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第14章 生徒のドラゴン2

第84話 下僕のダッセン

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 後衛魔法学の二回目の講義だ。
 今回つまらなかったら切る予定である。

「それでは、後衛魔法学1の二回目になる講義を行います。第一回目の講義でどう思いましたか。はい、そこのあなた」
「良い魔法を持ってないので辛いです」
「交換するには良い呪文を持っていないと始まらない。さて、そうでしょうか」

 黒板に講師は情報と手札という言葉を書いた。

「ここに書いた事は重要です。相手が何を求めているか分かれば交換に応じて貰えます。その場合手札は重要です。良い呪文が一つだけだと交換を一回応じてもらうと次は駄目です。おわかりですね」

 次に戦略という言葉を書いた。

「一つ良い呪文を持っている人はそれだけで満足してはいけません。例えばサクラを用意するのです。交換に二の足を踏んでいる人にサクラを使い背中を押すのです」

 次に道具と講師は書いた。

「使える物は何でも使うのです。一回だけ伝言を伝える魔道具が、Fランク魔石で作れるのです。決まった文章しか送れませんが、大変役に立ちます。サクラに指示するのにも使えます」

 次に応用と書かれた。

「今言った事は前衛に指示するのにも使えます。情報と手札は言わなくても分かりますよね。魔獣の情報と攻撃のバリエーションです」

 なるほど、これはこういう授業か。
 後衛の戦略を説いているのだな。
 面白い。
 だが、ミニアには必要ないな。
 俺にも必要ない。
 前衛が居ると戦闘の邪魔だ。

 ミニアに伝言魔法して、教室から出てもらった。
 ミニアも必要ないと思っているようだ。

 ミニアはダッセンの所に行くようだな。
 この通路の先は事務局だ。
 そろそろ、分析の結果が出ているだろう。

 事務局の窓口でダッセンを呼び出す。
 ダッセンは諦め顔で空いている窓口のカウンターの椅子に座った。

「結果でたよね」
「出たよ。ちくしょう、絶対に麻薬だと思ったんだ。体液を落としたから、硝子の板は違うな。降参だ。教えてくれ」
「魔力を通すと文字が浮かび上がる新物質だよ」
「じゃあ、計算はどうやったんだ。満点だよな計算」
「計算はわりと得意」
「3+6×2は」
「18」

 ミニア、15だって、伝言魔法しただろう。
 間に合わなかったのか。

「15だ。正直に言え。計算は!?」

「感覚共有だよ」
「馬鹿な。スライムに感覚共有など掛けてみろ。発狂するぞ」
「師匠は無敵だから」

「着信拒否魔法はどうやった」
「離れた所でも魔法を掛ける事が可能な秘術がある」
「そんなもん、ある訳ないだろう」
「うん、ないよ。あるのはドラゴン的な秘術」
「ドラゴンを利用するのか。そこは考えなかったな。古代の文献にある竜言語魔法か。或いはドラゴンの魔力を使った力技か」
「とにかく秘術。約束通りに下僕をしてもらうから」
「違法な事はしないぞ。後、学園の方からクレームが来る事もだ」
「めんどうな事務手続きの書類を、作ってもらうだけだから」
「それなら、やってやるよ。しっかしなー。この情報じゃ、金一封は無理か」

「今度から、夢は寝てみるのね」
「ちくしょう。納得いかん。ドラゴンに会わせろ。それだけの力を持ったドラゴンか試してやる」

 また、めんどくさい事を言い始めたな。

「許す。好きなだけ見て、偉大さを感じ取るがいい」
「うわ、下僕に対する態度だ。こうなったら自棄だ。何か掴むまでドラゴンに張り付いてやる」

 ティの感覚共有を切るとしばらくして豆腐ハウスの前にミニアとダッセンがやってきた。

「でかいな」
「ドラゴン様の御前である。頭が高い。ひれ伏せ」
「頭が高いって。ドラゴンの頭は遥か上なんだけど」

 ミニアは何か小説の影響を受けたな。
 しょうがない奴だ。
 少しサービスしてやるか。

 俺は翼をゆっくり広げて大口を開けた。
 名付けて威嚇のポーズ。

「ひぇ、食わないで。お願い」

 ダッセンはびびって、ひれ伏した。

「もう駄目。ひひひっははははっ。おかしすぎ」

 ミニア、笑ってやるなよ。
 こちとら10メートルの巨大生物なんだぞ。
 威嚇されたら恐いに決まっている。

「ガォ」

 俺が吠えるとダッセンは顔を上げた。
 更にサービス。
 魔力十万のファイヤーボールだ。
 ミニアの頭上から9メートルのファイヤーボールが空に向かって放たれた。

「ひっ」

 ダッセンが今度は仰向けになり後ずさった。

「分かったか。これがドラゴン的な魔法」
「分かった、分かりました。金輪際謎を解こうなどと考えません」

 街道を行く人達が何事かと集まって来た。
 ミニアに伝言魔法で解決方法を伝えた。

「下僕、最初の仕事よ。野次馬に学園の実験だと言いなさい。職員の身分証を見せながらね」
「くそう。これ絶対クレームが来るだろう。この場に居た事がばれるのも時間の問題。やればいいんだろ。もう良いや腹を括った」

 ダッセンは集まった人に説明を始めた。
 学園ではこういう事故も起こりえるのか。
 みんな納得して散って行った。

「ご苦労様」
「あーあ、明日辞表を書く羽目になるとは」
「そういう事になったら、雇ってあげる。男手もほしいと思っていたの」
「その時はよろしく頼むよ。子供に雇われるとは。とほほ」

 去って行くダッセンの後ろ姿はくたびれたおっさんの臭いがした。
 強く生きろよダッセン。
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