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第5章 アンデッドでざまぁ
第232話 おっさん、クッキーを売る
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「任務、ご苦労様。あの兄弟が助かって良かったわ。シュトロムも驚いていたわよ。絶望的な状況だったと聞いたわ」
イリスは市場の花屋で花束を作りながら、そう言った。
「ふん、少し危ない所はあったので、及第点だな」
「ところでフードをした怪しい奴らに見覚えは? あなたの事を聞いて回っているわ」
「ありすぎて、分からん。砦と基地は派手にやったし、アンデッドになる前にも色々あったしな」
「で、どうするの」
「そうだな。どこの手の者か突きとめてから始末しよう」
「そうね。なら、ムニが市場で露店を出すのはどうかしら」
「なるほど、俺が店番をやっていれば、そういう奴らなら見張るな。そして隙があったら事に及ぶだろう」
「じゃ、決まりね。縦8番の横4番の区画だから、よろしく」
さて、何を売ろう
評判になった方が早く奴らが釣れるだろう。
俺は指定の場所でゴザを広げ、魔力通販でカントリーママというクッキーを仕入れて、ざるに容れ置いた。
包装は破ってある。
甘いチョコの匂いがした。
品物はこれで良い。
包装紙は花柄の紙を用意して、セロハンテープを出せば準備オッケーだ。
「世界一美味いクッキーひとつが銅貨1枚だよ」
俺は呼び込みを始めた。
「本当に世界一美味いの」
女の子がそう言ってクッキーを物欲しそうに見つめる。
「おう、なんなら一つ食っていいぞ」
「やった」
女の子はクッキーを一つ摘まむと口に入れた。
「うわ、中がしっとりしてる。それに何か粒が入っている。美味しい。これどうやって作るの」
「企業秘密だ」
「友達に知らせてやらないと。おじさん、クッキー5枚包んで」
「あいよ。銅貨5枚だよ」
口コミでそのうち人気店になるだろう。
客足はほとんどなく一日目が終わった。
次の日、ゴザを広げると待ってましたと言わんばかりに人が押し寄せて来た。
「20枚くれ」
「あー、枚数制限を考えてなかったな。一人20枚までだ」
「えー、50枚買おうと思ってたのに」
混乱も起きたが、用意したクッキー500枚が午前中で売り切れた。
店の片付けをしているとフードを被った二人連れが現れる。
「その変な兜。あなたがムニさんね」
「ジャスミン、この人は違うんじゃない」
二人の正体が分かった。
ジャスミンとアニータだ。
アニータは三年でかなり背が伸びた。
今ではジャスミンとさほど変わらない。
人間の心は懐かしさでいっぱいになった。
アンデッドの心が邪魔ものだ、食ってしまえと言う。
「俺がムニだ」
「この声。探したのよ。急に居なくなるから。理由は分かるわ。この国を改革したいのよね」
「ほんとムニの声だ」
「なんの事やら、俺はクッキー売りのムニだ」
「惚けるのね。まあ良いわ。アニータ、出直しましょ」
「うん」
今の状態でジャスミンとアニータに会っても、どうにかなるものではない。
下手をすると状況が悪化する。
さて、どうしたものか。
お帰り願うのが良いと思うが。
おや、フードを被った奴らが後をつけてくる。
ジャスミン、アニータ、何度言ったら分かる。
俺はしがないクッキー売りだと。
あれっ、三人いる。
こいつら別口か。
俺はトイレのすっぽんを取り出して、路地に入った。
出会い頭にトイレのすっぽんで殴った。
ぱこーんといい音がして、フードの一人が昏倒した。
後の二人は短刀を取り出すが遅い。
俺は素早く動くと、やはりトイレのすっぽんで殴った。
ふん、弱い奴らだ。
さとて、尋問はイリス達に任せよう。
ホイッスルを吹くとしばらくして男達が現れた。
「新入り、なかなかやるな」
男達を指揮してから、タインがそう言った。
「モンスターとやり合う事に比べたらわけない」
「尋問に付き合え。これも経験だ」
「仕方ない。一緒に行くよ」
フードの奴らは荷車に積まれ、市場の倉庫に運び込まれた。
「目を覚ませ」
フードを除けて現れたのは知らない男だった。
タインは男に水を掛けた。
いや、どこかで見た記憶がある。
どこだろう。
ああ、皇帝の宮殿だ。
そこで確かに見た。
「タイン、こいつらは皇帝の手の者だ」
「ほう、なぜ知っている」
「宮殿で見た」
「お前、宮殿に居たのか」
タインの顔に不信そうな表情が浮かぶ。
俺を二重スパイだとでも思っているかも知れない。
「奴隷をやっていたんだよ」
「そんな過去がな。悪い、少し疑った」
「いやいいんだ。俺が胡散臭い奴なのは間違いない」
「お前、ムニか。死んだはず」
男が目を覚ました。
「死んだよ。生き返ったがな。タイン、尋問は時間の無駄だ。こいつらは普通のやり方では喋らないぞ。いい薬をやろうか」
「それには及ばない。薬は信用してないんだ。だが一応の尋問はする。もう帰っていいぞ」
俺とこの男達の関係を疑ったのだろう。
不信はぬぐえないのは分かる。
俺がスパイだという証拠はでないはずだ。
攪乱する為に嘘を吹き込まれたりする可能性はあるがな。
それも些細な事だ。
ソロで仕事をすれば良い。
それに、尋問で奴隷時代の俺の事が知られても不都合はない。
イリスは市場の花屋で花束を作りながら、そう言った。
「ふん、少し危ない所はあったので、及第点だな」
「ところでフードをした怪しい奴らに見覚えは? あなたの事を聞いて回っているわ」
「ありすぎて、分からん。砦と基地は派手にやったし、アンデッドになる前にも色々あったしな」
「で、どうするの」
「そうだな。どこの手の者か突きとめてから始末しよう」
「そうね。なら、ムニが市場で露店を出すのはどうかしら」
「なるほど、俺が店番をやっていれば、そういう奴らなら見張るな。そして隙があったら事に及ぶだろう」
「じゃ、決まりね。縦8番の横4番の区画だから、よろしく」
さて、何を売ろう
評判になった方が早く奴らが釣れるだろう。
俺は指定の場所でゴザを広げ、魔力通販でカントリーママというクッキーを仕入れて、ざるに容れ置いた。
包装は破ってある。
甘いチョコの匂いがした。
品物はこれで良い。
包装紙は花柄の紙を用意して、セロハンテープを出せば準備オッケーだ。
「世界一美味いクッキーひとつが銅貨1枚だよ」
俺は呼び込みを始めた。
「本当に世界一美味いの」
女の子がそう言ってクッキーを物欲しそうに見つめる。
「おう、なんなら一つ食っていいぞ」
「やった」
女の子はクッキーを一つ摘まむと口に入れた。
「うわ、中がしっとりしてる。それに何か粒が入っている。美味しい。これどうやって作るの」
「企業秘密だ」
「友達に知らせてやらないと。おじさん、クッキー5枚包んで」
「あいよ。銅貨5枚だよ」
口コミでそのうち人気店になるだろう。
客足はほとんどなく一日目が終わった。
次の日、ゴザを広げると待ってましたと言わんばかりに人が押し寄せて来た。
「20枚くれ」
「あー、枚数制限を考えてなかったな。一人20枚までだ」
「えー、50枚買おうと思ってたのに」
混乱も起きたが、用意したクッキー500枚が午前中で売り切れた。
店の片付けをしているとフードを被った二人連れが現れる。
「その変な兜。あなたがムニさんね」
「ジャスミン、この人は違うんじゃない」
二人の正体が分かった。
ジャスミンとアニータだ。
アニータは三年でかなり背が伸びた。
今ではジャスミンとさほど変わらない。
人間の心は懐かしさでいっぱいになった。
アンデッドの心が邪魔ものだ、食ってしまえと言う。
「俺がムニだ」
「この声。探したのよ。急に居なくなるから。理由は分かるわ。この国を改革したいのよね」
「ほんとムニの声だ」
「なんの事やら、俺はクッキー売りのムニだ」
「惚けるのね。まあ良いわ。アニータ、出直しましょ」
「うん」
今の状態でジャスミンとアニータに会っても、どうにかなるものではない。
下手をすると状況が悪化する。
さて、どうしたものか。
お帰り願うのが良いと思うが。
おや、フードを被った奴らが後をつけてくる。
ジャスミン、アニータ、何度言ったら分かる。
俺はしがないクッキー売りだと。
あれっ、三人いる。
こいつら別口か。
俺はトイレのすっぽんを取り出して、路地に入った。
出会い頭にトイレのすっぽんで殴った。
ぱこーんといい音がして、フードの一人が昏倒した。
後の二人は短刀を取り出すが遅い。
俺は素早く動くと、やはりトイレのすっぽんで殴った。
ふん、弱い奴らだ。
さとて、尋問はイリス達に任せよう。
ホイッスルを吹くとしばらくして男達が現れた。
「新入り、なかなかやるな」
男達を指揮してから、タインがそう言った。
「モンスターとやり合う事に比べたらわけない」
「尋問に付き合え。これも経験だ」
「仕方ない。一緒に行くよ」
フードの奴らは荷車に積まれ、市場の倉庫に運び込まれた。
「目を覚ませ」
フードを除けて現れたのは知らない男だった。
タインは男に水を掛けた。
いや、どこかで見た記憶がある。
どこだろう。
ああ、皇帝の宮殿だ。
そこで確かに見た。
「タイン、こいつらは皇帝の手の者だ」
「ほう、なぜ知っている」
「宮殿で見た」
「お前、宮殿に居たのか」
タインの顔に不信そうな表情が浮かぶ。
俺を二重スパイだとでも思っているかも知れない。
「奴隷をやっていたんだよ」
「そんな過去がな。悪い、少し疑った」
「いやいいんだ。俺が胡散臭い奴なのは間違いない」
「お前、ムニか。死んだはず」
男が目を覚ました。
「死んだよ。生き返ったがな。タイン、尋問は時間の無駄だ。こいつらは普通のやり方では喋らないぞ。いい薬をやろうか」
「それには及ばない。薬は信用してないんだ。だが一応の尋問はする。もう帰っていいぞ」
俺とこの男達の関係を疑ったのだろう。
不信はぬぐえないのは分かる。
俺がスパイだという証拠はでないはずだ。
攪乱する為に嘘を吹き込まれたりする可能性はあるがな。
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