上 下
84 / 179

第84話 ノアフォロ炎上

しおりを挟む
 トカゲの楽園の2階層。
 出てきたトカゲは、尻尾の先にトゲがいくつも付いている。

【メイスリザードだな。強敵なのだが、おっさんには敵わないのだろうな】
【どうするのかお手並み拝見】

 そんなの食いたいからキャメルクラッチだろ。
 背中に飛び乗り首に腕を回す。
 背中にバンバン尻尾が当たる。
 ボキっとへし折ってやった。

「ちょっと、平気なの?」

 弥衣やえの心配そうな声。
 ちょっと背中がスース―するな。

【おっさん、背中、背中】
【背中がどうした?】
【つヤエチャンネル】
【ああ、服がボロボロだ】

 背中を触ると確かにボロボロだ。

「細かいことは気にしない」

【背筋凄いな】
【この筋肉が一撃必殺を生み出すのか】
【こんなのにキャメルクラッチされたら、首が折れる】

「バンバン行くぞ」

 背中は叩かれるが、順調に討伐は進んだ。
 ボスは尻尾の先が四角だ。

【ハンマーリザードだ】
【まあ、Cランク行くか行かないかって、ところだろ】
【おっさんでは強敵ではない】

 毎度おなじみの背中に乗って、キャメルクラッチ。
 背中がバンバン叩かれるが。

「マッサージにちょうどいい。そこそこ、ちょっと上」

【肩たたき機になってワラタ】
【頭に気を付けろ】

 ゴインと後頭部に食らった。

「頭のマッサージも心地いい」

【ボスが可哀想に見える】
【キャメルクラッチ食らって泡拭いて、必死に尻尾を叩きつけるが、マッサージにしかならない】
【もうボスのHPはゼロよ。止めを刺してやりなよ】

「ボキっとな」

 ボスが死んだ。
 いやー、爽快。
 マッサージ受けて得した気分。

 ポータルの登録して、服を着替える。
 そしてダンジョンから出た。

「この誘拐野郎。佐代子さよこを返せ」

 胸倉をつかまれた。
 こいつ誰。

【ここは振り払っても良いと思う】
【だな】
【やさしくな。そっとだぞ】

 俺は手を払いのけた。
 男は吹っ飛び、バウンドし、何回か転がって止まった。

【あーあ】
【やっちまったか】

「みなさん見ましたか。暴行の現行犯です。たったいま犯罪が行われました」

 そう言いながら、マイクを持った男が現れた。
 背後にはテレビカメラを担いだ男。

【こういう仕掛けか】
【過剰防衛だな】
【謝ることはない】
【どう考えても相手は喧嘩売ってた】

「一連の出来事は録画してある。文句があれば訴えるといい」
「ノアフォロという宗教団体に誘拐された人が多数いるみたいなんですが、どう思いますか?」

 レポーターが矛先を変える。

「誘拐なんのことだ?」
「ノアフォロに入信して家族からの説得に応じない。これが誘拐でなくて何だと思います?」

「俺は引き止めたりしてないぞ。抜けたければ、いつでも抜けていい」

【宗教団体持ってたのね】
【寄生スキルによる治療。病人がすがる最後の希望だ】
【抜けろと言っている家族はなんなん】
【たぶん、早く死んで欲しいんだよな】
【遺産目当てかよ。それは酷い】

「後の話は弁護士にどうぞ」

 弥衣やえがそう言って連絡先を渡す。
 苦虫を噛み潰したようなレポーター。

 家に帰り、昼飯を食ってくつろいで、少しウトウト。
 ハッと気が付くと午後3時だった。

 テレビを点けると、宗教団体ノアフォロに密着とテロップが出た。

「たかし、そんな所で働かないで! 病気が悪化するわ! 寝てなきゃ!」

 お婆さんが、中年の男性に話し掛けている。

「……」

 中年の男性は応えない。

「いまのVTRを見てどう思います」
「洗脳されてますね。宗教団体にありがちなことです。自分が入っている宗教を否定する人は敵だと教えられます」

 えー、なんでそういう解釈になる。
 おかしいだろ。

「彼らがどういう活動をしているか撮ったVTRがあります。どうぞ」

 ダンジョンの中の討伐や採取の仕事の様子が映し出された。

「簡単にやっているようですが、モンスター相手の仕事です。これはブラック企業より酷い。こういう苦行を積むと長生きできると洗脳されているようです。信者の中にはノアフォロに遺産を譲ると遺言を書いた人もいます。次のVTRどうぞ」

 道路の清掃の様子が映し出された。

「これはこの教団のはっきり言えば外面の顔です。奉仕活動で善人ぶっているようです」

 そして、俺の暴行とインタビュー映像。
 何がしたいんだよ。
 数字さえ取れればオッケーなのか。

 SNSを見ると炎上してた。
 ノアフォロのSNSもだ。
 全くマスコミは碌なことをしないな。
 もっともさっき言ったことに当てはまる宗教団体もある。
 そこと違うんだよといくら言っても駄目なんだろうな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ダンジョン菌にまみれた、様々なクエストが提示されるこの現実世界で、【クエスト簡略化】スキルを手にした俺は最強のスレイヤーを目指す

名無し
ファンタジー
 ダンジョン菌が人間や物をダンジョン化させてしまう世界。ワクチンを打てば誰もがスレイヤーになる権利を与えられ、強化用のクエストを受けられるようになる。  しかし、ワクチン接種で稀に発生する、最初から能力の高いエリート種でなければクエストの攻略は難しく、一般人の佐嶋康介はスレイヤーになることを諦めていたが、仕事の帰りにコンビニエンスストアに立ち寄ったことで運命が変わることになる。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

最強のコミュ障探索者、Sランクモンスターから美少女配信者を助けてバズりたおす~でも人前で喋るとか無理なのでコラボ配信は断固お断りします!~

尾藤みそぎ
ファンタジー
陰キャのコミュ障女子高生、灰戸亜紀は人見知りが過ぎるあまりソロでのダンジョン探索をライフワークにしている変わり者。そんな彼女は、ダンジョンの出現に呼応して「プライムアビリティ」に覚醒した希少な特級探索者の1人でもあった。 ある日、亜紀はダンジョンの中層に突如現れたSランクモンスターのサラマンドラに襲われている探索者と遭遇する。 亜紀は人助けと思って、サラマンドラを一撃で撃破し探索者を救出。 ところが、襲われていたのは探索者兼インフルエンサーとして知られる水無瀬しずくで。しかも、救出の様子はすべて生配信されてしまっていた!? そして配信された動画がバズりまくる中、偶然にも同じ学校の生徒だった水無瀬しずくがお礼に現れたことで、亜紀は瞬く間に身バレしてしまう。 さらには、ダンジョン管理局に目をつけられて依頼が舞い込んだり、水無瀬しずくからコラボ配信を持ちかけられたり。 コミュ障を極めてひっそりと生活していた亜紀の日常はガラリと様相を変えて行く! はたして表舞台に立たされてしまった亜紀は安らぎのぼっちライフを守り抜くことができるのか!?

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

辻ダンジョン掃除が趣味の底辺社畜、迷惑配信者が汚したダンジョンを掃除していたらうっかり美少女アイドルの配信に映り込み神バズりしてしまう

なっくる
ファンタジー
ダンジョン攻略配信が定着した日本、迷惑配信者が世間を騒がせていた。主人公タクミはダンジョン配信視聴とダンジョン掃除が趣味の社畜。 だが美少女アイドルダンジョン配信者の生配信に映り込んだことで、彼の運命は大きく変わる。実はレアだったお掃除スキルと人間性をダンジョン庁に評価され、美少女アイドルと共にダンジョンのイメージキャラクターに抜擢される。自身を慕ってくれる美少女JKとの楽しい毎日。そして超進化したお掃除スキルで迷惑配信者を懲らしめたことで、彼女と共にダンジョン界屈指の人気者になっていく。 バラ色人生を送るタクミだが……迷惑配信者の背後に潜む陰謀がタクミたちに襲い掛かるのだった。 ※他サイトでも掲載しています

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

処理中です...