33 / 76
第33話 テレビ取材
しおりを挟む
「少し耳寄りな話があるのですが」
香川さんから、そう言われた。
「へえどんな?」
「500万円払えば、テレビ局が取材にきて放送してくれます」
「そういうのは取材費をこっちが貰う側だと思ってた」
「いろいろとあるのですよ」
テレビ局のADに話を聞いた事がある。
ドラマロケでホテルとか使う場合に、スタッフの部屋代だとか飲み食い代はホテル側で無料で用意するのだとか。
学生時代の話だから、今はどうなっているか知らないが、まあ色々とあるのは分かる。
だが、500万は大きい。
会社勤めしてた頃の俺の給料一年分を超える。
それでもCMを打つよりお買い得なのは分かる。
CM1本100万円とかざらだそうだから。
ここは勝負すべきか。
攻めだな。
「お願いします」
スタッフの人が来て打ち合わせが始まった。
「ええと、ダンジョンの中の部屋を改装して、分譲販売するのですよね」
「ええ」
「何か、視聴者が食いつきそうなネタがありますかね」
「宝箱が産まれる瞬間を撮るなんてどうでしょう」
「いいですね。ポーションをプレゼントとかできますか?」
「上級ポーションは無理ですが下級ポーションだったら5本ぐらい、視聴者プレゼントできますよ」
「ではそれでお願いします」
「部屋の紹介とかもしてくれるんですよね?」
「もちろん」
とんとん拍子に話が進んで行く。
何ヵ所かテレビカメラを仕掛けたところ、すぐに宝箱が産まれる瞬間が撮れた。
「撮れちゃいましたね」
「撮影なんてこんなものですよ。何週間、粘っても、結局撮れないなんてことは、しょっちゅうです。じゃあ部屋とインタビューを撮って帰りますか」
部屋の撮影はすぐに終わった。
さすがアナウンサー、文章を間違える事無く一発でオッケーが出た。
俺の番だ。
もう、緊張して噛み噛みの酷いものだった。
テイク10ぐらいでやっとオッケーが出た。
今はオッケーが出た映像を確認しているところ。
「今回、お邪魔したのは、ダンジョンを分譲販売するという試みをなされているダンジョン分譲コーポレーションさんです。こちらが社長の戸塚さんです。なぜこのような試みをされたのですか?」
「Sランクダンジョンともなりますとスタンピード災害の規模はCランクと比べて段違いです。それこそ大人と子供ぐらいの差があります。その損失補填を一人で背負うのではなく、たくさんの人と分かち合えたらなと考えて始めました」
「デメリットばかりだと、背負ってくれる方が現れないのではないですか」
「そうなんです。それで部屋に住むと自動後片付け機能や、その他のダンジョンならではの機能を盛り込みました。一番のメリットは15日に1回ぐらい、1本300万円はする上級ポーションが湧くことです」
「それは凄いですね。まさに金の卵を産むガチョウ。夢のような話をお届けしました」
短い紹介だが、まあいいだろう。
さて、スタッフも帰ったので討伐の時間だ。
「皆さんお待たせしました」
「午後からの仕事もたまには良い」
「うずうずしてたぜ」
「一日1時間ぐらいの仕事ですから、いつでもオッケーですよ」
やる気になっているみんなを見送って、俺はリフォームの現場に顔を出した。
「お疲れ様です」
「配線を埋める所はテープで仮止めしといたぜ」
「汚水溜めを早く作ってくれねぇかな。出ないとユニットバスが入らない」
「ユニットバス入れる入口の拡張も頼むぞ」
「分かりました。ホワイトボードに書いておいて下さい」
「もちろん書いといたぜ」
今日の討伐は30分掛からずに終わった。
魔力が空になるまでスキルを使ってから、フォークリフトで死骸回収に向かう。
大忙しだ。
「先輩、私の仕事があまりないのですが」
「事務処理を振っているだろう」
「あんなのはいまどきAIで一瞬です」
「じゃあ、宝箱の見回りとポーションの回収を頼めるか」
「はい」
藤沢がスクーターに乗って、ポーションの回収に出掛けた。
ああ、忙しい。
リフォームスキルがもっと使えればな。
そうなったら最強だな。
建築現場で大活躍すること請け合いだ。
フィールド型の階層が出たら、そこに建てる家は俺がやりたい。
きっと楽しいだろう。
「ユニットバス用が入るように入口を広げます。【リフォーム】。冒険者さん、ユニットバスを運んで下さい」
「あいよ。【ストレングスアップ】。どっこらせ」
次は汚水溜めだな。
「チョークで印がつけてあるから。【リフォーム】」
魔力が切れたな。ちょっと深さが足りない。
休んだら続行だ。
「お茶にして下さい」
俺は3時近くになったので声を掛けた。
「もうそんな時間か」
職人さんが手を止める。
「私がやります」
帰って来た藤沢が、お茶を淹れる。
これでスタンピードさえなければ、長閑な光景と言えるんだけどな。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 16,341万円
依頼金 300万円
上級ポーション2個 614万円
プレゼント用ポーション5個 25万円
広告費 500万円
彫像10体 10万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 825万円 16,965万円 16,140万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -88億円
趣味の彫像作りは今もやっている。
20センチぐらいの大きさだと、魔力もさほど食わない。
趣味は必要だ。
香川さんから、そう言われた。
「へえどんな?」
「500万円払えば、テレビ局が取材にきて放送してくれます」
「そういうのは取材費をこっちが貰う側だと思ってた」
「いろいろとあるのですよ」
テレビ局のADに話を聞いた事がある。
ドラマロケでホテルとか使う場合に、スタッフの部屋代だとか飲み食い代はホテル側で無料で用意するのだとか。
学生時代の話だから、今はどうなっているか知らないが、まあ色々とあるのは分かる。
だが、500万は大きい。
会社勤めしてた頃の俺の給料一年分を超える。
それでもCMを打つよりお買い得なのは分かる。
CM1本100万円とかざらだそうだから。
ここは勝負すべきか。
攻めだな。
「お願いします」
スタッフの人が来て打ち合わせが始まった。
「ええと、ダンジョンの中の部屋を改装して、分譲販売するのですよね」
「ええ」
「何か、視聴者が食いつきそうなネタがありますかね」
「宝箱が産まれる瞬間を撮るなんてどうでしょう」
「いいですね。ポーションをプレゼントとかできますか?」
「上級ポーションは無理ですが下級ポーションだったら5本ぐらい、視聴者プレゼントできますよ」
「ではそれでお願いします」
「部屋の紹介とかもしてくれるんですよね?」
「もちろん」
とんとん拍子に話が進んで行く。
何ヵ所かテレビカメラを仕掛けたところ、すぐに宝箱が産まれる瞬間が撮れた。
「撮れちゃいましたね」
「撮影なんてこんなものですよ。何週間、粘っても、結局撮れないなんてことは、しょっちゅうです。じゃあ部屋とインタビューを撮って帰りますか」
部屋の撮影はすぐに終わった。
さすがアナウンサー、文章を間違える事無く一発でオッケーが出た。
俺の番だ。
もう、緊張して噛み噛みの酷いものだった。
テイク10ぐらいでやっとオッケーが出た。
今はオッケーが出た映像を確認しているところ。
「今回、お邪魔したのは、ダンジョンを分譲販売するという試みをなされているダンジョン分譲コーポレーションさんです。こちらが社長の戸塚さんです。なぜこのような試みをされたのですか?」
「Sランクダンジョンともなりますとスタンピード災害の規模はCランクと比べて段違いです。それこそ大人と子供ぐらいの差があります。その損失補填を一人で背負うのではなく、たくさんの人と分かち合えたらなと考えて始めました」
「デメリットばかりだと、背負ってくれる方が現れないのではないですか」
「そうなんです。それで部屋に住むと自動後片付け機能や、その他のダンジョンならではの機能を盛り込みました。一番のメリットは15日に1回ぐらい、1本300万円はする上級ポーションが湧くことです」
「それは凄いですね。まさに金の卵を産むガチョウ。夢のような話をお届けしました」
短い紹介だが、まあいいだろう。
さて、スタッフも帰ったので討伐の時間だ。
「皆さんお待たせしました」
「午後からの仕事もたまには良い」
「うずうずしてたぜ」
「一日1時間ぐらいの仕事ですから、いつでもオッケーですよ」
やる気になっているみんなを見送って、俺はリフォームの現場に顔を出した。
「お疲れ様です」
「配線を埋める所はテープで仮止めしといたぜ」
「汚水溜めを早く作ってくれねぇかな。出ないとユニットバスが入らない」
「ユニットバス入れる入口の拡張も頼むぞ」
「分かりました。ホワイトボードに書いておいて下さい」
「もちろん書いといたぜ」
今日の討伐は30分掛からずに終わった。
魔力が空になるまでスキルを使ってから、フォークリフトで死骸回収に向かう。
大忙しだ。
「先輩、私の仕事があまりないのですが」
「事務処理を振っているだろう」
「あんなのはいまどきAIで一瞬です」
「じゃあ、宝箱の見回りとポーションの回収を頼めるか」
「はい」
藤沢がスクーターに乗って、ポーションの回収に出掛けた。
ああ、忙しい。
リフォームスキルがもっと使えればな。
そうなったら最強だな。
建築現場で大活躍すること請け合いだ。
フィールド型の階層が出たら、そこに建てる家は俺がやりたい。
きっと楽しいだろう。
「ユニットバス用が入るように入口を広げます。【リフォーム】。冒険者さん、ユニットバスを運んで下さい」
「あいよ。【ストレングスアップ】。どっこらせ」
次は汚水溜めだな。
「チョークで印がつけてあるから。【リフォーム】」
魔力が切れたな。ちょっと深さが足りない。
休んだら続行だ。
「お茶にして下さい」
俺は3時近くになったので声を掛けた。
「もうそんな時間か」
職人さんが手を止める。
「私がやります」
帰って来た藤沢が、お茶を淹れる。
これでスタンピードさえなければ、長閑な光景と言えるんだけどな。
――――――――――――――――――――――――
俺の収支メモ
支出 収入 収支
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
繰り越し 16,341万円
依頼金 300万円
上級ポーション2個 614万円
プレゼント用ポーション5個 25万円
広告費 500万円
彫像10体 10万円
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
計 825万円 16,965万円 16,140万円
相続税 2,000万円
遺産(不動産) 0円
ダンジョン -88億円
趣味の彫像作りは今もやっている。
20センチぐらいの大きさだと、魔力もさほど食わない。
趣味は必要だ。
150
お気に入りに追加
607
あなたにおすすめの小説
お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?
水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」
「はぁ?」
静かな食堂の間。
主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。
同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。
いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。
「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」
「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」
父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。
「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」
アリスは家から一度出る決心をする。
それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。
アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。
彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。
「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」
アリスはため息をつく。
「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」
後悔したところでもう遅い。
義妹と一緒になり邪魔者扱いしてきた婚約者は…私の家出により、罰を受ける事になりました。
coco
恋愛
可愛い義妹と一緒になり、私を邪魔者扱いする婚約者。
耐えきれなくなった私は、ついに家出を決意するが…?
【2話完結】両親が妹ばかり可愛がった結果、家は没落しました。
水垣するめ
恋愛
主人公、ウェンディ・モイヤーは妹のソーニャに虐められていた。
いつもソーニャに「虐められた!」と冤罪を着せられ、それを信じた両親に罰を与えられる。
ソーニャのことを溺愛していた両親にどれだけ自分は虐めていないのだ、と説明しても「嘘をつくな!」と信じて貰えなかった。
そして、ウェンディが十六歳になった頃。
ソーニャへの両親の贔屓はまだ続いていた。
それだけではなく、酷くなっていた。
ソーニャが欲しいと言われれば全て与えられ、ウェンディは姉だからと我慢させられる。
ソーニャは学園に通えたが、ウェンディは通わせて貰えなかったので、自分で勉強するしかなかった。
そしてソーニャは何かと理由をつけてウェンディから物を奪っていった。
それを父や母に訴えても「姉だから我慢しろ」と言われて、泣き寝入りするしかなかった。
驚いたことに、ソーニャのウェンディにしていることを虐めだとは認識していないようだった。
それどころか、「姉だから」という理由で全部無視された。
全部、ぜんぶ姉だから。
次第に私の部屋からはベットと机とソーニャが読むのを嫌った本以外には何も無くなった。
ソーニャのウェンディに対しての虐めは次第に加速していった。
そしてある日、ついに両親から「お前は勘当する!」と追放宣言をされる。
両親の後ろではソーニャが面白くて堪えられない、といった様子でウェンディが追放されるのを笑っていた。
あの空っぽの部屋を見てもまだウェンディがソーニャを虐めていると信じている両親を見て、この家にいても奪われ続けるだけだと悟ったウェンディは追放を受け入れる。
このモイヤー家に復讐すると誓って。
《完》わたしの刺繍が必要?無能は要らないって追い出したのは貴方達でしょう?
桐生桜月姫
恋愛
『無能はいらない』
魔力を持っていないという理由で婚約破棄されて従姉妹に婚約者を取られたアイーシャは、実は特別な力を持っていた!?
大好きな刺繍でわたしを愛してくれる国と国民を守ります。
無能はいらないのでしょう?わたしを捨てた貴方達を救う義理はわたしにはございません!!
*******************
毎朝7時更新です。
【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
婚約破棄されたので、被害者ぶってみたら国が滅びた
ひよこ1号
恋愛
とある学園の卒業パーティーで行われる断罪劇。
その動きを事前に察知した公爵令嬢クローディアは、ギャクハーエンドなるものを目指していた男爵令嬢マリアンヌの様に、被害者ぶって反撃を開始する。
学内の大掃除のつもりが、どんどん事態は大きくなって……?
***
全五話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる