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第3章 分解スキルでざまぁ編

第125話 おっさん、調味料を売る

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 うーん、武器屋から情報が入ってくる事は期待薄だ。
 ジェリが立ち寄りそうな場所。
 塩関係だな。
 俺が塩問屋に行ったら門前払いだろう。
 なんと言ったら話を聞いてもらえるか。
 塩を売りますは駄目だな。
 ここは塩の産地だ。
 品質には自信があるが。
 2万円弱の魔力では出せる量も高が知れている。

 ダンジョンコアの魔力でなぜ塩を買わなかったかと言うと、大量の塩を持ち込むと塩を作っている職人が大打撃だ。
 かと言って少ない量では影響力がないだろう。
 決めた。
 化学調味料だ。
 ただの塩が超高級な塩になる魔法の粉と言って売り込もう。
 高級路線なら、量が少なくても問題ない。

 20キロの化学調味料で1万円弱。
 いいんじゃないのこれ。

 俺は塩問屋を尋ねた。

「塩に混ぜると劇的に美味くなる魔法の粉があるんだが、商談をしたい」
「ほう、胡散臭いな。原料はなんだ言ってみろ」
「海藻を精製したものだ。食えないものじゃない。麻薬とも違う」

 実際は海藻の成分を化学的に作り出した物だけど。

「なるほど、海藻をね」
「どうですか」
「お前さん馬鹿か。塩に海藻の粉を混ぜる事ぐらい簡単に出来る。わしなら買わんで自分で作る」
「なるほど、参考になりました。秘密を教えた報酬として買ってくれませんか」
「いいだろう。見本として買ってやる。後で海藻の粉を混ぜた奴と比較するが悪く思うなよ」
「ええ、うちは小商いなんで、少し買って頂ければ問題ないです」
「変わった奴だな。悔しがる素振りが少しもない」

「相談なんですがね。この女が塩を大量に買っていきませんでしたか」

 俺は人相書きを見せた。

「見ない顔だな。ははーん、お前さんこれが目的だったんじゃないかね」
「そこのところはご想像にお任せを」
「この女は見ないな。さあ、魔法の粉という奴を出してみろ」

 俺は化学調味料を取り出した。

「おい、料理長を呼べ」

 店員が小僧にそう言った。
 しばらくして、エプロンを着けた料理人と思われる人が現れた。

 化学調味料と塩が混ぜられる。

「食ってみろ」
「はい。これはどこの産の塩ですか。コクと言うかなんと言うか美味い」
「宣伝文句に偽りはないようだ。よし、人探しに協力してやろう。うちと取引のある料理店を紹介してやる。人相書きを持っていくといい」

 紹介状と店のリストを貰った。
 一軒目はここだ。

「邪魔するよ」

 料理人が奥から顔を覗かせた。

「はい、なんですか」
「塩問屋に紹介してもらったんだ。実は人を探していてね」

 料理人は紹介状を読むとため息をついた。

「協力してやりたいのは山々だが、商売が忙しくてね。客の顔なんて確認しちゃいられない」
「そうですか。この街にいる間だけですが、魔法の調味料を提供しますよ」
「ほんとか、香辛料なんて言うんじゃないだろうな。ここは港街だから、香辛料は食い飽きた」
「いいえ、とんかつソースと醤油です。特に醤油はお勧めです。焼いた肉の表面に塗ると、店に行列が出来ること請け合いだ」
「ほう。試して見ていいか」
「どうぞどうぞ」

 厨房にお邪魔する。
 肉を串に刺して焼き始めた。
 焼きあがった所で醤油が塗られた。
 醤油の焼ける香ばしい匂いが厨房いっぱいに広がる。

「こいつはたまらん」
「でしょでしょ」
「人探しに協力してやるよ」
「頼みますよ」
「任せときな」

 こんな感じでどの店も快く協力してくれた。
 最後の一軒は料理店じゃなかった。

「あー、睨まないでもらえます」
「おめぇ、ただでわしらを使おうなんて考えていないよな」

 そう言ったのは露店の元締めだ。

「魔法の調味料を提供します」
「ばか言っちゃいけない。うちで回るのは最後だろう。今までその魔法の調味料をさんざん使っただろう」
「しょうがないな。どこにも出してない取って置きを出すよ。その名もマヨネーズ」
「ほう、この黄色いのがね」

「パンに塗って少し炙ってもいいし、焼いた魚に塗ってもいい。蒸かした芋と一緒に食うのもお勧めだ」
「なるほどな。どれぐらいの量を用意できる?」
「一日もらえればかなりの数を」
「分かった。人探しに協力してやる。もっとも今貰った見本で食ってみてからだな」
「大丈夫、味には自信がある。また明日来るよ」

 マヨネーズの魅力に抗えるものなら抗ってみやがれ。
 明日、納品に来た時に白旗を上げる様子が想像できる。

 さあ、ダンジョンに行って、調味料を仕入れるぞ。
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