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第27章 七不思議のドラゴン
第156話 歌う蛇口
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「ホムンさん、久しぶり。ミニアならまだ来てないわ」
建国クラブの部室でセラリーナが迎えてくれた。
「別にミニアに用があった訳じゃない。たまにはこちらにも顔を出さないといけないと思ってな」
「建国クラブもやる事がなくってメンバーの出席率はみんな似たり寄ったりです」
「そうか。面白い事でもないかと思ってな」
「それなら、知ってます? 学園の七不思議」
「いや、知らんな」
「行ってみますか。実は行きたかったんだけど、不気味な物が多くて。一人では心細くて」
「そうだな、巡ってみるか」
セラリーナに案内されたのは、誰もいない教室だった。
「どういう七不思議なんだ」
「誰もいないはずの教室で歌が聞こえてくるそうです」
「らららら♪ ららーら♪」
「あんな具合にか」
「きゃ」
セラリーナに抱き着かれたがムラムラはしない。
本体はドラゴンで、この体はゴーレムだからな。
「これはタルコットの店で売っている録音の魔道具を使ったいたずらじゃないのか」
「魔道具の仕業なの」
「音はあっちから聞こえるな」
俺は音がしている場所を探した。
そこはなんと実験に使う水を出す蛇口からだった。
水に音が伝わって聞こえたのか。
不思議でもなんでもないな。
魔道具でもなかったのか。
がっくりだ。
「水の配管を辿れば音の発生源が分かる」
俺達は水の配管を辿り、屋上のタンクの所に辿り着いた。
「ここだな」
「誰もいないわ」
水の補給は人が担いで運ぶ形式らしい。
学園とは思えない非効率な方法だな。
屋上のタンクから落差を利用して教室に水が届くらしい。
水を補給する係の人間が歌を歌いながら行ったというのが真相かな。
俺達はダッセンを訪ねた。
「屋上のタンクの水を補給する係はだれだ」
「また、変な事を聞くな」
「七不思議の謎が解けるの」
「いいだろう。教えてやるよ」
ダッセンに教わって係の人間に会いに行った。
「水を屋上に運んでいるのだって」
「へい、そうですが。なにか」
教えられた係の人間はむさい男で、あの歌声の主とは違う。
声は若い女だったと思う。
「屋上で歌声を聞かなかったか」
「知らないよ」
「そうか、俺は学園の理事とも親しい」
「脅すのか」
「真実を言ったまでだ。何か知っているだろ」
「秘密にしてくれるか。実は副業で歌手をしている」
「声は女だった」
「女の子は口ぱくするだけで、俺は舞台裏で魔法を使って歌うんだ」
「やってみてくれるか」
「いくぜ。ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・トセイチノゆふらららら♪ららーら♪ふよレ・む」
歌声が響き渡った。
さっそく魔法をイメージに翻訳してみる。
void main(void)
{
speak("らららら♪ららーら♪"); /*音声を流す*/
}
実に簡単な魔法だ。
なるほど呪文では『ふ』に囲まれた文言を変えれば歌詞が変えられるという訳だ。
言葉を喋らせる魔法語『トセイチノ』は前にも使った。
新しい発見はないが見事なもんだ。
よく、若い女の声をイメージできるものだ。
「女の子に口ぱくさせて、舞台裏で魔法を使って歌う。なかなか良い商売だな」
「これでも魔法の制御が難しいんだぜ。歌詞は呪文で指定できるが、音程とか抑揚とかイメージに左右される」
「そうだな。俺にはできそうにない。この呪文の魔道具を作ったら困るか」
「いいや、俺みたいな歌手が増えたら嬉しいよ」
「魔道具の売り上げの何割かは渡そう。面白かったよ」
魔道具にする呪文のイメージはこうだ。
void main(int argc,char *argv[]) /*入力付き冒頭*/
{
speak(argv[1]); /*入力を音声として流す*/
}
この呪文イメージは前にゴーレム用に作ったのと同じだ。
こんな単純な魔道具が欲しい人間がいるとは。
前世でもボーカロイドが流行った事もあったな。
あれと同じか。
この魔道具は案外と流行るかもな。
「七不思議も分かれば怖くないだろう」
「驚いたわ。あんなおじさんが歌っているなんて」
「そうだな。見た目で判断するとひどい目に会う事もある」
俺は魔道具の契約書を持って男が歌っている所に行った。
そこにいたのはルルシャ一族の娘で、男は衝立の裏で魔法を使い歌っていた。
ルルシャの一族には前に録音再生の魔道具を渡した事がある。
俺が口ぱくで歌うのを教えたんだった。
結局、アイデアの出元は俺か。
歌えない歌手と魔法で歌う男がどうやって出会ったのかは分からないが、必然だったのだろうな。
たぶん男は色々あったのだろう。
想像だが、男が若い女の声で歌うとなれば、気色悪いとか言われたのだろう。
ビジュアルは大事だ。
そんな事だろうな。
建国クラブの部室でセラリーナが迎えてくれた。
「別にミニアに用があった訳じゃない。たまにはこちらにも顔を出さないといけないと思ってな」
「建国クラブもやる事がなくってメンバーの出席率はみんな似たり寄ったりです」
「そうか。面白い事でもないかと思ってな」
「それなら、知ってます? 学園の七不思議」
「いや、知らんな」
「行ってみますか。実は行きたかったんだけど、不気味な物が多くて。一人では心細くて」
「そうだな、巡ってみるか」
セラリーナに案内されたのは、誰もいない教室だった。
「どういう七不思議なんだ」
「誰もいないはずの教室で歌が聞こえてくるそうです」
「らららら♪ ららーら♪」
「あんな具合にか」
「きゃ」
セラリーナに抱き着かれたがムラムラはしない。
本体はドラゴンで、この体はゴーレムだからな。
「これはタルコットの店で売っている録音の魔道具を使ったいたずらじゃないのか」
「魔道具の仕業なの」
「音はあっちから聞こえるな」
俺は音がしている場所を探した。
そこはなんと実験に使う水を出す蛇口からだった。
水に音が伝わって聞こえたのか。
不思議でもなんでもないな。
魔道具でもなかったのか。
がっくりだ。
「水の配管を辿れば音の発生源が分かる」
俺達は水の配管を辿り、屋上のタンクの所に辿り着いた。
「ここだな」
「誰もいないわ」
水の補給は人が担いで運ぶ形式らしい。
学園とは思えない非効率な方法だな。
屋上のタンクから落差を利用して教室に水が届くらしい。
水を補給する係の人間が歌を歌いながら行ったというのが真相かな。
俺達はダッセンを訪ねた。
「屋上のタンクの水を補給する係はだれだ」
「また、変な事を聞くな」
「七不思議の謎が解けるの」
「いいだろう。教えてやるよ」
ダッセンに教わって係の人間に会いに行った。
「水を屋上に運んでいるのだって」
「へい、そうですが。なにか」
教えられた係の人間はむさい男で、あの歌声の主とは違う。
声は若い女だったと思う。
「屋上で歌声を聞かなかったか」
「知らないよ」
「そうか、俺は学園の理事とも親しい」
「脅すのか」
「真実を言ったまでだ。何か知っているだろ」
「秘密にしてくれるか。実は副業で歌手をしている」
「声は女だった」
「女の子は口ぱくするだけで、俺は舞台裏で魔法を使って歌うんだ」
「やってみてくれるか」
「いくぜ。ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・トセイチノゆふらららら♪ららーら♪ふよレ・む」
歌声が響き渡った。
さっそく魔法をイメージに翻訳してみる。
void main(void)
{
speak("らららら♪ららーら♪"); /*音声を流す*/
}
実に簡単な魔法だ。
なるほど呪文では『ふ』に囲まれた文言を変えれば歌詞が変えられるという訳だ。
言葉を喋らせる魔法語『トセイチノ』は前にも使った。
新しい発見はないが見事なもんだ。
よく、若い女の声をイメージできるものだ。
「女の子に口ぱくさせて、舞台裏で魔法を使って歌う。なかなか良い商売だな」
「これでも魔法の制御が難しいんだぜ。歌詞は呪文で指定できるが、音程とか抑揚とかイメージに左右される」
「そうだな。俺にはできそうにない。この呪文の魔道具を作ったら困るか」
「いいや、俺みたいな歌手が増えたら嬉しいよ」
「魔道具の売り上げの何割かは渡そう。面白かったよ」
魔道具にする呪文のイメージはこうだ。
void main(int argc,char *argv[]) /*入力付き冒頭*/
{
speak(argv[1]); /*入力を音声として流す*/
}
この呪文イメージは前にゴーレム用に作ったのと同じだ。
こんな単純な魔道具が欲しい人間がいるとは。
前世でもボーカロイドが流行った事もあったな。
あれと同じか。
この魔道具は案外と流行るかもな。
「七不思議も分かれば怖くないだろう」
「驚いたわ。あんなおじさんが歌っているなんて」
「そうだな。見た目で判断するとひどい目に会う事もある」
俺は魔道具の契約書を持って男が歌っている所に行った。
そこにいたのはルルシャ一族の娘で、男は衝立の裏で魔法を使い歌っていた。
ルルシャの一族には前に録音再生の魔道具を渡した事がある。
俺が口ぱくで歌うのを教えたんだった。
結局、アイデアの出元は俺か。
歌えない歌手と魔法で歌う男がどうやって出会ったのかは分からないが、必然だったのだろうな。
たぶん男は色々あったのだろう。
想像だが、男が若い女の声で歌うとなれば、気色悪いとか言われたのだろう。
ビジュアルは大事だ。
そんな事だろうな。
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