5 / 179
第5話 要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せ
しおりを挟む今日もヤエちゃんが放課後になって、うちに遊びに来ている。
もう卒業なので授業はほとんどないと言ってたな。
おっ、スマホに着信だ。
スマホを見ると俺の方ではなかった。
ヤエちゃんが誰かと話し出す。
「スグルさん、要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せと言って下さい」
そう言ってスマホを差し出された。
「要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せ」
言われた通りに言ってみた。
『いいわよ』
相手の声は笠幡さんだった。
「なんて言った?」
「良いってさ」
「代わって」
スマホを渡すとヤエちゃんは笑った。
「今のはスグルさんの冗談です」
冗談を言うほど仲良くなったんだな。
ヤエちゃんは友達がいると言っていたけどここに来る日が多い。
友達ができておじさん一安心だ。
「ではそういうことで」
ヤエちゃんが通話を切った。
「あの女狐。やっぱりスグルさん目当てだったのね」
「どういうこと?」
「何でもないわ。1億円の仕事が入ったわよ」
「へっ、1億ぅ」
俺は絶句した。
1億ペソじゃないよね。
1億ペソでも大金だけど。
気を落ち着けるためにスマホで配信チャンネルをチェックすると、登録者が急増。
氏ねのコメントで溢れかえった。
何が起こっている。
1億も気になるけど、炎上の件の方が気に掛かる。
「配信のチャンネルが偉い事になっている」
「ヤエ先生が原因を突き止めてあげましょう。ええと、原因はさっきの一言みたいね」
「一言っていうと?」
「体を差し出せっていうやつ。さっきの通話をドラスレチャンネルで配信してる」
「えっ、何でそんなことするの?」
「冗談の仕返しかな」
えー、悪かったと思っているけどこれはあんまりだ。
「そうだ。1億の仕事って?」
「ダンジョンに一緒に潜って欲しいみたい。期間は1ヶ月と言ってきたわ」
「それなら美味しい仕事だけど。うちの庭のダンジョンでも良いんだよね?」
「場所は任せるって。言っておくけど私も一緒に行くから」
「ダンジョンは危険なんだぞ」
「言われたことは守るから」
「うちのダンジョンなら良いか。俺も怪我らしい怪我はしなかったし」
30分後、笠幡さんが来た。
「じゃあ、お試しで軽く潜ってみようか」
「まだ心の準備が」
笠幡さんがためらっている。
慎重だな。
「私は何時でもオッケー」
「Fランクダンジョンだから、笠幡さんなら鼻ほじしながらでも平気でしょう」
「それなら」
3人でダンジョンに潜った。
「ええとあそこにいるのが最初のザコ敵のスライム」
「あれっ、普通のスライムと違う」
驚いた様子の笠幡さん。
「ただのスライムね。ビビってるから強敵に見える」
違うのか。
図鑑でみたけど変わりはなかったけどな。
「特徴を言ってみて」
「一当てすると逃げる。追い詰めると凶悪な酸を吐く」
「その酸はどれぐらい?」
「ダンジョンが溶けるぐらい」
「嘘っ、信じられないわ。不壊って言われているダンジョンが。それってSランク相当モンスターじゃない」
「動画みたけど、別に強そうじゃなかったよ。おばさんは心配性ね」
「誰がおばさんよ。歳だってあなたとそんなに変わりない」
「20代後半とみた、私は10代後半よ。一回りほど違うじゃない」
「ふたりとも喧嘩はなしだ。倒し方は簡単なんだよ。一当てすると逃げるので、逃げられたら追わない。追い詰めると強いからね。でも笠幡さんなら余裕かも」
「とりあえずやってみましょう。獄炎」
1メートルほどの炎の玉が出てスライムに向かって行く。
炎の玉はスライムに当たり、スライムは逃げ出した。
「一番強い魔法撃ったのに。無傷なんて」
「俺が手本を見せる」
そう言ってスライムに近づいた。
スライムを滅多打ちにする。
「嘘っ、配信映像だと30回ぐらいしか攻撃してないように見えるけど、100回以上は殴ってる」
「こうやって脳みそを揺らすと、ふらふらになって逃げるのも反撃も出来なくなる。そして、ジエンドだ」
スライムが体液を流して死んだ。
粉々になった魔石と核。
「やっぱりよ。欠片から推測するに、この魔石の大きさはSランクだわ」
このスライムがSランク。
何を言っているんだ。
酸は強力だけど、弱いじゃないか。
「連打は女の子には難しいかな。フォローするからとりあえず殴ってみて」
笠幡さんからやるようだ。
予備の鉄パイプを握るとスライムめがけ振り下ろした。
俺は逃げて行く通路を予想して、待ち構え連打。
スライムを殺した。
「一撃いれるだけなら簡単ね。ちょっと待って」
笠幡さんは何か魔道具を取り出した。
「嘘っ、レベルが上がっている。一撃入れて逃げられたのに上がるなんて、ちょっとあなたのレベル計らせてもらって良い?」
「構わないけど」
「嘘っ、レベル10834だって、きっと魔道具の故障よ。私だって38しかないのに」
「スグルは凄いのよ。私は分かってた」
「はいはい、レベルなんて飾りだよ。その証拠にトカゲには今だ苦戦する。じゃあヤエちゃんやってみて」
「てやっ」
俺は逃げたスライムを滅多打ちにした。
笠幡さんがヤエちゃんのレベルを計っている。
「1から7に上がっている。あんな一撃で。もう驚くのは辞めた。誰もこのダンジョンの凄さを信じないでしょうね」
「凄いのか? Fランクダンジョンだぞ」
「協会に登録する時にどう説明したの?」
「私も過去の話を知りたい」
じゃあ、話すとしますか。
535
お気に入りに追加
723
あなたにおすすめの小説
レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。
おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。
ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。
落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。
機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。
覚悟を決めてボスに挑む無二。
通販能力でからくも勝利する。
そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。
アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。
霧のモンスターには掃除機が大活躍。
異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。
カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
劣等生のハイランカー
双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す!
無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。
カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。
唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。
学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。
クラスメイトは全員ライバル!
卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである!
そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。
それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。
難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。
かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。
「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」
学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。
「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」
時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。
制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。
そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。
(各20話編成)
1章:ダンジョン学園【完結】
2章:ダンジョンチルドレン【完結】
3章:大罪の権能【完結】
4章:暴食の力【完結】
5章:暗躍する嫉妬【完結】
6章:奇妙な共闘【完結】
7章:最弱種族の下剋上【完結】
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
借金背負ったので死ぬ気でダンジョン行ったら人生変わった件 やけくそで潜った最凶の迷宮で瀕死の国民的美少女を救ってみた
羽黒 楓
ファンタジー
旧題:借金背負ったので兄妹で死のうと生還不可能の最難関ダンジョンに二人で潜ったら瀕死の人気美少女配信者を助けちゃったので連れて帰るしかない件
借金一億二千万円! もう駄目だ! 二人で心中しようと配信しながらSSS級ダンジョンに潜った俺たち兄妹。そしたらその下層階で国民的人気配信者の女の子が遭難していた! 助けてあげたらどんどんとスパチャが入ってくるじゃん! ってかもはや社会現象じゃん! 俺のスキルは【マネーインジェクション】! 預金残高を消費してパワーにし、それを自分や他人に注射してパワーアップさせる能力。ほらお前ら、この子を助けたければどんどんスパチャしまくれ! その金でパワーを女の子たちに注入注入! これだけ金あれば借金返せそう、もうこうなりゃ絶対に生還するぞ! 最難関ダンジョンだけど、絶対に生きて脱出するぞ! どんな手を使ってでも!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる