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chapter16 何度も君に恋をする

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その日はランチも取れないほど忙しかった週末
を終えてやっとの休日だった


たいがいは休日も接待ゴルフなどの
予定が入るのだが



めったにない一人きりの
まったくのオフの日なので
体力の限界に挑戦してみようと
竜馬はジムでいつも通り汗を流した後



メビウスタワービルの近くの
公園にランニングに出かけた


ワイヤレスイヤホンを耳に突っ込み
クラッシックを聞きながら
軽くジョギングし



小さくても緑が豊かな公園を一周した頃には
ずいぶん気分もすっきりした


休日を一緒に過ごす女性などいなかった
すでに竜馬は周りから
「首切り社長」と恐れられてたし




それでなくても竜馬の毎日は
すでに綱渡り状態だ

責任の重い仕事と
会社の将来の重圧に日々耐えているので
その隙間に女性の事を考える余裕などまったく
なかった



その時ふと頭に浮かんだのはジャスティンだった



もう彼を亡くして
5度目の冬が来ようとしているのに

誰かと恋愛するどころか
男も女もジャスティンほどの人はおらず
竜馬にとっては誰もが物足りなかった



荒い息を整えて公園のベンチに座り
ぼんやりと記憶のジャスティンを辿る




夕陽に照らされて
金髪を輝かせる
大きくてしなやかな体つきのジャスティン



頭がものすごく良くて
洗練されていて優しいジャスティン



教会の鐘も負けてしまうぐらい
竜馬の胸を高鳴らせてくれるジャスティンの笑顔・・・





竜馬からした一度きりの
心を合わせたキスの後は
照れくさくてしばらくお互いの顔が見れなかった





今でもその気になれば鮮やかによみがえる
竜馬の胸の空洞は誰にも埋められなかった



肉体関係こそなかったが
たった一度の本気の恋愛が竜馬の心に永遠に
消えない爪痕を残したのだ






その時ベンチに座っている竜馬の目の前に
一匹の大きな犬が現れた





竜馬とその犬はじっと見つめあった
犬は豊な毛並みの尻尾を優しく揺らしながら



大きな金色の瞳をこちらにむけ
問いかけている





「・・・ゴールデン・・レトリバー・・
かな? 」




その犬の首輪には赤い十字架の「ヘルプ・マーク」
がついていた


竜馬はその犬に言った




「介助犬・・・か?
飼い主はどうしたんだい?
逃げ出してきたのか?  」




すると犬がぐるぐるその場に回って一声吠えた




竜馬は言った




「・・・ついてこいって・・ことか?
どうした?何かあったのか? 」






竜馬と犬は一緒に走り出した




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