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第33話 遊戯室《コメント》
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会社には遊戯室がある。
開発部署の人達はわりあいと勤務が自由なので、煮詰まったりすると遊戯室に顔を見せる。
他にはさぼりに来る人も少なからずいる。
置いてあるのは卓球台だ。
ピンポン玉を叩いてストレス発散という事らしい。
健康的で良い事だ。
ちなみに配信の僕の装備は、ワイヤレスヘッドセットとワイヤレスカメラ。
だからノートパソコンから少し離れても配信できる。
ただ卓球は無理だけど。
ノートパソコンのカメラで遠目に映すだけだ。
まあ、マイクのボリュームは上げているから声は拾えていると思う。
「一緒にやりましょう」
僕は、営業部署の人に声を掛けた。
男性で30代だ。
名前と顔は知っているがあまり話した事のない相手。
「おう、俺の稲妻かかあサーブを受けられるかな」
「よしこい」
「この唐変木の無駄飯食らい」
ストレートサーブが打ち込まれた。
「ふんっ」
僕は打ち返した。
「この飲兵衛野郎が」
言われている口撃が、ぴくりとも掠らない。
「とりゃ」
「この浮気者」
やっぱり、かすらない。
「そりゃ」
それから何度もラリーして、僕の打ち返した玉に、相手は空振った。
「ふぃ、運動不足だから、息が続かん」
「僕もそんなに運動はしてませんよ」
「20代前半なら、ブイブイ言わせているだろう」
「そんなこともないですよ。もっぱらパソコンにかじりついてます」
「それが若いって言うんだ。長時間パソコンやると目がしょぼしょぼするんだぞ」
「そういえば、ここって開発室の連中が良く来ますよね。産業スパイの噂とか聞きませんか?」
「聞くぞ。犯人は見つかってないらしいがな。だが隠しカメラとマイクが仕掛けられていたらしい」
「へぇ、内部犯ですね」
「まあそうだな。電波を飛ばすタイプだったらしいから、近くで映像を見ていたとなると、同じビル内だな」
隠しカメラとマイクか。
そんなので機密書類を見たり、重要事項を聞く事が出来るかな。
出来ないような気がする。
手口が素人臭い。
でもスパイがいる事はたしかだ。
【もっちん:稲妻かかあサーブ、ワラタ】
【勝手ソンソン:俺だったら動揺してしまうな】
【やすピー:盤外戦ですね。これも醍醐味】
【ハイレックス:稲妻かかあサーブ、胸にグサッときた】
【ば7:みんな必ずいるけど仕事は?】
【蟹鎌:ちっちっちっ、学生である】
【アーラヨット:株トレーダーである】
【もっちん:失業中、ここの仕事配信は慰めになった】
【ば7:俺も学生】
【勝手ソンソン:俺も失業中】
【ハイレックス:俺は代休が溜まり過ぎて消化しろと言われた。7連休】
【やすピー:家事手伝いという名のニート】
【蟹鎌:ちっちっちっ、貴様、嘘をついているな。冷汗が見えるぞ。とくにアーラヨット】
【アーラヨット:嘘じゃない株で食っている】
【アーラヨット:九美子様は仕事している模様。手がキーボードを叩く仕草だ】
【蟹鎌:ちっちっちっ、誤魔化したな】
【もっちん:男 まあまあ、事件の話をしようぜ】
【ハイレックス:社内にいるってことは容疑者は限られるな】
【勝手ソンソン:産業スパイか。三行で捕まったらいいのにな】
【やすピー:尻尾だした。問い詰めた。白状したので逮捕した。3手詰め】
【ば7:囮捜査かな】
【蟹鎌:ちっちっちっ、盗撮カメラの前で大音量の音を出すのだ。たぶんトイレとかで聞いている。大人数で張り込めば解決だ】
【勝手ソンソン:そんな簡単に尻尾を出すかな。音と映像は録音録画しているだろう。相手の会社にも渡すんだし】
【やすピー:3手詰めは無理みたいね】
【ハイレックス:電波を辿れないかな】
【もっちん:受信機は電波を出さない。仕掛けられたマイクとカメラが分かるだけだ】
【ば7:仕掛けた所を捕まえるのが良いみたいだね】
【蟹鎌:ちっちっちっ、そう上手くいくかな】
【アーラヨット:九美子様なら妙案を思いつくに違いない】
【ハイレックス:卓球長いな】
【もっちん:遠くから眺めていても面白くない。卓球は温泉で美女とやってこそだ】
【ば7:うんうん、浴衣の隙間から見えるのが良いね】
【蟹鎌:ちっちっちっ、パンチラやブラチラの何が良いのか】
【アーラヨット:九美子様のなら脳内に永久保存できる】
【勝手ソンソン:うん、見えそうで見えないのがエロいのだ】
【やすピー:男共はこれだから】
【蟹鎌:ちっちっちっ、脱線している。事件はどうなった】
【アーラヨット:九美子様の妙案待ち。その間の雑談タイム】
【勝手ソンソン:だってたいした情報じゃないよ。こんなのでどうしろと】
【やすピー:断片から推理するの。一手から推理するみたいに】
【ハイレックス:卓球終わるの待とうぜ】
【もっちん:それがいいかもな。女性はここに来ないのか?】
【ば7:産業スパイは、囮捜査一択でしょ】
「もう一勝負、いくか?」
「お相手します」
ラリーを繰り返し相手はグロッキー状態になった。
休憩がてら、九美子に情報をメールして、テレビ電話を開始した。
溜まったコメントも読むが目新しい所はない。
九美子と温泉卓球したいなと思っただけだ。
開発部署の人達はわりあいと勤務が自由なので、煮詰まったりすると遊戯室に顔を見せる。
他にはさぼりに来る人も少なからずいる。
置いてあるのは卓球台だ。
ピンポン玉を叩いてストレス発散という事らしい。
健康的で良い事だ。
ちなみに配信の僕の装備は、ワイヤレスヘッドセットとワイヤレスカメラ。
だからノートパソコンから少し離れても配信できる。
ただ卓球は無理だけど。
ノートパソコンのカメラで遠目に映すだけだ。
まあ、マイクのボリュームは上げているから声は拾えていると思う。
「一緒にやりましょう」
僕は、営業部署の人に声を掛けた。
男性で30代だ。
名前と顔は知っているがあまり話した事のない相手。
「おう、俺の稲妻かかあサーブを受けられるかな」
「よしこい」
「この唐変木の無駄飯食らい」
ストレートサーブが打ち込まれた。
「ふんっ」
僕は打ち返した。
「この飲兵衛野郎が」
言われている口撃が、ぴくりとも掠らない。
「とりゃ」
「この浮気者」
やっぱり、かすらない。
「そりゃ」
それから何度もラリーして、僕の打ち返した玉に、相手は空振った。
「ふぃ、運動不足だから、息が続かん」
「僕もそんなに運動はしてませんよ」
「20代前半なら、ブイブイ言わせているだろう」
「そんなこともないですよ。もっぱらパソコンにかじりついてます」
「それが若いって言うんだ。長時間パソコンやると目がしょぼしょぼするんだぞ」
「そういえば、ここって開発室の連中が良く来ますよね。産業スパイの噂とか聞きませんか?」
「聞くぞ。犯人は見つかってないらしいがな。だが隠しカメラとマイクが仕掛けられていたらしい」
「へぇ、内部犯ですね」
「まあそうだな。電波を飛ばすタイプだったらしいから、近くで映像を見ていたとなると、同じビル内だな」
隠しカメラとマイクか。
そんなので機密書類を見たり、重要事項を聞く事が出来るかな。
出来ないような気がする。
手口が素人臭い。
でもスパイがいる事はたしかだ。
【もっちん:稲妻かかあサーブ、ワラタ】
【勝手ソンソン:俺だったら動揺してしまうな】
【やすピー:盤外戦ですね。これも醍醐味】
【ハイレックス:稲妻かかあサーブ、胸にグサッときた】
【ば7:みんな必ずいるけど仕事は?】
【蟹鎌:ちっちっちっ、学生である】
【アーラヨット:株トレーダーである】
【もっちん:失業中、ここの仕事配信は慰めになった】
【ば7:俺も学生】
【勝手ソンソン:俺も失業中】
【ハイレックス:俺は代休が溜まり過ぎて消化しろと言われた。7連休】
【やすピー:家事手伝いという名のニート】
【蟹鎌:ちっちっちっ、貴様、嘘をついているな。冷汗が見えるぞ。とくにアーラヨット】
【アーラヨット:嘘じゃない株で食っている】
【アーラヨット:九美子様は仕事している模様。手がキーボードを叩く仕草だ】
【蟹鎌:ちっちっちっ、誤魔化したな】
【もっちん:男 まあまあ、事件の話をしようぜ】
【ハイレックス:社内にいるってことは容疑者は限られるな】
【勝手ソンソン:産業スパイか。三行で捕まったらいいのにな】
【やすピー:尻尾だした。問い詰めた。白状したので逮捕した。3手詰め】
【ば7:囮捜査かな】
【蟹鎌:ちっちっちっ、盗撮カメラの前で大音量の音を出すのだ。たぶんトイレとかで聞いている。大人数で張り込めば解決だ】
【勝手ソンソン:そんな簡単に尻尾を出すかな。音と映像は録音録画しているだろう。相手の会社にも渡すんだし】
【やすピー:3手詰めは無理みたいね】
【ハイレックス:電波を辿れないかな】
【もっちん:受信機は電波を出さない。仕掛けられたマイクとカメラが分かるだけだ】
【ば7:仕掛けた所を捕まえるのが良いみたいだね】
【蟹鎌:ちっちっちっ、そう上手くいくかな】
【アーラヨット:九美子様なら妙案を思いつくに違いない】
【ハイレックス:卓球長いな】
【もっちん:遠くから眺めていても面白くない。卓球は温泉で美女とやってこそだ】
【ば7:うんうん、浴衣の隙間から見えるのが良いね】
【蟹鎌:ちっちっちっ、パンチラやブラチラの何が良いのか】
【アーラヨット:九美子様のなら脳内に永久保存できる】
【勝手ソンソン:うん、見えそうで見えないのがエロいのだ】
【やすピー:男共はこれだから】
【蟹鎌:ちっちっちっ、脱線している。事件はどうなった】
【アーラヨット:九美子様の妙案待ち。その間の雑談タイム】
【勝手ソンソン:だってたいした情報じゃないよ。こんなのでどうしろと】
【やすピー:断片から推理するの。一手から推理するみたいに】
【ハイレックス:卓球終わるの待とうぜ】
【もっちん:それがいいかもな。女性はここに来ないのか?】
【ば7:産業スパイは、囮捜査一択でしょ】
「もう一勝負、いくか?」
「お相手します」
ラリーを繰り返し相手はグロッキー状態になった。
休憩がてら、九美子に情報をメールして、テレビ電話を開始した。
溜まったコメントも読むが目新しい所はない。
九美子と温泉卓球したいなと思っただけだ。
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