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第162話 火事場泥棒

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 呪いの一万円札は背後の組織に無事届いたようだ。
 呪いを追ってあるビルに辿り着いた。
 ここがアジトか。
 俺はおっさんの名前で、通報した。
 ビルから火の手が上がる。
 呪いの不運が影響したらしい。
 火事なら人命救助できる。

 扉を蹴破り、ファントムがアジトに突入。

「こんな時に出入りかよ。火を消せ。そしてこいつも消せ」

 呪いの一万円札は金庫だな。
 俺は金庫の扉を毟り取った。

「何をする?」

 ファントム退場。
 おっさんとして、アジトに入った。

【いきなり配信始まった】
【事務所か】
【煙が立ち込めているな】

 物を片っ端から、アイテム鞄に入れる。

【火事場泥棒か】
【犯罪行為を配信してどうするんだ】
【今度こそおっさんは刑務所か】

「お前」

 銃を向けられた。

「玩具は片付けて」

 俺は銃をもぎ取るとアイテム鞄に入れた。

【無造作に銃を取ったな】
【分かったサクラだよ】
【事務所カチコミ映像かな】
【火を点けてまでよくやる】

 そして呪いと火を消してやった。
 警察やら消防が到着する。

「ご苦労様です。火の手が見えたので、家財道具を運び出しました。こんなのもありましたけど」

 俺は銃を出すと警察官に渡した。

「全員動くな。銃刀法違反で、現行犯逮捕する」

【ファントムの動画みたけど、この事務所が映ってる】
【また手柄横取りかよ】
【ファントムに付けられた発信器を早く教えてやれ】
【ファントムの動画に発信器を付けられてるぞとコメント付けたけど、ありがとうとだけ返ってきた】
【どこに仕掛けられたか分かってないのか】
【魔力駆動だと、どのくらい小さくできるか分からないからな】

 ふー、良いことした。
 アジトにあった物でひとつ不可解な物があった。
 巨人を守る会の封筒だ。
 新品のそれがかなりあった。
 巨人を守る会に寄付したのかな。
 そんな奴らじゃないだろう。

 設立資金の件もあるからな。
 こういう組織からお金が出ているのかも。

 警察に念入りに調書を取られた。
 俺は犯人じゃない。

「さらわれそうになっちゃった」

 家に帰ると弥衣やえ綺羅々きららが来ててそんなことを言った。

「怪我は?」
「ないない。これでも冒険者よ」
「そうそう。愛剣が無くてもヤクザの10人ぐらい」

 ヤクザが10人か。
 ちょっと大事だな。
 今日、俺が事務所を潰したのと関係があるのかな。

「犯人はどうした」
「警察に突き出したわよ」

「何か犯人の背後とか分かった?」
「犯人の一人が巨人を守る会の封筒にお金を入れてたわね」

 ここでもその封筒が出て来るのか。
 今日の事務所潰しと関係ありとみた。
 こんな推理は誰だってできる。

「私達、明日から、パラサイトウルフの討伐を手伝うことにしたから」
「うん、討伐しないと体が鈍って」

「悪評が立つぞ」
「ファントムがパラサイトウルフの危険性を告知して少し風向きが変わったのよ」
「これは賭けね。こっちの正義が証明されるかどうかの。もう勝利確定ね」

 カメラのスイッチを入れて配信を開始する。

「明日から、パラサイトウルフの討伐に弥衣やえ綺羅々きららが加わることになった」

【討伐を中止するという考えはないのか】
【ラブリードッグはあんなに可愛いのに】
【そうです。彼らは友達です】

「俺は今日、人命救助に火事の現場に踏み込んだんだが。そこはどうやら犯罪組織らしかった。そこで巨人を守る会の封筒を多数見つけたんだが」

【封筒は会の名前が変わったので大量に廃棄しました。リサイクルショップに売ったと思います】
【おっさんは、変な理屈を持ち出したな】
【都合が悪くなると話を変える】

「設立資金の件もあるから、疑うのは当然だろう」

【ゲスの勘繰りだ】
【まさにそうだな】
【ラブリードッグをダンジョンで確保して、家に連れ帰ろうぜ】
【いいね。あそこのダンジョンなら危険はない】

「俺はな。パラサイトウルフの何が嫌いかというとあいつらは媚を売ってる。俺もクズだから分かるけど、クズなんだよ。だから気に入らない」

【そんな理由で討伐しているのか】
【ファントムとは月とスッポンだな】
【犬や猫だって媚を売ってる】

「いいや、違う。犬や猫は家族への愛情だ」

【違いが分からん】
【そんな理不尽な理由でですか】
【おっさんは狂ってるからな】
【そんな奴が金を持っているのか。世の中糞だな】
【フレンドリーモンスターを守る会に入って、世界を変えましょう】

「くくくっ、俺は止まらんよ。止めたければ法律を変えろ」

【あと少しです。署名の力で事態はかわるはず。みなさん頑張りましょう】

 いろいろと盛り上がってきたな。
 この調子だ。
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