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第12話 代休《前処理》
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朝の路面は昨日の雪で凍っている。
キラキラと朝日を反射して、とても綺麗だ。
僕にはその綺麗さがお葬式の祭壇のように感じた。
昨日の今日なのでそんな事を思うのかな。
出勤する途中買ってきたコーヒーをデスクの上に置き。
会社のパソコンを起動。
社員のデータを50217で検索を掛ける。
良かった、引っ掛かった人はいない。
住所や本籍地でも引っ掛からないから、たぶん社員には犯人がいないのだろう。
そう信じたい。
「課長、3日間の代休を下さい」
「警察の対応も大変だろうから、仕方ないな」
代休と言えば、去年の2月17日、蜂人は代休を取っていた。
釣りに行ったのなら当たり前だが。
休みも取れたし、堂々と配信できる。
「いま大丈夫?」
配信を開始してテレビ電話で九美子と繋いだ。
「なに? 手がかりでも見つかった?」
九美子ってほとんどの時間、パソコンの前に座っているな。
それであの体型が維持出来ているのが不思議だ。
たぶん朝と夕方に運動してるタイプだな。
そうとしか思えない。
【もっちん:九美子様が出てる】
【どら焼き:レギュラー化しているようで嬉しい】
【ラッキーターキー:女の子がいると花があるよね】
【女好き:声だけで逝きそうだ】
【もっちん:死ぬな! 死ぬんじゃない!】
【女好き:九美子様に踏まれて死にたい】
【どら焼き:下ネタばかり書き込むと、ブロックされるぞ】
【もっちん:これぐらいなら、平気】
【ラッキーターキー:ところで管理者は配信者の他にいるの?】
【もっちん:聞いたことがないな】
「社員のデータベースでは50217は見つからなかった」
「そんな事だと思ったわ」
「どういうこと?」
「プログラム的には前処理というものがあるのよ」
「ええと、分からない」
【女好き:前戯?】
【どら焼き:何か起きる前には、何か前兆みたいな物があるってこと】
【ラッキーターキー:そういうこと】
女好きはちょっとやり過ぎだ。
ブロックと。
前処理の意味は分かった。
コメントも役に立つ。
「分からなければ良いわ。去年の2月1日から今日までの、他の社員のスケジュールと日誌のデータは、抑えたわよね」
「まあしたけど」
「それなら良いわ」
【女好き:[ブロックされました]】
【もっちん:初のブロックか。俺も気をつけよう】
【どら焼き:ブロックされましたか】
【ラッキーターキー:何事もやり過ぎはいけない】
もやっとする。
前処理がなんだって言うんだ。
何か前兆が関係しているのか。
うん分からない。
僕は僕に出来る事をするだけだ。
去年の2月17日を調べよう。
蜂人の家に行く。
去年の2月17日を調べる為だ。
蜂人宅の玄関には忌中札が貼ってあった。
インターホンを押すと奥さんが出た。
「お線香を上げにきました」
「わざわざどうもご丁寧に」
中に入って駅前の花屋で買った菊の花束を渡す。
線香をあげて手を合わせた。
真相を必ず明らかにしてやるからな。
「奥さん、去年の2月17日に何か覚えがありませんか?」
お茶を淹れて貰えたので、一口飲んで口を湿らせてから、切り出した。
「ええと、そうよ。主人の去年の手帳があったわ」
去年の手帳を持って来てもらった。
手帳は見開きで1ヶ月分だから、今年の分も含めて14枚の写真を撮れば事足りる。
ちゃちゃっと撮影した。
当然、九美子にも送る。
2月17日は出張となっている。
あれっ、代休だったはず。
日誌のデータにも業務の書き込みはない。
出張なら何かしらの書き込みがあるはずだ。
逢引という言葉が浮かんだ。
密会という言葉も。
裏金とかそういう取引をしていた可能性もある。
広報は広告費で巨額のお金が動く。
そういう可能性は捨てきれない。
人の好さそうな奥さんを見ていると、そうであってほしいと思う。
「手帳、ありがとうございました」
僕はそう言って、蜂人宅を後にした。
スマホでニュースサイトをチェックすると、蜂人の事件をやっている。
動画をクリック。
ええと、死因は頚部圧迫による窒息死と。
扉は閉まっててどうやって閉めたのか分からないと言っている。
密室殺人の可能性があると。
ただ、扉は木なので、細工はし易いとも。
だろうな。
トリックが使われたに違いない。
どんなトリックかまでは分からないが。
キラキラと朝日を反射して、とても綺麗だ。
僕にはその綺麗さがお葬式の祭壇のように感じた。
昨日の今日なのでそんな事を思うのかな。
出勤する途中買ってきたコーヒーをデスクの上に置き。
会社のパソコンを起動。
社員のデータを50217で検索を掛ける。
良かった、引っ掛かった人はいない。
住所や本籍地でも引っ掛からないから、たぶん社員には犯人がいないのだろう。
そう信じたい。
「課長、3日間の代休を下さい」
「警察の対応も大変だろうから、仕方ないな」
代休と言えば、去年の2月17日、蜂人は代休を取っていた。
釣りに行ったのなら当たり前だが。
休みも取れたし、堂々と配信できる。
「いま大丈夫?」
配信を開始してテレビ電話で九美子と繋いだ。
「なに? 手がかりでも見つかった?」
九美子ってほとんどの時間、パソコンの前に座っているな。
それであの体型が維持出来ているのが不思議だ。
たぶん朝と夕方に運動してるタイプだな。
そうとしか思えない。
【もっちん:九美子様が出てる】
【どら焼き:レギュラー化しているようで嬉しい】
【ラッキーターキー:女の子がいると花があるよね】
【女好き:声だけで逝きそうだ】
【もっちん:死ぬな! 死ぬんじゃない!】
【女好き:九美子様に踏まれて死にたい】
【どら焼き:下ネタばかり書き込むと、ブロックされるぞ】
【もっちん:これぐらいなら、平気】
【ラッキーターキー:ところで管理者は配信者の他にいるの?】
【もっちん:聞いたことがないな】
「社員のデータベースでは50217は見つからなかった」
「そんな事だと思ったわ」
「どういうこと?」
「プログラム的には前処理というものがあるのよ」
「ええと、分からない」
【女好き:前戯?】
【どら焼き:何か起きる前には、何か前兆みたいな物があるってこと】
【ラッキーターキー:そういうこと】
女好きはちょっとやり過ぎだ。
ブロックと。
前処理の意味は分かった。
コメントも役に立つ。
「分からなければ良いわ。去年の2月1日から今日までの、他の社員のスケジュールと日誌のデータは、抑えたわよね」
「まあしたけど」
「それなら良いわ」
【女好き:[ブロックされました]】
【もっちん:初のブロックか。俺も気をつけよう】
【どら焼き:ブロックされましたか】
【ラッキーターキー:何事もやり過ぎはいけない】
もやっとする。
前処理がなんだって言うんだ。
何か前兆が関係しているのか。
うん分からない。
僕は僕に出来る事をするだけだ。
去年の2月17日を調べよう。
蜂人の家に行く。
去年の2月17日を調べる為だ。
蜂人宅の玄関には忌中札が貼ってあった。
インターホンを押すと奥さんが出た。
「お線香を上げにきました」
「わざわざどうもご丁寧に」
中に入って駅前の花屋で買った菊の花束を渡す。
線香をあげて手を合わせた。
真相を必ず明らかにしてやるからな。
「奥さん、去年の2月17日に何か覚えがありませんか?」
お茶を淹れて貰えたので、一口飲んで口を湿らせてから、切り出した。
「ええと、そうよ。主人の去年の手帳があったわ」
去年の手帳を持って来てもらった。
手帳は見開きで1ヶ月分だから、今年の分も含めて14枚の写真を撮れば事足りる。
ちゃちゃっと撮影した。
当然、九美子にも送る。
2月17日は出張となっている。
あれっ、代休だったはず。
日誌のデータにも業務の書き込みはない。
出張なら何かしらの書き込みがあるはずだ。
逢引という言葉が浮かんだ。
密会という言葉も。
裏金とかそういう取引をしていた可能性もある。
広報は広告費で巨額のお金が動く。
そういう可能性は捨てきれない。
人の好さそうな奥さんを見ていると、そうであってほしいと思う。
「手帳、ありがとうございました」
僕はそう言って、蜂人宅を後にした。
スマホでニュースサイトをチェックすると、蜂人の事件をやっている。
動画をクリック。
ええと、死因は頚部圧迫による窒息死と。
扉は閉まっててどうやって閉めたのか分からないと言っている。
密室殺人の可能性があると。
ただ、扉は木なので、細工はし易いとも。
だろうな。
トリックが使われたに違いない。
どんなトリックかまでは分からないが。
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