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第3章 分解スキルでざまぁ編

第115話 おっさん、砥石を売る

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 武器屋を巡る口実としたのは魔力通販で買った砥石。
 それを店でアイテムボックスから取り出した。

「じゃまするよ。砥石を売りに来たんだがどうだい。その名も両面砥石。砥ぎと仕上げが一つの砥石でできちゃう」
「ほう、この工夫は見たことがないな。砥石を貼り合わせて表と裏で違う石が使えるのか。考えたね」
「良いアイデアだろう。包丁を砥ぎに出す主婦辺りに売るために、いくつか仕入れたらいいんじゃないかな」
「まいったね。うちは武器屋だってえの」
「でも、包丁を扱ったりするだろう」
「まあな。ナイフも包丁も似たような物だからな。よし、いくつか買ってやる。冒険者の連中にも売れるだろう」
「それと、こういう奴らが来なかったか」

 俺は人相書きを取り出した。

「客の情報は喋れないな」
「こいつらはさ。武器屋のツケを踏み倒して別の街に移っちまった」
「それは許せんな」
「そうだろ。馴染みの武器屋に頼まれたんだよ。他の街に行商に行ったらやつらを捕まえてくれってな」
「よし、力になろう」
「なに、奴らが来たら何食わぬ顔をしておいて、後でこっそり教えてくれりゃ良い」
「おう、覚えておくよ」

 ふう、どんなものかと思ったが割と上手くいくみたいだ。
 武器屋を回って同じ事を説明した。
 これであいつらが武器のメンテナンスに現れればこっちのものだ。

 次の日、武器屋が訪ねて来た。
 宿の食堂で話を聞く。

「あいつらが見つかったのか」
「いやそうじゃねぇ。砥石がよ。評判があまり良いものだから、追加で仕入れられないかと」
「なんだそっちか」
「がっかりさせて悪いな」
「追加でいくつ欲しいんだ」
「20いや30だな」

 一万円分の魔力では砥石は三個しか買えない。
 生贄の魔力回路を使うとして。
 半日ほどかかるな。

「半日ぐらいかかるがいいか」
「おういいぜ。それでな。店の前を貸すから、売り子をやってくれないか」
「それは。ちょっとな」
「なに、こっちは手数料を少しもらえれば良い」

 うーん、困ったぞ。
 俺が売り子なんかしていたら確実にやつらに気づかれる。
 どうしたものか。

「その売り子、私がやってあげましょうか」

 通りかかったパティが話を聞いてそう言った。

「やつらと面識があるんだろう」
「ええ、でも私の借金の返済期日はまだよ。会っても世間話ぐらいは出来るわ」
「そうなのか。じゃ、頼もうかな。パティがやるけど良いよな」
「主婦相手の商売だから、女性でも構わない」
「よし決まりだ」

 さてと、このダンジョンのハードスネイルは動かない奴だ。
 生贄にするには丁度いい。
 俺はダンジョンにもぐってハードスネイルを探した。
 殻に閉じこもったので、盾を構えて接近。
 魔力回路を広げその上に殻を転がした。
 後は魔力を吸い上げる時間、耐えれば良い。

 よしまずは一回目と。
 こいつら、魔力が1000もないぞ。
 生命力がなくなると、ハードスネイル死んで魔石を残した。

 次にいくか。
 半日ほどでなんとか砥石30個仕入れる事ができた。

 砥石をパティに届けて考える。

 やばいな。
 砥石30個で足りるかな。
 たぶん足りない。
 在庫がもう無いと言おうか。
 いや、アイテムボックスを店で使っちまった。
 アイテムボックスに30個しか入れてないなんて不自然すぎる。
 墓穴を掘った感が否めない。

 カタツムリの好物ってなんだっけ。
 そうか、石灰石を食べるって聞いたな。
 なら、石灰をばらまいて、しばらく待ってみよう。

 しばらくしたら、来るわ来るわ。
 おかげで、砥石数百を仕入れる事ができた。
 これだけ売れば在庫切れって言っても不自然ではないだろう。

 フードを被りパティの様子を見に行った。

「どうだ、やつらは来たか」
「安心して、来ないわ。それより砥石がもう無いんだけど」
「それなら、たんまり仕入れてきた」

 やっぱりな、30個じゃ足りなかった。
 主婦の数なんて、物凄い数がいるからな。
 一つ分の砥石で二役するんだから売れない方がおかしい。
 おまけに砥ぎやすいように台座もついている。
 値段設定を間違えたかもしれない。
 だが、二倍の値段じゃ不自然過ぎる。
 まあ、安く売りだしたのだから後には引けない。

 ここから値上げするか。
 今までは特別価格だとか言って。
 そんな事をしたら店の主が良い顔しないだろう。
 情報を貰う立場で反感はまずい。

 仕方ない明日も砥石を仕入れるか。
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