上 下
1 / 6

「冒険の香り」 前編

しおりを挟む
異世界の中にある、また不思議な原始の異世界に元地球人の、ライトという、お兄さんがいた。
彼がいつ異世界に来たのかはわからない、だって 彼は すでにお兄さんだったから。
でも、ある日、ジャングルのとある村に一緒に暮らしたいと現れて、ちょっと離れた洞窟に
家を建て、村人たちと暮らし始めた。
村人から見れば、腰に剣をさげた、ちょっと変わり者なお兄さんに見えたかもしれません。
だけど 人と群れるのは避けているのに、子供たちからは好かれていた。
彼は「竹とんぼ」という おもちゃを考案した天才だったから。


とある日、遠くの森から、恐竜のようなけたたましい声がした。

「ギャォォン!! ギャォォン!!」

村のパパトスさんが 血相をかいて森のほうから村まで走って帰ってきた。

「ラドンだぁあっぁ!! ラドンが攻めてきたぞ!!」


「ラドンだって? 村にまっすぐ向かっているのか??」
「キャー 大変。 子供を連れて逃げなくちゃ!!」

村人たちは 右往左往し始めた。
毛皮姿に布をまとった服を着て 右へ走って家に入り、左へ走って、人に知らせた。
母親は遊びまわっている子供たちを呼び集め、お年寄りたちは村の中央の祭壇に集まった。
そして、若者たちは、石のヤリを持ち、オノをもって、戦いの準備を整えて祭壇に集まった。

村長が 村の者を励まし、支持をする。
「案ずるな この村には若い者たちと、それにライトがおる!若い衆、村の者と村の祭壇を守ってくれ。
わしはみんなを避難させておこう。ポポタムよ急いでライトにこのことを知らせるのだ」


・・・・
俺の名前はライト。元地球人です。
この村に引っ越してきて、しばらく経つけど畑仕事も板についてきました。
作物を収穫するのって、結構楽しいですよ。
昔地球で読んだ本によると 人間には狩猟本能のほかに、採取本能があるらしいので、
ストレスが溜まったときは、スポーツもいいけど「いちご狩り」なんていいかもしれません。
おっと 誰かお客さんが来たようです。子供たちではないようだけど・・・
・・・・

村人のポポタムがかけてきた。
太って割腹のいい体を ユッサ、ユッサ、揺らして走ってきたがどうしたんだ??
「・・・・はぁ はか」
汗びっしょりだ。
話によると、ラドンという ティラノザウルスっぽい二足歩行のモンスターがまた村に向かってきているらしい。
アイツらは この辺のボスだから、村があるなんて気にもしていないのだろう。

「村が踏みつけられる前に 行かなくちゃな。ポポタム!悪いけど先に行くぞ」

俺は マターソードを手に取るとポポタムを置き去りにして走った。
ポポタムは 汗をかいて座り込んでいる。
元々、付いてくる気はなさそうだ。お疲れさん!

・・・・
一方 村では。

「兄ちゃん ぼくも戦えるよ!ぼくも兄ちゃんのヤリを持たせてよ!!」
「お前はまだ大人じゃない!大人じゃないヤツは戦いに来るな!
いいな、お前はお母さんと妹を連れて身を隠すんだ」

ぼっ ぼくだって大人なのに・・・。
・・・・

村人たちは ラドンを迎え撃つために村の入り口に集まっていた。
この村には 投石機が3台ある。
本当は 4台あったのだけど、石と木で出来ているので壊れやすく
こないだ壊れてしまった。

村人たちが何かを見つけたようだ。

土ぼこりの先頭に ラドンが現れた。
無駄に大きなシッポを引きずって 大きな口をだらりと広げてこちらへ突進してくる。
柵なんかも 建ててはあるけど、ラドンサイズのモンスターになると全く役に立たない。
でも 何度も襲われてる村人たちはすでに投石機を備えている。
岩は10発だ。

「投石! 撃て!!」

3台の投石機から飛ばされた岩はラドン目がけて飛んでいった。
頭を直撃できれば 倒せるぐらい大きな岩だ。
9個の岩が飛んでいく

「ギャォォン!!」

体にあたってもそれほどのダメージは与えられずにはじかれているが、
数発の岩がラドンの頭にヒットしてラドンは 倒れた。やったぞ!でも。

「一番 でかい ラドンが残ったっぺが!!」

一番先頭を走っている大きいラドンは足が速い、
投石をすり抜けてこちらへ走ってきてしまった。
こうなったらぁ~とっておきだ!特大の岩を村人は投石機にセットした。
「これで最後の岩だっぺが! 撃て!!」
放たれた岩は 近距離ということもあって狙いはバッチリだ。
大きいラドンの頭目がけて飛んでいった。

頭に直撃したと思ったが
「バキン!」

「あわわわ」
ラドンのヘッドバットで大岩ははじき飛んでしまった。
村人は 大慌て! こんな石頭なヤツは始めてだ!
ほかの ラドンたちも悶絶しているうちに村人でやっつけてしまわなければ
起き上がって襲い掛かってくるだろう。でも そこへライトが現れた。

「・・・ライト! 助かったぁ」

「待たせたな!!やってやるか!」
ライトは ジャンプして飛び掛かると、サヤからガラスのように透き通った黒い剣を引き抜いて
・・。
・。
「ドッカン! ギュルル・・」
大きな、ラドンを倒してしまった。

ライトは剣を掲げて叫んだ
「よしみんな、肉だ!!」
「うぉおおおお!!」
それにつられて、ヤリを掲げて突進していく村人たち。
無事に ラドンの肉をゲットした村人たちの村では 
お肉が焼かれ、一日中煙が立ち上り、宴が開かれるのであった。
「ムシャムシャ・・・」


「煙?あんな所に村があったのね。 ちょうどいいわ がははは」
煙に気付いて村のほうへ進路を切り替える者たちがいた。
一体 何者なのだろうか?? つづく


ライトたちの村に、大国からお姫様と家来の兵士が数人やってきた。
トトッポという 飛べないがコウモリのような翼をもった大きなトカゲの乗り物。
異世界だから見た目は当然、清楚に見える美しいお姫様だ。

「私はマカカオヤ王国の13番目の王女。アーラルよ。ちなみに王位継承権は、ほぼないわ!がははは」
「姫様 笑うときはおしとやかにと、お願いしていたではありませんか?」
「それくらい、いいじゃない。13番目の末っ子は伸び伸び生きていきなさいって、おばばも言っていたわ。
それでそこの村の人! 村長と話したいのだけどいらっしゃるかしら?」

王女様の洋服は、ドイツの酒場のお姉ちゃんが着てそな服。
ディアンドルに似ている。
でも、ここの気候は熱帯、ちょっと暑いところなので、
踊り子の服っぽく涼しくアレンジされていた。
特徴的なのは、リングだ。
トトッポから降り立ったときに、ユラユラと腰に付けている装飾のリングが揺れていた。

でも ごきげんよう、みなさま・・とか 話し出すのかと思ったら 
あの がははは!と笑うのだから、ギャップに驚いた。
多分この人は清楚とは真逆の世界で生きてきた人だ。


王女様が来たときは俺たちの宴も終盤だった。
お肉をお腹いっぱいに食べて 寝転んでいる村人や、モンスターの骨を転がして遊ぶ子供、
それに 俺たちはお酒の後のコーヒーを年配の村人たちとたのしんでいた。
祭壇はピラミッドのような三角形の形だけど、上部のとがった部分がなくて、マヤ文明遺跡に似ている。
階段もあるし、最上部では祈りをささげるようになっている。
この村は豊なので、祭壇も実りほのかに光を持っていた。

俺たちは祭壇の階段になっている場所に腰かけてみんなでコーヒーを飲んだ。
ちなみに コーヒーは俺の家の畑で育てたものだ。
異世界で、コーヒー豆を手に入れるのに どれだけの苦労をしたことか
野山をさんざん駆けまわって、村々を渡り歩いて情報を集めてやっと手に入れたんだ。
それで コーヒーが育って飲めるようになったので第一号は、みんなにふるまっていた。


それで姫様たちの用事というのは 長旅のために食料の補給がしたいということだった。
こちらとしても 大国産の布などと交換してもらえるのはありがたいのだが・・。

交換したほうがいいだろうか??

損はなさそうだ、交換することにした。
俺たちは食料や交換してもらえそうな物資を持ち寄った。
村にお客さんが来るのも久しぶりなことだし 途中からは自慢大会も始まった。
宝物は どんどん積み上げられていった。

でも、アーラル達が出してきたものも負けていない。
王国産の品物は布にしても装飾品にしても一級品の物だった。
これは いい商談になったかもしれないぞ。

・・・・
「こんなところにも祭壇があったとは。しかも満ちているように見える。しかし アーラル・・・」
木陰に隠れて誰かが アーラルを見ていた。魔道具が一瞬、紫に光った。
・・・・

俺たちの品物の質は大変良かったようで、家臣の兵士たちも満足げだ。
うん・・ ここの異世界の人たちって マヤ文明とかメソポタミア文明って感じの人たちだから
素直な人が多いけど、ちょっと 素直すぎる気がする。
だから 地球の知識を使ってもっと交渉してやろうなんて気にはならなかった。

「・・・お腹を壊してしまったのだ」

大国からこの村に来るまでにも、いくつか村によったらしい。
でも 前の村で入手した物資は質が悪くてトトッポがお腹を壊してしまう
ハプニングもあったのだとか。
だから、煙が見えて偶然立ち寄れたこの村は 渡りに船だったらしい。
アーラル王女も満足げな表情で何よりだ。
そして、王女は旅の目的を俺たちに話始めた。

「私たちは「祭事の戦士」を探す旅をしているのよ。
この中で強さを示せる人はいるかしら?
もしも大国で「祭事の戦士」と認められて祭事を行えば 城から望みの褒美がもらえるのよ。
願いが叶うのよ。すごいでしょ?がははは

でも ただ私の兵士と戦っても面白くないじゃない? 
そこで そこに積まれている食料をかけて私の兵士と戦うというのはどうかしら?
さあ この村に勇気がある人がいるなら前へ出てくるといいわ がははは」

あら、あら この村の物資は、なかなか良い物が揃っているじゃない。
次の村でも、この村のように良い物資が手に入るとは限らないし、
後のことを考えたら交換できる品物もできるだけ残しておきたいわ。

そうだ 「祭事の戦士」の試験を使って賭けをしてみましょうか?
見た感じ 太っちょに細っちょにおちびさん。
戦闘訓練なんて ろくに受けたことのない人たちばかりだし楽勝よね。
しかも 村の人って、プライドをくすぐるようなことを言われると
黙っていられない人たちばかりなのよ。がははは


すると 村長が余計なことを言い始めた。
「村の戦士はみんな強い。ほれ そこを見なされ。ラドンの骨があるじゃろう?
村の若いもんとライトが、こないだ森で ちょちょっと狩ってきたのじゃ。ほっほほ」

王女たちは驚いたようだった。
共食いをしていて弱ったところを襲ったとか、トラップにうまく引っかかって狩れたとかじゃなくて
森までちょっと出かけて ラドンを狩ってこれるくらい強いですよ。
っといったのだから ウソもいいところだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

スパイス料理を、異世界バルで!!

遊森謡子
ファンタジー
【書籍化】【旧題「スパイス・アップ!~異世界港町路地裏バル『ガヤガヤ亭』日誌~」】熱中症で倒れ、気がついたら異世界の涼しい森の中にいたコノミ。しゃべる子山羊の導きで、港町の隠れ家バル『ガヤガヤ亭』にやってきたけれど、店長の青年に半ば強引に料理人にスカウトされてしまった。どうやら多くの人を料理で喜ばせることができれば、日本に帰れるらしい。それならばと引き受けたものの、得意のスパイス料理を作ろうにも厨房にはコショウさえないし、店には何か秘密があるようで……。 コノミのスパイス料理が、異世界の町を変えていく!?

悪役令嬢が最弱(モブ)勇者を育ててみたらレベル99の最強に育った

タチバナ
ファンタジー
転生したら悪役令嬢でした。 どのエンドでも死亡確定らしいので逃亡したらわたしがプレーヤーの乙女ゲームが始まった。それも選択肢を間違えると死ぬガチなやつ。(ただしオートセーブ付き) RPGよろしく勇者のアレクくんを育成しつつ好感度を上げるのが最初は楽しかったけど、乙女ゲームなんだからそれって本当の恋愛感情じゃないのでは? って苦しくなってきた。 ゲームのつもりがほんとに好きになっちゃったって笑えない。笑えないけどとりあえず世界を救うために頑張って悪役令嬢やろうと思います。

ゆるふわショタ皇帝と活字嫌いな司書の王都立て直し

由汰のらん
ファンタジー
大学図書館で働く派遣社員の瀬里は、活字は嫌いだけど本の整理は好きだった。 そんな彼女が財政難に陥る異世界に派遣されてしまう。 瀬里を派遣した担保で、ショタになってしまった皇帝こと智彗は、瀬里に国の立て直しを申し出るのだった。 本好きのショタ皇帝と、本の整理好きな瀬里の奮闘物語。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

アナザーワールド

白くま
ファンタジー
突然異世界へと召喚された少女・秋月楓が様々な仲間と共に目覚めた力を駆使して奮闘する物語です。 初めての投稿なので、至らないところも沢山あると思いますが、感想などありましたら気軽に書き込んでやってください!

大切”だった”仲間に裏切られたので、皆殺しにしようと思います

騙道みりあ
ファンタジー
 魔王を討伐し、世界に平和をもたらした”勇者パーティー”。  その一員であり、”人類最強”と呼ばれる少年ユウキは、何故か仲間たちに裏切られてしまう。  仲間への信頼、恋人への愛。それら全てが作られたものだと知り、ユウキは怒りを覚えた。  なので、全員殺すことにした。  1話完結ですが、続編も考えています。

処理中です...