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第6章 湿原のドラゴン

第38話 ポーションの秘術

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「言葉は分からないと思うけど、世話になったわね」

 アニーがウィッチに別れの挨拶をした。
 そして、おずおずと貝殻を差し出す。

「これ、あげる。貝殻好きでしょ」

 ウィッチは歓喜の雄叫びを上げ貝殻を大事そうに口に咥え収納。
 少しびびった様子の一同は俺の背中に乗りこんだ。
 俺達は飛び立って大湿原を後にした。
 街まではあっと言う間だ。

「ガハハ、またな」
「楽しかったよ」
「俺もまだまだ」

「ミニアちゃんまたね」
「一度剣で手合わせしたいぜ」

「ばいばい」

 ミニアが手を振り、名残惜しそうに皆と別れる。
 俺とミニアはアイテムボックスに収納してある薬草を工房に持って行くためアニーの後に続いた。
 アニーの工房は倉庫街に在った。
 道が広くて何よりだ。
 俺が入れないと薬草が渡せない。

 工房の前でアイテムボックスを開いて薬草を降ろす。

「今回はありがとう。ドラゴンが居なかったら死んでたと思う。ドラゴンさん、ありがとね」
「ポーション。買いに。来る」
「ええ、待ってるわ」

 アニーは待ちきれない様子で乱暴にドアを閉め工房に入って行った。
 かちゃりという鍵の音がする。
 この瞬間を待っていた。
 ポーションの作りの高度な魔法が盗めるのに違いない。
 俺は外で耳を澄ます。

 詠唱が始まった。

「ソクチス・モチカイスニチリガヌワワムレ・
ヒラニシ・モチニミゆニミカ・チスキソネソクチス・けチスキヒガムよ・が・
モチキニソ・けモセレ・
モセほモチキニソろモチノイゆモチカイスニチリネトニツイラハゆモチカイスニチリよネニモチキイキスチトトよレ・
モチキニソろチリソクイモンゆモセネチスキヒガヌムよレ・む」


 短いな。
 さっそく解析に入る。

char material[100]; /*合成する物質100立方センチ*/
void main(int argc,char *argv[])
{
 MAGIC *mp; /*魔法定義*/
 mp=magic_make(material,sizeof(material),IMAGEGRASS); /*物質を魔法登録*/
 magic_alchemy(mp,argv[1]); /*イメージに従って錬金*/
}

 こんなイメージだと思う。
 入力したイメージで錬金するのだろう。
 これはレシピがないとどうにもならない魔法だな。

 また詠唱が始まったぞ。

「ソクチス・モチカイスニチリガヌワワムレ・
ヒラニシ・モチニミゆヒラニシよ・が・
モチキニソ・けモセレ・
ソクチス・セスラソイトトガユムレ・
セスラソイトトガワムほソスナトクレ・
セスラソイトトガヌムほトカスチニミレ・
セスラソイトトガフムほニモセナスニカンスイモラヒチリレ・
セスラソイトトガアムほイサカスチソカニラミレ・
セスラソイトトガウムほシニリナカイレ・
セスラソイトトガエムほモチミチチシシレ・
セスラソイトトガオムほコラカカリイシレ・
セスラソイトトガヤムほやギワやレ・
モセほモチキニソろモチノイゆモチカイスニチリネトニツイラハゆモチカイスニチリよネニモチキイろキスチトトよレ・
モチキニソろチリソクイモンゆモセネセスラソイトトよレ・む」


 長い呪文だ。
 解析してみる。

char material[100]; /*合成する物質100立方センチ*/
void main(void)
{
 MAGIC *mp; /*魔法定義*/
 char process[8]; /*工程のデータ*/
 process[0]=CRUSH; /*潰す*/
 process[1]=STRAIN; /*濾す*/
 process[2]=IMPURITYREMOVAL; /*不純物除去*/
 process[3]=EXTRACTION; /*抽出*/
 process[4]=DILUTE; /*薄める*/
 process[5]=MANAADD; /*魔力加える*/
 process[6]=BOTTLED; /*瓶詰め*/
 process[7]='\0'; /*終わり*/

 mp=magic_make(material,sizeof(material),IMAGEGRASS); /*物質を魔法登録*/
 magic_alchemy(mp,process); /*プロセスに従って錬金*/
}

 たぶんこうだと思う。
 前の魔法と違うのはイメージでやるか固定された文言でやるかの違いだ。
 どっちの方でやるとミスが少ないかと言えば、俺なら固定された文言の方だ。
 だが、今の人達ならどっちもどっちだろう。
 詠唱もイメージもミスり易い事には変わりない。
 錬金はレシピありきだな。
 どの薬草がどの魔法でポーションに出来るか知っていないと使い物にならない。
 鍛冶魔法も同じなんだろうな。
 ちなみに鍛冶魔法の一番簡単なのはこんなイメージだ。

void main(void)
{
 armor_make_test();
}

 これが高度になるとさっきみたいにイメージで入力するか呪文で工程を入力するのだろう。
 中々一筋縄ではいかないな。
 俺はコンパイルがあるから呪文の入力の方が嬉しい。
 レシピと合わせて集めるしかないか。

 錬金術はしばらく放っておこう。
 さあ、これから一ヶ月土木作業だ。

 大湿原に戻り区画整理に汗を流す。
 襲ってくる魔獣は全て返り討ちしてウィッチの腹の中に消えて行く。
 卵を産んでまもないから体力が減っているのだな。
 そんなに食べると太るぞ。
 ドラゴンが体型を気にするのかは分からないが、口をつぐんで心の中だけにしておこう。
 ミニアは水の中に入りっぱなしという訳にはいかないので陸に置いてきた。
 何をしているかと言えば偉い人との交渉だ。
 当然の事ながら伝言魔法で俺とやり取りして進めている。

 なになに、ウォータードラゴンへの報酬は何が良いかだって。
 そんなもの綺麗な貝殻に決まっているだろう。
 そうミニアに伝えた。

 会議の議題は現在ウィッチの仕事についてだ。
 ウィッチは岸辺の指定された魔獣を食らう。
 そして、その報酬として貝殻を貰うという訳だ。

 縄張りについては浮島を集めて埋め立てられた土地は人間の好きにして良いと決着が着いていた。
 でも、何世代か経つと約束は忘れ去られるのだろうな。
 ドラゴンと人間が戦争にならない事を祈る。
 その場合に俺はどちらの側に立ったら良いのだろうか。
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