上 下
96 / 248
第2章 異世界帰還でざまぁ編

第96話 おっさん、提案する

しおりを挟む
 哲候てっこうさんから、メールが来た。
 検証は上手くいって、余剰魔力の危険性は認識できたそうだ。
 しかし、働きかけは芳しくないと書いてあった。
 そりゃそうだよな。
 温暖化だって危険性を学者が警告しているのにどの国も本腰を入れているとは言い難い。

 俺は二つの企画書を書き上げた。
 俺は哲候てっこうさんを電話で呼び出した。

「もしもし、山田です。会いたいので時間をくれないか」
「いくら選挙でお世話になった山田さんでもアポなしはちょっと。これからの付き合い方を考えないと」
「ごちゃごちゃ言うな。選挙に勝てるあの青汁をもう融通してやらないぞ」
「それはー。困りましたね。仕方ありません。今回だけですよ」

 哲候てっこうさんはいつものフグ料理店に現れたが、仏頂面だ。

「こいつを聞いてから、その顔ができるかな」

 俺は企画書の内容を説明した。
 一つ目はダンジョンのアトラクション化の案だ。
 ダンジョンの4階層までを遊園地化する。

「拝見しました。これだけだとちょっと弱いと思いますよ」
「4階層から下はプロにもぐらせて中継する。そしてギャンブルをするんだ」
「それは大胆な案ですね」
「でも国がダンジョンを管理する良い口実になるだろう」
「そうですね。命を賭けたモンスターとの闘いは良い見世物になるでしょうね。カジノについては賛否両論あるところではありますが」
「とにかくモンスターを退治すりゃ勝ちなんだよ。演説が上手くなる青汁を餌に働きかけてくれないか」
「私に派閥を作れという事ですね」
「ああ、そうだ。大物議員で協力してくれそうな人を担ぎだして派閥を作っちまえ」
「あの青汁を餌にすれば、たしかにつられる人は多いでしょう」
「企画書はもう一つある」

 俺は二つ目の企画書を説明した。
 そこには魔貨について書いた。
 魔貨は魔石を加工してコインの形にするもので、それ自体には価値がほとんどない。
 そこに魔力を注ぐと価値がでるという訳だ。
 魔力をお金同様に使ってもらおうという魂胆になる。

「また、奇抜な物を出してきましたね」
「たいがいの人は魔力を体の外に出さない。そうすると魔力を消費しない。だが、お金として簡単に使えるなら話は別だ」
「これは、政府がやらなくても民間で出来ると思いますが」
「普及させるのに信用がないと駄目だ。国がやらないと」
「まあ、いいでしょう」
「その二つを派閥の公約みたいな物にするんだ」

「分かりました。やってみましょう。派閥を作って上にいくのも悪くないです。ゆくゆくは総理を目指したいですね」

 俺は哲候てっこうさんと別れてから、ダンジョンに入った。
 弾丸を取り出し、鉛の弾に針で魔力回路を書いた。
 それにインクをすりこんで魔力回路にした。

 魔力回路を書く際のインクは主に二種類ある。
 魔石の粉の有無で種類が分かれる。
 濃縮した魔石の粉が入っているインクは魔力を貯めこむ事ができる。
 魔力回路を作動させるのに魔力は要らないので、肌に触れる必要がない。
 いつも使っているインクは魔力を貯めこむ事は出来ない。
 人間の肌に触れて作動する仕組みだ。

 今回使うのは魔石の粉の入った奴。
 どんな弾丸を作ったかというと、人間に当たらない弾丸だ。
 人間の魔力を感知して、弾丸が空中で止まる。
 かなり無茶な設計だと思う。
 魔力回路の魔力識別は範囲一メートルなので、弾丸が体に接近してからの急停止だ。
 風魔法で見えない魔法のパラシュートを開かせると、弾丸の質量は小さいので、止まるという訳だ。

 それで俺自身を撃ってみたら、銃が爆発した。
 ああ、手に持っているだけで、接近したとなって、発射と同時に弾が止まったのか。
 発射後何コンマ1秒ぐらいは作動しないようにしないと。
 試行錯誤を繰り返し、何とか物に出来た。


 次はモンスターでテストだな。

 部屋に入るとしばらくしてからモンスターがリポップした。
 大猫だった。
 さっきと同じ弾丸で撃つと見事に命中。
 この弾丸を量産すれば、安全にダンジョンを楽しめるだろう。
 絶対ではないが事故が少なくなるはずだ。

 魔石入りのインクはかなり高くつくだろうが、遊びには財布の紐が緩むものだ。
 濃縮しているから分量は少ないが、魔石の材料は沢山使う。
 ダンジョンに入って魔石を獲得する理由にもなる。

 次は魔貨だ。
 まずは魔石の粉を作る。
 異世界産の魔石を溶かす液体に漬けると不純物と分離させられる。
 不純物を取り除いたら乾燥させる。
 この粉は魔石入りのインクでも使う。
 この粉を型に入れスキルで固めると魔貨の出来上がりだ。
 制作に使うスキルは合成魔石を作るのと同じスキルだ。

 製作には暖かい家のメンバーに協力してもらった。
 魔貨に魔力を注ぐと魔力が吸い込まれるように入る。
 満タンになると魔貨が光る。
 魔力回路の形に溝がありそこにインクを入れたので魔道具になっている。
 弾丸と魔貨のサンプルを哲候てっこうさんに送った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移ボーナス『EXPが1になる』で楽々レベルアップ!~フィールドダンジョン生成スキルで冒険もスローライフも謳歌しようと思います~

夢・風魔
ファンタジー
大学へと登校中に事故に巻き込まれて溺死したタクミは輪廻転生を司る神より「EXPが1になる」という、ハズレボーナスを貰って異世界に転移した。 が、このボーナス。実は「獲得経験値が1になる」のと同時に、「次のLVupに必要な経験値も1になる」という代物だった。 それを知ったタクミは激弱モンスターでレベルを上げ、あっさりダンジョンを突破。地上に出たが、そこは小さな小さな小島だった。 漂流していた美少女魔族のルーシェを救出し、彼女を連れてダンジョン攻略に乗り出す。そしてボスモンスターを倒して得たのは「フィールドダンジョン生成」スキルだった。 生成ダンジョンでスローライフ。既存ダンジョンで異世界冒険。 タクミが第二の人生を謳歌する、そんな物語。 *カクヨム先行公開

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

タブレット片手に異世界転移!〜元社畜、ダウンロード→インストールでチート強化しつつ温泉巡り始めます〜

夢・風魔
ファンタジー
一か月の平均残業時間130時間。残業代ゼロ。そんなブラック企業で働いていた葉月悠斗は、巨漢上司が眩暈を起こし倒れた所に居たため圧死した。 不真面目な天使のせいでデスルーラを繰り返すハメになった彼は、輪廻の女神によって1001回目にようやくまともな異世界転移を果たす。 その際、便利アイテムとしてタブレットを貰った。検索機能、収納機能を持ったタブレットで『ダウンロード』『インストール』で徐々に強化されていく悠斗。 彼を「勇者殿」と呼び慕うどうみても美少女な男装エルフと共に、彼は社畜時代に夢見た「温泉巡り」を異世界ですることにした。 異世界の温泉事情もあり、温泉地でいろいろな事件に巻き込まれつつも、彼は社畜時代には無かったポジティブ思考で事件を解決していく!? *小説家になろうでも公開しております。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

処理中です...