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第5話 要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せ

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 今日もヤエちゃんが放課後になって、うちに遊びに来ている。
 もう卒業なので授業はほとんどないと言ってたな。

 おっ、スマホに着信だ。
 スマホを見ると俺の方ではなかった。
 ヤエちゃんが誰かと話し出す。

「スグルさん、要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せと言って下さい」

 そう言ってスマホを差し出された。

「要求を受け入れて欲しければ、体を差し出せ」

 言われた通りに言ってみた。

『いいわよ』

 相手の声は笠幡かさはたさんだった。

「なんて言った?」
「良いってさ」
「代わって」

 スマホを渡すとヤエちゃんは笑った。

「今のはスグルさんの冗談です」

 冗談を言うほど仲良くなったんだな。
 ヤエちゃんは友達がいると言っていたけどここに来る日が多い。
 友達ができておじさん一安心だ。

「ではそういうことで」

 ヤエちゃんが通話を切った。

「あの女狐。やっぱりスグルさん目当てだったのね」
「どういうこと?」
「何でもないわ。1億円の仕事が入ったわよ」
「へっ、1億ぅ」

 俺は絶句した。
 1億ペソじゃないよね。
 1億ペソでも大金だけど。

 気を落ち着けるためにスマホで配信チャンネルをチェックすると、登録者が急増。
 氏ねのコメントで溢れかえった。
 何が起こっている。
 1億も気になるけど、炎上の件の方が気に掛かる。

「配信のチャンネルが偉い事になっている」
「ヤエ先生が原因を突き止めてあげましょう。ええと、原因はさっきの一言みたいね」
「一言っていうと?」
「体を差し出せっていうやつ。さっきの通話をドラスレチャンネルで配信してる」
「えっ、何でそんなことするの?」
「冗談の仕返しかな」

 えー、悪かったと思っているけどこれはあんまりだ。

「そうだ。1億の仕事って?」
「ダンジョンに一緒に潜って欲しいみたい。期間は1ヶ月と言ってきたわ」
「それなら美味しい仕事だけど。うちの庭のダンジョンでも良いんだよね?」
「場所は任せるって。言っておくけど私も一緒に行くから」
「ダンジョンは危険なんだぞ」
「言われたことは守るから」
「うちのダンジョンなら良いか。俺も怪我らしい怪我はしなかったし」

 30分後、笠幡かさはたさんが来た。

「じゃあ、お試しで軽く潜ってみようか」
「まだ心の準備が」

 笠幡かさはたさんがためらっている。
 慎重だな。

「私は何時でもオッケー」
「Fランクダンジョンだから、笠幡かさはたさんなら鼻ほじしながらでも平気でしょう」
「それなら」


 3人でダンジョンに潜った。

「ええとあそこにいるのが最初のザコ敵のスライム」
「あれっ、普通のスライムと違う」

 驚いた様子の笠幡かさはたさん。

「ただのスライムね。ビビってるから強敵に見える」

 違うのか。
 図鑑でみたけど変わりはなかったけどな。

「特徴を言ってみて」
「一当てすると逃げる。追い詰めると凶悪な酸を吐く」
「その酸はどれぐらい?」
「ダンジョンが溶けるぐらい」
「嘘っ、信じられないわ。不壊って言われているダンジョンが。それってSランク相当モンスターじゃない」
「動画みたけど、別に強そうじゃなかったよ。おばさんは心配性ね」
「誰がおばさんよ。歳だってあなたとそんなに変わりない」
「20代後半とみた、私は10代後半よ。一回りほど違うじゃない」

「ふたりとも喧嘩はなしだ。倒し方は簡単なんだよ。一当てすると逃げるので、逃げられたら追わない。追い詰めると強いからね。でも笠幡かさはたさんなら余裕かも」
「とりあえずやってみましょう。獄炎」

 1メートルほどの炎の玉が出てスライムに向かって行く。
 炎の玉はスライムに当たり、スライムは逃げ出した。

「一番強い魔法撃ったのに。無傷なんて」
「俺が手本を見せる」

 そう言ってスライムに近づいた。
 スライムを滅多打ちにする。

「嘘っ、配信映像だと30回ぐらいしか攻撃してないように見えるけど、100回以上は殴ってる」
「こうやって脳みそを揺らすと、ふらふらになって逃げるのも反撃も出来なくなる。そして、ジエンドだ」

 スライムが体液を流して死んだ。
 粉々になった魔石と核。

「やっぱりよ。欠片から推測するに、この魔石の大きさはSランクだわ」

 このスライムがSランク。
 何を言っているんだ。
 酸は強力だけど、弱いじゃないか。

「連打は女の子には難しいかな。フォローするからとりあえず殴ってみて」

 笠幡かさはたさんからやるようだ。
 予備の鉄パイプを握るとスライムめがけ振り下ろした。
 俺は逃げて行く通路を予想して、待ち構え連打。
 スライムを殺した。

「一撃いれるだけなら簡単ね。ちょっと待って」

 笠幡かさはたさんは何か魔道具を取り出した。

「嘘っ、レベルが上がっている。一撃入れて逃げられたのに上がるなんて、ちょっとあなたのレベル計らせてもらって良い?」
「構わないけど」
「嘘っ、レベル10834だって、きっと魔道具の故障よ。私だって38しかないのに」

「スグルは凄いのよ。私は分かってた」

「はいはい、レベルなんて飾りだよ。その証拠にトカゲには今だ苦戦する。じゃあヤエちゃんやってみて」
「てやっ」

 俺は逃げたスライムを滅多打ちにした。
 笠幡かさはたさんがヤエちゃんのレベルを計っている。

「1から7に上がっている。あんな一撃で。もう驚くのは辞めた。誰もこのダンジョンの凄さを信じないでしょうね」

「凄いのか? Fランクダンジョンだぞ」
「協会に登録する時にどう説明したの?」
「私も過去の話を知りたい」

 じゃあ、話すとしますか。
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