴーレムは土と石で できていたけどこのゴーレムは石の割合が多い。
そして、日の光の入らないこの場所では、プラリムの植物バネの能力は使えない。
逃げ惑う人々を襲う ゴーレムが松明の光に照らされてオレンジ色に染まって見えた。


ライトは マターソードに手をかけるとゴーレムをみじん切りにした。
「さあ 今のうちに逃げるんだ!」

プラリムも手伝って 酔っ払いなどをかついで、みんなを逃がしていく。
その間も ゴーレムを斬りつけつつ、押し込んでいく。
再生しては ゴーレムを切り刻む。
そして 押し込むの繰り返し。
徐々に 目的地が見えてきた。
被害の出ない場所。
それは 建物のテラスだ。
ゴーレムは建物から落ちたくらいじゃ 倒せないだろうけど
でも 自分から粉々になるために落っこちたりもしないだろう。
戦っている感じからも そこまではしないと思った。多分。



「私の勝を台無しにしてくれたわね!!」

顔を真っ赤にしたアーラルが現れた。
まだ ギャンブルをやっていたのか。
勝ったのかもしれないけどゴーレムが暴れていたのなら、勝負は無効だろう。
それだけに 怒りのやり場に困っているようだ。


「13番目の王女の怒りを、受けるといいわ!! リングエンファード!!!!!」

5つのリングが ゴーレムの手や足や胴体 首などにハマり、ゴーレムは宙に浮いた。
そして ゴーレムはアーラルの意のままに浮遊して壁や床などに叩きつけられた。
粉々になっていくゴーレムを見ていると ゴーレムの中に球のようなものがあることに気が付いた。
コアなのだろうか??じゃぁ コアを破壊してしまえば簡単に倒せてしまうということになるのか。

考えていると 俺のところへ、アーラルのリングが飛んできた。

「スッキリしたわ。さあ ライトやっちゃいなさい!!
カカオドリンクまで換金しなくてよかったわ。がははは」



ライトは 「カカオドリンク」を一気に飲み干した。
ちからがみなぎってくる。
ライトの体は 光輝いた。
そして マターソードに光を集めるとソードは太陽のように光り輝いた。 

「これなら 奇跡が届くはず!!」
「エナジーソード!!」

閃光に辺りが包まれて真っ白になった。
・・・・・
「今日こそは 今日こそは勝って、家族を見返してやるんだと思ったのに 結局どうして負けるんだ!
ああぁぁぁ なんで これじゃ 俺はいらない人間じゃないか・・。」

目の前に新婚時代の妻が現れた。
「はい卵焼きよ お口をアーンして、ポロロ。
うふふ、早くお家を見つけて一緒に暮らしたいわ~、あなたが居てくれるだけで私は幸せよ。子供も沢山作りましょうね・・」
・・・・・

エナジーソードがゴーレムを貫いたとき、ゴーレムから悲しい音が響いた。
奥さんの気持ちがポロロに届いた。
そしてゴーレムを撃破した!!

・・・・

「また 倒されてしまったか。でも 悲しみは集まった。この騒ぎに紛れて帰るぞ!」
「ゼルノスさま どこへ帰るのですか?」
「宿に決まっているだろう」
「ゼルノス様 お言葉ですが・・今日は野宿です。」
「・・・。」

・・・・

ゴーレムを倒すとポロロの顔は落ち着きを取り戻したが
眠りから覚めることはなかった・・・。


とんでもない騒ぎになったので、しばらくはカジノは閉鎖されるらしい。


「ライト いよいよ。王国につくわよ。 試練に勝てたら私がチューしてあげるわ。
でも 今日は機嫌がいいから今してもいいわよ。がははは」
 
カジノで勝ってご機嫌なようだ。
物資も補給できてよかった。さて 目指すはいよいよ王国だな。

「祭事の戦士」になって 祭事を行えば国から褒美を与えてもらうことが出来るので
目を覚まさない人たちのことを調べてもらう事もできるかもしれない。
それにプラリムもいるし、王国の壁画とか色々と調べられるところはありそうだ。

でも 「祭事の戦士」になりたいという挑戦者はきっと多いだろう。
国が後ろ建てとなって 自分の願いを叶えてくれるのだから
Hな男の子ならだれでも一度は「祭事の戦士」に憧れるだろう。


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