上 下
11 / 56

第11話 二択《分岐条件》

しおりを挟む
「もっと簡単言ってくれ」
「条件があるのか、ないのかの二択よ。でも無条件は無条件という条件なのよね」
「分からん」

「それなら、分かり易いことを言いましょうか。ダイヤル錠を壊して、どこかから持ってきたのではない限り、ダイヤル錠の番号は蜂人はちとか犯人の馴染みの番号だわ」

【素間歩:当たり前の事実だけど、九美子様が言うと大発見に聞こえる】
【馬皿:手掛かりのひとつではある】
【勝手ソンソン:唯一の手掛かりを追うのは妥当】
【蟹鎌:ちっちっちっ、適当な数字だという可能性が大だ】
【あいらぶ湯:意味ある数字じゃないと、詰まらない】
【もっちん:うん、俺もそう思う】
【蟹鎌:ちっちっちっ、現実は詰まらない。事実は得てしてそんな物】
【やすピー:意味があると思う。女の勘よ】

 ダイヤル錠の写真を見るとメーカー名が書かれていた。
 それで検索する。
 このタイプの鍵は自由に番号を変えられるらしい。
 なるほど。
 番号を変えられるのなら、馴染みの番号にするだろう。
 僕もそうする。
 九美子もその可能性は調べたらしい。

「どうやって番号から調べる?」
「幸いにしてネットに電話番号はあるの。アングラだけどね」

【ふんすか:違法じゃないのかな】
【蟹鎌:ちっちっちっ、閲覧するのは大丈夫だ。アップロードはかなり違法性が高いが】
【もっちん:俺の電話番号も載ってたりするのかな。怖いな】
【やすピー:卒業名簿からとか漏れたりするのよね。取り締まってほしい】

「危なくない?」

 アングラは危険だという認識は間違いないだろう。
 違法性は置いといても。

「そこは仕方ないわ。再帰呼び出しって知っている。バグの元なの。危ないのよ。でも必要なら使う。それがプログラマーよ」

 プログラムの話をされるとどうも調子が狂う。
 九美子は瞬く間に電話番号を調べた。
 どうやら、電話番号のデータは前にダウンロードしていたらしい。

「メールで送っておいたわ」
「下5桁が50217の電話番号は、どうせ何万件とあるのだろう。僕が調べるのかな? そうだ、団符だんぷの野郎にも送ってやれ」

 僕は名刺に書かれているメールアドレスを九美子に教えた。
 これで嫌がらせにはなるだろう。
 何万件の確認に追われるがいい。
 僕が出来るのは社内に該当者がいるのか調べる事だけだ。

【コアラのマッチ:団符だんぷって誰?】

団符だんぷは僕を虐めた刑事さんだよ」

【コアラのマッチ:尋問した刑事さんね】
【もっちん:団符だんぷ覚えた。街で出会ったら、初男はつおが文句言ってたと言ってやろう】
【缶薙ぎ:電話番号なら犯人に辿り着くわけか】
【蟹鎌:ちっちっちっ、だから無意味な数字だよ】

「これで犯人に辿り着けるとは思わない事ね」
「どういうこと?」
「プログラム的にはね。文字も数字なのよ。そして数字は見方によって意味が変わる」
「ええと」
「『1』は1だけど、『1個』なのか、『一番目』なのか、『真』を意味するのかは、処理によって変わるわ」
「ああ、もやっとする」
「電話番号とは限らないって事よ。住所かも知れないし、車のナンバーかも知れないし、クレジットカードの番号かも」

【素間歩:ええ、そんなのどれか分からないじゃないか】
【勝手ソンソン:分かったら警察は要らない】
【馬皿:まあ、そんなものだよ】
【もっちん:色んな可能性があるのか】

「じゃあ、調べるのは無意味じゃないか」
「きっと警察で調べているはずよ」

 僕は何をしたら良いのかな。
 何もしないという選択肢はない。

「なあ、九美子ヒントをくれ。いいや下さい」
「魚拓の日付」

 僕はスマホの写真を見た。

 令和5年2月17日の物が確かにある。
 令和5年は去年だ。

【素間歩:九美子様、賢い】
【もっちん:賢いだけじゃない美しいのだ】
【勝手ソンソン:エロいのも付け加えて】
【アーラヨット:賢くてエロくて尊いのだ】
【蟹鎌:ちっちっちっ、魚拓の日付と一致したからなんだ】
【ふんすか:絞り込むのはありじゃないか】
【ば7:そうかもな】
【馬皿:調べる価値はある】
【やすピー:偶然の一致ではないかも】

「じゃあ、電話番号は何だったんだ」
「可能性の一つよ。デバッグは全ての可能性を潰すか、推測で行うのよ。考えつく限りの可能性を刑事さんには送っておいたわ」

 ざまあみろ。
 残業にまみれるが良い。
 僕を犯人扱いした罰だ。

「じゃあ、僕は去年の2月17日を調べたら良いんだね」
「そうね。でも、忘れないで。これも可能性の一つよ」

【もっちん:作戦会議終了? なら、九美子様にご趣味を聞いて】
【女好き:九美子様は処女ですか?】
【勝手ソンソン:それを聞くか。まあ気になるけど】
【やすピー:最低!!】

 コメントが下らない話で流れて行く。
 分かったのは視聴者の意見があまり参考にならないってことだ。
 ただ、九美子の意見も勘みたいなものだ。

 2月17日で正しいのか分からない。
 可能性のひとつだとは言っているけど。
 九美子はこの説に自信があるようだ。

 幸いにして、システムにあるスケジュール表と日誌のデータなら手に入る。
 僕は去年の2月17日の蜂人はちとを調べたら良いようだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

その心理学者、事件を追う

山賊野郎
ミステリー
パワフルで口の悪い大学教授・神里達人(50代)は、犯罪心理学の専門家として警察から捜査協力を依頼されることがよくある。 ある春の日、マンションの一室にて滅多刺しにされた男の遺体が発見された。 殺人事件として捜査に取り掛かる警察だが、犯人像の絞り込みに難儀していた。 そこで、担当の刑事は犯罪心理学の専門家である神里にアドバイスを求めに行く。 話を受けた神里は、助手の藤本を伴って事件の解決に臨むのだった。

冴えない「僕」がえっちオナホとして旦那様に嫁いだ日常♡

nanashi
BL
タイトルのまま/将来的にラブラブになるCPのすれ違い肉体関係部分 R18エロlog・♡喘ぎ・BDSM 【内容】(更新時、増えたら追加) 体格差・調教・拘束・野外・騎乗位・連続絶頂・スパンキング・お仕置き・よしよしセックス・快楽堕ち・ストリップ 結腸・アナルビーズ・ちんぽハーネスで散歩・鞭 尿道開発・尿道プレイ・尿道拡張・疑似放尿・ブジー・カテーテル 強制イラマチオ・嘔吐(少し)・ 攻めの媚薬・受の号泣・小スカ・靴舐め 婚前調教編:ストリップ・竿酒・土下座・床舐め・開発・ぺニス緊縛・イラマチオ・オナ禁 【今後書きたい】種付けプレス・体格差のあるプレイ・ピアッシング・鼻穴射精・喉奥開発・乳首開発・乳首ピアス・おちんぽ様への謝罪・ハメ懇願土下座・異物挿入・産卵・貞操帯 (らぶらぶ軸で書きたい)フィスト・アナルホール 内容が分かりやすいよう更新日とプレイがタイトル。基本繋がってない。 モチベのために、応援や感想waveboxにいただけるととても嬉しいです♡

最近、夫の様子がちょっとおかしい

野地マルテ
ミステリー
シーラは、探偵事務所でパートタイマーとして働くごくごく普通の兼業主婦。一人息子が寄宿学校に入り、時間に余裕ができたシーラは夫と二人きりの生活を楽しもうと考えていたが、最近夫の様子がおかしいのだ。話しかけても上の空。休みの日は「チェスをしに行く」と言い、いそいそと出かけていく。 シーラは夫が浮気をしているのではないかと疑いはじめる。

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます

藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました! 2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました 2024年8月中旬第三巻刊行予定です ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。 高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。 しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。 だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。 そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。 幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。 幼い二人で来たる追い出される日に備えます。 基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています 2023/08/30 題名を以下に変更しました 「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」 書籍化が決定しました 2023/09/01 アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります 2023/09/06 アルファポリス様より、9月19日に出荷されます 呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております 2024/3/21 アルファポリス様より第二巻が発売されました 2024/4/24 コミカライズスタートしました 2024/8/12 アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です

病院の僧侶(プリースト) と家賃という悪夢にしばられた医者

加藤かんぬき
ミステリー
 僧侶サーキスは生き別れた師匠を探す旅の途中、足の裏に謎の奇病が出現。歩行も困難になり、旅を中断する。  そして、とある病院で不思議な医者、パディ・ライスという男と出会う。  中世時代のヨーロッパという時代背景でもありながら、その医者は数百年は先の医療知識と技術を持っていた。  医療に感銘を受けた僧侶サーキスはその病院で働いていくことを決心する。  訪れる患者もさまざま。  まぶたが伸びきって目が開かない魔女。  痔で何ものにもまたがることもできなくなったドラゴン乗りの戦士。  声帯ポリープで声が出せなくなった賢者。  脳腫瘍で記憶をなくした勇者。  果たしてそのような患者達を救うことができるのか。  間接的に世界の命運は僧侶のサーキスと医者パディの腕にかかっていた。  天才的な技術を持ちながら、今日も病院はガラガラ。閑古鳥が鳴くライス総合外科病院。  果たしてパディ・ライスは毎月の家賃を支払うことができるのか。  僧侶のサーキスが求める幸せとは。  小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

僕は警官。武器はコネ。【イラストつき】

本庄照
ミステリー
とある県警、情報課。庁舎の奥にひっそりと佇むその課の仕事は、他と一味違う。 その課に属する男たちの最大の武器は「コネ」。 大企業の御曹司、政治家の息子、元オリンピック選手、元子役、そして天才スリ……、 様々な武器を手に、彼らは特殊な事件を次々と片付けていく。 *各章の最初のページにイメージイラストを入れています! *カクヨムでは公開してるんですけど、こっちでも公開するかちょっと迷ってます……。

処理中です...