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第137話 陣地

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 陣地を強襲と俺なら行くところだ。
 綺羅々きらら弥衣やえだと厳しいかもな。
 たぶん襲撃を掛けると、巨人がわんさか集まってくるはず。
 頭悪い俺でもそう思うのだから、弥衣やえ達が考えてないはずがない。

【むっ、これは難敵かもな】
【いまこそおっさんの力を見せる時だ】

 弥衣やえ達は話合ってる。
 俺は弥衣やえに指示されて、自走カートをありったけ出した。
 グラトニーマテリアルに魔力を込める。
 ああ、自走カートを囮に使うのね。

【ドローン戦術みたいだな】
【グラトニーマテリアルは爆弾より凶悪かも知れない】
【触れたらアウトだからな】

 囮は正しい選択か。
 だが、攪乱してどうする。
 大将首を取るのかな。

 そんなに上手いこといくわけないと思うけど。
 俺は出撃していく自走カートを見送った。
 モチが全身を泥だらけにして、陣地に侵入していく。
 モチは大丈夫か。

【モチ、出陣】
【猫の隠密性は馬鹿に出来ない】
【殺し屋かな】
【猫はハンター】

 そして陣から火の手が上がった。

【おう、燃えてるぜ】
【巨人を討伐しないで。彼らは良き存在なのです】
【なにを言ってもおっさんは止まらない】
【裁判で討伐を中止するように訴えました】
【どんな法律だ】
【障害罪、動物愛護法、器物損壊などです】
【警察は動かんだろう】
【動物愛護って、巨人が動物だと認めるのか】
【討伐を止めるためにやむを得ず行いました】

「好きに訴えると良い。俺は逃げない」

 ここからだ。
 さて、弥衣やえ達はどうする。
 攪乱は十分だ。

「各個撃破よ」
「ええ、削りまくりましょ」

 駄目だな。
 それじゃ囲まれて上手くない。

 俺はカメラを外して弥衣やえに持たせた。
 ミスリルの仮面を被る。
 少し離れて、全速力で戻ってきた。

「ファントムがなぜ?」

 綺羅々きららが疑問に思ってる。

「美しいお嬢様方、手助けに来ました」

 そう言うと俺はバールを握り締めて陣地に飛び込んだ。
 目につく巨人を手あたり次第ぶちのめす。
 混乱しているから少し楽だった。
 ほどなくして立っている巨人の姿はなくなった。

「ありがと。あなたはあのチアフルの平治なの」

 討伐が終わり、休んでいたところ、綺羅々きららが俺に問い掛けた。
 この問いになんて答えようか。
 最初の予定ではチアフルの平治がファントムだった。
 だけど、それだとファントムとして初めて会った時の会話が違う。
 よう久しぶりって言わなきゃならない。
 こうなったら。

「平治を名乗る人間は何人もいる。全てスタンピードを操る影の組織を壊滅させるために動いてる」
「そうなの。チアフルの平治に会ったら、あの時はありがとうと伝えておいて」
「ああ、承った」

【おっさんどこ行った】
【あれおっさんがいたぞ。後ろで、頭抱えて震えている】
【ほんとだ】
【ファントムと雲泥の差だな】
【ファントムは正義の使者だと思っていたのに。見損ないました】
【冒険者だからな。巨人の討伐に関しては賛成派だぞ】
【あんなに一方的に虐殺しなくても】

「よし、巨人をぶちのめしたぞ」

【おっさんが復活した】
【おっさんの中ではぶちのめしたことになってるのか】
【言うなよ】

「自走カートが何人もの巨人を討ち取った。あれは俺の力だ。魔力を込めたのはおれだからな」

【おお、そう言えばしてたな】
【自走カートは凶悪だったな。即死武器を振り回す子供と変わらん】
【子供じゃないだろ、猿ぐらいかな】
【おっさんは猿回しか】
【猿回しは大変なんだぞ】

「俺の力が分かったようだな」

【ここまでくると面白くなってきた】
【この先、おっさんはどうなるかな。危なくなったら、死んだりするのかな】
【後ろで震えていれば死なないだろ。逃げ足は速そうだ】
【うんうん、ファントムが来る前に一瞬で姿が見えなくなった】

 陣を抜けると森だった。
 そこの木々はひたすら巨大。
 巨人のサイズに合っていると言える。
 敵の巨人をちらっとみたが、斧を持ってた。
 投げたりするのかな。
 となると遠近両方使うのだろうな。
 まあ、弥衣やえ達が何か考えるさ。
 ダンジョンを出ると、陣を強襲してる映像が、巨人を守る会によって流されてた。

「この暴挙、原住民を襲う侵略者そのものです」
「彼らは敵ながら戦士だった。逃げ出した奴は一人もいない。実に勇敢だ」

 俺は上げて落とす作戦に出た。

「戦士だと認めるのに虐殺するのですか」
「考えたら分かるだろ。逃げないのがおかしいんだよ。そこに残虐性が見て取れる。狂暴性と言っても良い」
「屁理屈です」
「だが、そうだろ。逃げなかったのは事実だ」

 我ながら上手く理屈をこねた。
 この調子で巨人の悪評をばら撒きたい。
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