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第2章 異世界帰還でざまぁ編

第83話 おっさん、スパイをあぶりだす

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「社長、我が社の製品の類似品が出回りました」
「何の機能もない例の奴か」
「いえ、ちゃんと機能する製品のようです」
「どういう事だ。材料は俺しか手に入れられないはずだ」
「それが言いにくいのですが、社員が材料の横流しをしたようです。しかし、誰がやったのかは分かりません」
「とにかく、特定しないと、警察にも突き出せないな」
「それが闇冒険者が手引きされて入り込んだようです。防犯カメラに姿が映ってました。守衛は姿を見ていません」
「認識阻害だな」

 どうしたもんかな。
 手引きした人間を見つけ出すのは容易ではない。
 材料のある場所の位置を教えたに過ぎないからだ。
 通信記録を押さえるのは警察でもないと無理だ。
 闇冒険者を捕まえるのが一番手っ取り早いと思う。

 俺は会社の門のそばにある守衛室の脇にベンケイをつないだ。

「頼むぞベンケイ。見えない奴がいたら、噛みついてやれ」
「わん」

 待っている時は長く感じる。
 商品の打ち合わせをしていた時に、内線が呼び出し音を奏でる。
 この番号は守衛室だ。
 大急ぎで駆け付けると、ベンケイが空中に噛みついていた。
 噛みつかれても認識阻害を解かないのは恐れ入るが、がっちりベンケイに噛まれていてもろばれだ。

 俺はロープを出してぐるぐる巻きにしてやった。
 そして、あの痒くなる糊をぶっかける。

「かゆい」
「そうだろ認識阻害が解除されてるぞ」
「くそう」
「お前には裏切り者の社員の事を全部喋ってもらうぞ。その前にベンケイよくやった」

 俺はベンケイを撫でてほめた。
 男が知っていた裏切り者は三人いた。
 しかし、交友関係を洗うと、十人以上の関与が疑われた。
 そりうちの主犯格を呼び出した。

「とんでもない事をしてくれたな」
「私は山田家に助けてもらった恩があります」
「ああ、親父が指図したのか」
「違います」
「違う? じゃ誰だ。虎時とらとき じゃないだろう。あいつにそこまでの人望があるとは思えん」
「言えません」
「まあ、いいや。山田家の誰かなんだろう。お前たちは横領の容疑で警察に突き出してやる」
「好きにして下さい」

 こんな事もあるさ。
 元は山田ダンジョンカンパニーの社員だからな。
 そっちとの縁は切れないか。
 やりたくはないが。
 俺は自白ポーションを調合した。
 こいつを飲ませて面接か。
 嫌な会社だな。
 俺なら速攻で辞めてるところだ。

「新商品のモニターになってくれるか。青汁を飲んでくれ」
「はい」
「どうだ」
「美味しいですね。大ヒット間違いなしです」
「ちょっと世間話をしよう。山田家と特別な関係があるか」
「おおありです。社長には良くしてもらってます。臨時ボーナスもはずんで貰いましたし。もう一生ついていきます」

 おおありだなんて言うから黒だと思っちまった。
 念を押しておこう。

「山田ダンジョンカンパニーとの繋がりはないんだな」
「はい、仲の良かった社員はみんなこの会社に移ってます」
「ご苦労様。この部屋を出ると簡易ベットがある。ぐっすりと寝て、今聞いた事は忘れろ」
「はい」

 次の社員を呼ぶ。

「仕事して喉が渇いたろう。その青汁を飲みたまえ。新商品の社内テストなんだよ」
「では頂きます」
「どうだ美味しいか」
「不思議です。飲むほどに美味しく感じる」
「ちょっと世間話をしよう。山田家と特別な関係があるか」
「はい、光時みつときさんとは懇意にしてもらってます」
「兄貴とか。どんな事を言われた」
「会社の状況を教えろと言われました」
「教えたのか」
「ええ、儲かって事業拡大中だとか、目標は山田ダンジョンカンパニーの買収だとか」

 この社員は黒だな。
 何人、黒の社員が出る事やら。

「この部屋を出ると簡易ベットがある。ぐっすりと寝て、今聞いた事は忘れろ」
「はい」

 兄貴が黒幕だったとはな。
 だが、買収の話を聞けば親父も気が気じゃないだろう。
 これはスパイはみんな首だな。
 理由を聞かれたら、リストラだと言ってやろう。
 丁度、生産部門はどんどん委託している時期だからな。
 社員は今の人数ほどはいらない。
 儲かっている時ほどリストラだとビジネス書に書いてあったと吹聴して回るか。
 それだけだと何なんで、リストラする前に臨時ボーナスを出すとするか。

 社員にどう思われても問題ない。
 地球破滅回避のためだからな。
 破滅回避できた時に社員には真実を告げよう。
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