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chapter14 新たな仲間達

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【一年後】



あ・・・・あいつ
また後ろの席にいるな・・・・


イリノイ大学
アーバナー・シャンペーン校経済学科に
通う竜馬は


いつものキャンパス内にある(バンドルカフェ)
のカウンターの端に座って
気持ちの良い午後の日差しを浴びて
ウトウトしながら思った




竜馬も多くの同級生と同じく
この四週間は起きているほとんどの時間を
授業で取ったノートや教科書をまとめ

真夜中過ぎまで
かすんだ目で準備し
怒涛の難しい試験をやっと乗り切った
解放感に浸っていた




噂だとこの大学の経済学科は致死量の課題に襲われ
頭がおかしくなった学生が夜な夜な


「不当な捜索と押収を禁止する合衆国憲法第四条」


をブツブツ暗唱して彷徨う現象が
あちこちで見られるほどで


今はやっとそれに解放された学生の浮足立った
空気がキャンパスいっぱいに広がっていた




竜馬は突然感傷的な痛みに襲われた


期末試験が終わった今
竜馬をはじめとする学生は
ほぼ全員が故郷へ帰省しようとしている


しかし竜馬はこれから十週間ぶっ続けで
「アンディ・ビームスの精粉工場」で小麦粉を
出荷する仕事と夜はガソリンスタンドの
ダブルシフトで働く予定だった



その仕事は体力的にはキツイが
ビームスの采配で苦学生の竜馬の一年分の
授業料をまかなうのに十分な収入を
もたらしてくれる


それだけ蓄えれば
冬の間の家賃と生活費に余裕ができる



今や一郎に仕送りを頼らず
ルビーからもらった金があるからといっても
今の竜馬には大学生活を謳歌する余裕など全くなかった




そして今はカウンターでコーヒーを一口啜り




竜馬がシカゴに来てから初めて
日本人らしき学生と認識している男子学生が
自分の後ろに座っているのを意識していた




彼は何度かクラスで見たことがあった

黒髪で銀縁の眼鏡をかけていて
ヘッドフォンで何かを聞いているフリをして
周りを一切遮断している



試験から解放された浮きだった気分も相まって
竜馬は彼に話しかけてみることにした






「・・・・・Chinese?中国人?」




竜馬は聞いた



不意に彼は顔を上げて
自分の目の前に座った竜馬を見た


そして気分を害したみたいで
眉根を寄せて言った



「Japanese日本人だ」






「え?うそ?ほんと!
ここに来てから日本人初めて見た  」



竜馬は驚いた
彼がじっと竜馬を見て嫌々ながらも口を開いた



「日本のどこ? 」



「関西だよ 」  


「俺もだ  」




竜馬は彼に手を差し出した



「僕・・・松下竜馬だよ
たぶん同じ授業取っていると思うんだけど 」




無表情なのか嫌がっているのかわからない
表情で眼鏡の彼は小さく呟いた






「・・・浜田・・宗一郎・・」






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