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第9話 助け船《プログラム修復》
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スマホがヴィヴァルディの春を奏でる。
「出ても?」
「誰からだ?」
「友人からです」
「早く出ろ」
「責任をとってくれ」
「赤ちゃんでも出来たような必死さね」
茶化すような九美子の声にほっとする。
「冗談じゃない。ダイヤル錠の件でたぶん睨まれている」
「刑事さんに代わって」
「刑事さんにだって」
僕はスマホを刑事さんに手渡した。
「もしもし。えっ、そんな事をおっしゃっても。仕方ありませんな」
刑事さんが通話を切った。
「今日は帰って良いぞ」
「本当に?」
「ただ所在は明らかにしておいてくれ。スマホは持ち歩くように」
「はい」
名刺を貰った。
四角い顔の刑事さんの名前は団符というらしい。
九美子が団符さんに何を言ったのか分からないが、とにかく助かった。
配信するか。
続報を聞きたがってた人もいる。
事件解決の糸口になるか分からないが、三人寄れば文殊の知恵という。
沢山人が集まればそれだけいいアイデアが出るということわざだ。
警察署の隣に喫茶店があった。
そこで配信の開始だ。
九美子のテレビ電話も繋いだ。
【おっと青函トンネル:配信してる。一番乗りかな】
【もっちん:一番乗り逃した】
【らっこ:警察はどうでしたか。犯人は捕まりそうですか】
【もっちん:九美子様も降臨しているし、良かった】
【勝手ソンソン:始まったばっかりだね】
【やすピー:初手、2六歩ってとこね】
「状況を説明すると遺体発見に至る経緯を説明してきた。何十回とね。取調室でカツ丼も食べた。九美子、さっきは助かったありがとう」
「いいのよ。ちょっと面白くなったから」
【やんまま:ええと始まったところだよね】
【もっちん:そうだよ】
【おっと青函トンネル:取り調べにカツ丼は鉄板だね】
【勝手ソンソン:取り調べ室で食うカツ丼はおふくろの涙の味】
【やすピー:田舎のおふくろさんが泣いているぞって言われて泣く奴ね】
【絵理:釈放されたってこと】
「逮捕状とか緊急逮捕はなかった。とりあえず、容疑者になったみたい。ところで九美子、面白いって何が」
「小屋の木戸だけど、プログラム的には『i >= 木戸の幅』で『真』の問題ね」
【コアラのマッチ:分かりせん】
【もっちん:俺も分からん】
【勝手ソンソン:俺も同じく】
【やすピー:それ以上ってことね】
「どういう意味?」
「それ以上は行かないって事。分からないの?」
「分からないな」
どうやら、九美子には何かが見えているようだ。
もったいぶらずに教えて欲しいところだが。
【コアラのマッチ:何となく分かった】
【缶薙ぎ:うーん、ミステリアス】
【女好き:うほっ、美女だ。表情が変わるとこれまたいい】
【アーラヨット:降臨ですか。なむなむ(‐人‐)】
「部屋に入って何か気がつかなかった? 匂いとか」
「臭い匂いと木の良い香りがしたな。臭いのは遺体からの匂いだと思うけど」
「これで分かったわ。どんぴしゃ。私の推理通りよ」
【らっこ:木の香りが何か】
【おっと青函トンネル:何となく分かった。ネタバレになるから言わないけど。木の香りがするのはどんな時?】
【もっちん:えー、教えてよ】
【勝手ソンソン:む、分かった。これは簡単だ】
【やすピー:うん、簡単】
そりゃ、芳香剤を使った時だろ。
だよね。
【ば7:やはり密室ではなかったのですか】
【馬皿:俺も分かった】
【ラッキーターキー:犯人逮捕間近ですね】
【もっちん:俺は分からん】
「警察に知らせなくて良いの?」
「警察もすぐに気づくわよ」
なら良いか。
【ちくわ部:おー、九美子様】
【素間歩:事件に進展があったのか。見逃した】
【キャタピラ:ゆっくり見直せよ。俺もいま来たところ】
【もっちん:九美子様には謎が解けたみたい】
【カルメランコ:そうなの】
【焼きラーメン:じゃあ事件もすぐに解決するね】
「僕の無実を晴らしたい」
「任せなさい」
【カルメランコ:九美子様はプログラマーらしいから、プログラマー探偵だね】
【焼きラーメン:プロのスタイルがグラマー探偵でもある】
【ポールペン:ざぶとん一枚】
【やすピー:スタイルより内面を褒めなさいよ】
【どら焼き:任せなさいと胸を張ると凄いね】
【勝手ソンソン:九美子様に任せれば大丈夫】
「凄い自信だね」
「アプリは複数の機能が同時に動いているように見えるでしょ」
「うんうん」
「プログラム的には一つの事しかやってないのよ。沢山の情報を一度に表示して、いかにも一度にたくさんの事をしているように見せるけど。見せかけなの。筋道というか流れは一つ」
「僕にはその流れを見つけられないや」
「それなら私に会いに来て。夕飯を一緒に食べましょう。そこで作戦会議ね」
【カルメランコ:デートとは羨ましい】
【勝手ソンソン:配信者はヘタレだから何もない】
【焼きラーメン:何かあったら、荒らしてやる】
【もっちん:ブロックされるぞ】
【焼きラーメン:うそうそ、祝福するよ】
空模様は雪になっていた。
とにかく、九美子に会うまでに容疑者を見つけておかないと。
「出ても?」
「誰からだ?」
「友人からです」
「早く出ろ」
「責任をとってくれ」
「赤ちゃんでも出来たような必死さね」
茶化すような九美子の声にほっとする。
「冗談じゃない。ダイヤル錠の件でたぶん睨まれている」
「刑事さんに代わって」
「刑事さんにだって」
僕はスマホを刑事さんに手渡した。
「もしもし。えっ、そんな事をおっしゃっても。仕方ありませんな」
刑事さんが通話を切った。
「今日は帰って良いぞ」
「本当に?」
「ただ所在は明らかにしておいてくれ。スマホは持ち歩くように」
「はい」
名刺を貰った。
四角い顔の刑事さんの名前は団符というらしい。
九美子が団符さんに何を言ったのか分からないが、とにかく助かった。
配信するか。
続報を聞きたがってた人もいる。
事件解決の糸口になるか分からないが、三人寄れば文殊の知恵という。
沢山人が集まればそれだけいいアイデアが出るということわざだ。
警察署の隣に喫茶店があった。
そこで配信の開始だ。
九美子のテレビ電話も繋いだ。
【おっと青函トンネル:配信してる。一番乗りかな】
【もっちん:一番乗り逃した】
【らっこ:警察はどうでしたか。犯人は捕まりそうですか】
【もっちん:九美子様も降臨しているし、良かった】
【勝手ソンソン:始まったばっかりだね】
【やすピー:初手、2六歩ってとこね】
「状況を説明すると遺体発見に至る経緯を説明してきた。何十回とね。取調室でカツ丼も食べた。九美子、さっきは助かったありがとう」
「いいのよ。ちょっと面白くなったから」
【やんまま:ええと始まったところだよね】
【もっちん:そうだよ】
【おっと青函トンネル:取り調べにカツ丼は鉄板だね】
【勝手ソンソン:取り調べ室で食うカツ丼はおふくろの涙の味】
【やすピー:田舎のおふくろさんが泣いているぞって言われて泣く奴ね】
【絵理:釈放されたってこと】
「逮捕状とか緊急逮捕はなかった。とりあえず、容疑者になったみたい。ところで九美子、面白いって何が」
「小屋の木戸だけど、プログラム的には『i >= 木戸の幅』で『真』の問題ね」
【コアラのマッチ:分かりせん】
【もっちん:俺も分からん】
【勝手ソンソン:俺も同じく】
【やすピー:それ以上ってことね】
「どういう意味?」
「それ以上は行かないって事。分からないの?」
「分からないな」
どうやら、九美子には何かが見えているようだ。
もったいぶらずに教えて欲しいところだが。
【コアラのマッチ:何となく分かった】
【缶薙ぎ:うーん、ミステリアス】
【女好き:うほっ、美女だ。表情が変わるとこれまたいい】
【アーラヨット:降臨ですか。なむなむ(‐人‐)】
「部屋に入って何か気がつかなかった? 匂いとか」
「臭い匂いと木の良い香りがしたな。臭いのは遺体からの匂いだと思うけど」
「これで分かったわ。どんぴしゃ。私の推理通りよ」
【らっこ:木の香りが何か】
【おっと青函トンネル:何となく分かった。ネタバレになるから言わないけど。木の香りがするのはどんな時?】
【もっちん:えー、教えてよ】
【勝手ソンソン:む、分かった。これは簡単だ】
【やすピー:うん、簡単】
そりゃ、芳香剤を使った時だろ。
だよね。
【ば7:やはり密室ではなかったのですか】
【馬皿:俺も分かった】
【ラッキーターキー:犯人逮捕間近ですね】
【もっちん:俺は分からん】
「警察に知らせなくて良いの?」
「警察もすぐに気づくわよ」
なら良いか。
【ちくわ部:おー、九美子様】
【素間歩:事件に進展があったのか。見逃した】
【キャタピラ:ゆっくり見直せよ。俺もいま来たところ】
【もっちん:九美子様には謎が解けたみたい】
【カルメランコ:そうなの】
【焼きラーメン:じゃあ事件もすぐに解決するね】
「僕の無実を晴らしたい」
「任せなさい」
【カルメランコ:九美子様はプログラマーらしいから、プログラマー探偵だね】
【焼きラーメン:プロのスタイルがグラマー探偵でもある】
【ポールペン:ざぶとん一枚】
【やすピー:スタイルより内面を褒めなさいよ】
【どら焼き:任せなさいと胸を張ると凄いね】
【勝手ソンソン:九美子様に任せれば大丈夫】
「凄い自信だね」
「アプリは複数の機能が同時に動いているように見えるでしょ」
「うんうん」
「プログラム的には一つの事しかやってないのよ。沢山の情報を一度に表示して、いかにも一度にたくさんの事をしているように見せるけど。見せかけなの。筋道というか流れは一つ」
「僕にはその流れを見つけられないや」
「それなら私に会いに来て。夕飯を一緒に食べましょう。そこで作戦会議ね」
【カルメランコ:デートとは羨ましい】
【勝手ソンソン:配信者はヘタレだから何もない】
【焼きラーメン:何かあったら、荒らしてやる】
【もっちん:ブロックされるぞ】
【焼きラーメン:うそうそ、祝福するよ】
空模様は雪になっていた。
とにかく、九美子に会うまでに容疑者を見つけておかないと。
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