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chapter18 竜馬の帰還
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しおりを挟む【メビウスビル社長室】
「そうか!目覚めたか!」
文也からの吉報の電話に
宗一郎が立ち上がった
その後ろで事務仕事をしていた
真希も涙を溜めてティッシュの箱を
宗一郎に手渡した
「ありがとう」
1分ほどして宗一郎もぶっきらぼうに言い
ティッシュを目に当て
そのまま真希にスマホを渡し窓の隅に歩いていった
今は一人にした方が良いと
思った真希は宗一郎の代わりに文也の電話に出た
「もしもし?文也君?
ジェニさんは?・・・どうしてる?
うん・・・うん・・・ 」
真希が電話を切った後少し落ち着いた
宗一郎がやってきて照れくさそうに聞いた
「・・・元気なのか? 」
部屋をウロウロしながら言う
どうやら嬉しくて落ち着いていられないみたいだ
真希はうなずいた
「とても回復してるみたいですよ
今夜は軽い流動食を食べたんですって!
まだこれから沢山検査して・・・場合によっては
肺の蘇生手術をしないといけないらしいけど・・・・ 」
真希がノートパソコンのスケジュールを
確認している
「回復していくんだな 」
希望に満ちた声で宗一郎は言った
雨雲からようやく日差しが
自分に射したような顔をしている
「私達は明日行けばいいわ
今は二人っきりにしてあげましょう 」
すると真紀の携帯がけたたましく鳴った
「もしもし?藤子さん?
今出先なの?ええ・・そうですよ!!
竜馬さんが意識を吹き返しました!! 」
そう言って真希が
藤子と嬉しい報告話に盛り上がっている
とにかくよかったと宗一郎も安堵して
コーヒースタンドから
コーヒーをカップについだ
そこで気が付いた
カップを持つ手が震えている
真希も会話の途中
思わず声が詰まる時が何度かあったが
今は嬉しそうにケラケラ笑いながら話している
クスクス・・・
「ええ・・・そうみたい
文也君いわくジェニさんが大騒ぎして
守護神のように竜馬さんに張り付ているみたいなんですって」
フッ・・・
「想像できるな・・・・ 」
真希の藤子との会話のこぼれ話を
聞きながら
宗一郎は微笑み熱いコーヒーを啜った
:*゚..:。:.
.:*゚:.。
「検査お疲れ様! 」
ストレッチャーから看護婦さんの手を借りて
ゴロンと寝返りを打って
竜馬がベッドに移動する様子を
ジェニはハラハラと見守った
長い時間がかかった検査で
竜馬の体力がひどく消耗されているのがわかる
今はひどく疲れてい仰向けに寝転がって
ハァハァ言っている
引き締まった体を手術着に包み
手足と右の頬は火傷の保護シートをべたべた張り付けられている
そんな竜馬を見てジェニは心配でたまらない
「汗をかいているでしょ?お着変えする?
病院用の術着なんてもう見たくもないでしょう?」
ジェニはいそいそとシルクのパジャマと
真新しいボクサーブリーフを紙袋から取り出した
竜馬が起きたら着せてあげようと
沢山用意しておいたものだ
彼が目覚めるのを待つにはあまりにも
長い沢山の準備時間があった
ジェニは竜馬の掛け布団をめくり
体に手を伸ばして合わせ目の紐をほどこうとした
そこで竜馬の異変に気付き手を止めた
ジェニを見つめ・・・・
頬が赤くなってる
「ちょっと・・・部屋を出ててくれる?
自分でやるよ・・・・ 」
竜馬がもじもじして言う
「まぁ・・・構わないわよ
一人ではまだ難しいでしょう? 」
ジェニも頬が火照るのを感じた
「私達夫婦ですもの・・・ 」
そう言って婚約指輪が見えるようにした
なんだか息苦しくて下を向いた
「少なくとも私はそう思っている・・・」
不安な気持ちがよぎる
彼は違うのだろうか・・・・
ジェニの薬指には婚約指輪が光っている
なぜか二人は恥じらいと親しみを感じて
戸惑っていた
竜馬はそっとジェニの手を取り
小さなダイヤが散りばめられている
ルビーの婚約指輪を親指と人差し指で軽く摘まんだ
「外したことないの 」
思わすジェニが囁いた
返してくれと言われても
返す気などさらさらなかった
この指輪はもうジェニの一部だ
なくなったら変な違和感に襲われるだろう
彼は長い間じっとジェニを見つめていた
そして花が咲きほころぶ様な笑顔を見せて言った
「着替えを手伝ってくれるかな?・・奥さん? 」
ジェニは切なくて心臓が痛かった
ああ・・・また涙が出そう
彼の傍で彼のお世話が出来る事が
嬉しくてたまらない
ジェニはいそいそと竜馬の術着の前をはだけた
そして息を飲んだ
なんてひどい・・・・
術着の下は全裸だった
彼の美しい体がどこもかしこも
火傷の水ぶくれ後だらけで変色している
改めて事故の恐ろしさに身が震える
よく無事でいてくれた
体のあちこちに火傷の保護シートが貼られ
まるでつぎはぎされている
フランケンシュタインだ
あまりの酷さにジェニが言葉を失っていると
竜馬が勇気づけるように言った
「大丈夫・・・
君の好きな部分はたぶん無事だと思うから」
竜馬の指がさらさらしたジェニの髪に絡めた
彼は冗談を言ってジェニを安心させたいのだ・・・
「ちゃんと機能するかどうかは
治ってから厳選な審査をさせていただきますからね」
ジェニも方眉を上げて冗談を言ったが
声は震え涙が溢れて来た
本当に彼が意識を取り戻してくれてよかった
生きているだけで奇跡の人
:*゚..:。:. .:*゚:.。
ジェニは
彼を生かしめるすべてのものに感謝した
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