上 下
10 / 80
第1章 クラン加入編

第10話 初依頼達成

しおりを挟む
 木漏れ日が見える。
 実に長閑なもんだ。
 木にいくつもの爪痕がなければな。
 近いな。
 木の葉を踏む音がする。

「マリー、来たぞ。絶対前に出るなよ」
「うん」

 現在、6歳の俺ことディザとマリーは森で熊さんと出会った。
 出会ったもなにもこのジェノサイドベアは俺達の初めての獲物なんですけどね。
 ジェノサイドベアは4メートルほどの熊で、たぶん前世でこれに出会ったら腰を抜かしてちびっちまう。
 そういう自信がある。

 ポリゴンで出来たライフルを構えるマリー。
 俺の武器はライオンだ。

「【ショップ】。ライオンの3Dモデルとアニメーションをゲット」

 手に持っている金貨と銀貨が溶けるように消えた。
 ショップスキルは3Dモデルとアニメーションを買える。
 とうぜんリアルなのは高い。

「【モデリング】」

 さっき買ったライオンの3Dモデルを呼び出して3倍に拡大した。
 このぐらいは慣れれば簡単だ。


「【具現化】。よし、行け。エンペラー1号」

 ライオンの3Dモデルが実体化して目の前に現れる。

「【アニメーション】走り」

 走るアニメーション実行だ。
 位置を変えてワープさせても良かったのだが、やっぱり走らせたいじゃない。
 象ほどもあるライオンが森を駆ける。

「【アニメーション】飛び掛かり」

 ここで飛び掛かりアニメーションに切り替えてと。
 ライオンは飛び掛かり、ジェノサイドベアと組み合った形になった。

「マリー、今だ撃て」

 マリーがポリゴンのライフルを構え撃つ。

 弾はジェノサイドベアの足に当たったようだ。
 足から血しぶきが上がる。
 ジェノサイドベアが吠えた。

 俺は手榴弾を投げた。
 焦っていたのか手榴弾はあさっての方向に。
 樹にダメージを与えただけだった。

 そして、ジェノサイドベアが反撃に移る。
 ライオンにかみつき振り回す。
 光となって消えていくライオン。

「ふふふ、もうモデルは出来ている。【具現化】。よし、行け。エンペラー2号【アニメーション】走り」

 ジェノサイドベアは四つん這いになってこちらへ突進の構えを見せる。
 だが、足を引きずって歩き難そうだ。

「【アニメーション】飛び掛かり」

 ライオンを走らせ飛び掛からせる。
 頭と頭がぶつかり鈍い音を立てた。
 光になって消えて行くライオン。

 マリーが隙を悟って、弾の位置をリセットして発射する。
 体に何度か着弾。
 そして、最後は頭に当たり、ジェノサイドベアは倒れた。

「うーん、ライオンはちょっと弱いな。1000ポリゴンじゃこんなものか」

 俺の能力のポリゴンは制約が幾つか存在する。
 まず、ポリゴン数が現在、一日に1万までしか使えない。
 ただし日を跨ぐと復活する為、前の日に出しておけば問題は解消される。

 そして、出した3Dモデルの性能は本物に近いかどうかで決まる。
 一般的にはポリゴン数が増えると性能は増す。
 だが、モデリングの腕が良ければこの限りではない。
 俺は美術成績1の男。
 とうぜんそんな3Dモデルは作れない。

「わたしには何もないの」
「弾を当てて偉いぞ、マリー」

 マリーの頭をなでてやる。

「えへへ」

 マリーははにかんだ
 緩んだ目と口がネコ科の動物を思わせる。
 しかし、精神的にタフだよな。
 実戦にも怯まない。
 異世界の子供ってのは皆こんななのかな。

 さあ帰り支度だ。

「【ショップ】。ユンボの3Dモデルとアニメーションをゲットして、【具現化】【アニメーション】すくい取り」

 すくい取りアニメーションを実行。
 ジェノサイドベアの死骸をバケットですくい取った。
 もしかしてライオンよりユンボの方が強いんじゃ。
 いや、ネコ科はロマンだ。

 今回の反省点は、銃最強って事だな。
 弾丸のポリゴン数を改造して3千ぐらいに増やしたから、強度はばっちりだ。
 この増やす作業はとっても簡単だ。
 ポリゴンを分割して滑らかにするとすればいい。
 分割するのを1枚1枚やらなくていい。
 便利なものだ。

 ポリゴン数はかなり使ったが、銃が強力なのは間違いない。
 ライオンは弱い。
 見栄を張って雄ライオンでなく雌ライオンにしとけば、もう少し強かったのかも。
 ポリゴンを分割して性能を良くすればもう少しましになるだろう。

 それと、口の中に炎のオブジェクトを仕込んで火炎放射してみようかな。
 熱くないけど恰好良いだろう。
 意表は突けるはずだ。

 爪を伸ばすモーフィングアニメーションを作って薙ぎ払いなんてのも面白い。
 宿に帰ってから、魔改造してやろう。

「さあ、マリー乗って」

 ユンボの操縦席に駆けあがった俺は声を掛けた。

「うんしょ、えいっ」
「シートベルトはないから落ちないようにな」
「うん」

「【アニメーション】走行」

 ユンボの操縦席にマリーと乗り、街に凱旋する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

鬼畜なエロゲ世界にモブ転生!?このままだと鬱ENDらしいので、ヒロイン全員寝取ってハピエン目指します!

ぽんぽこ@書籍発売中!!
ファンタジー
「助けて、このままじゃヒロインに殺される……!!」 気が付いたら俺はエロゲーム世界のモブキャラになっていた。 しかしこのエロゲー、ただヒロインを攻略してエッチなことを楽しむヌルいゲームではない。 主人公の死=世界の崩壊を迎える『ハイスクール・クライシス』というクソゲーだったのだ。 ついでに俺がなっちまったのは、どのルートを選んでも暗殺者であるヒロインたちに殺されるモブキャラクター。このままではゲームオーバーを迎えるのは確定事項。 「俺は諦めねぇぞ……トワりんとのハッピーエンドを見付けるまでは……!!」 モブヒロインの家庭科教師に恋した俺は、彼女との幸せな結末を迎えるルートを探すため、エロゲー特有のアイテムを片手に理不尽な『ハイクラ』世界の攻略をすることにした。 だが、最初のイベントで本来のエロゲー主人公がとんでもないことに……!? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

万能知識チートの軍師は無血連勝してきましたが無能として解任されました

フルーツパフェ
ファンタジー
 全世界で唯一無二の覇権国家を目指すべく、極端な軍備増強を進める帝国。  その辺境第十四区士官学校に一人の少年、レムダ=ゲオルグが通うこととなった。  血塗られた一族の異名を持つゲオルグ家の末息子でありながら、武勇や魔法では頭角を現さず、代わりに軍事とは直接関係のない多種多様な産業や学問に関心を持ち、辣腕ぶりを発揮する。  その背景にはかつて、厳しい環境下での善戦を強いられた前世での体験があった。  群雄割拠の戦乱において、無能と評判のレムダは一見軍事に関係ない万能の知識と奇想天外の戦略を武器に活躍する。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...