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chapter12 愛が止まらない
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しおりを挟む伊藤アリスは先ほどから
コピー機に点滅する
”コピーできません”
の白黒の表示をじっと見つめていた
もうかれこれ30分ほどこのコピー機の前でじっとしている
・・・・どうしてコピーできないのでしょう・・・
ありすの目には不安が色濃く出ていた
今までコピーといえば父の会社で
コピー機を使ったことが1度だけあった
しかし・・・
あのコピー機はカラー表示で自動に
印刷した用紙を吐き出していた
・・・・
お金を入れないといけないのでしょうか・・・
彼女が肩をすぼめてうつむくと
肩までの淡い栗色の髪が丸みを帯びた顔にかかった
小柄な姿がますます小さく見える
アリスはもう一度コピーボタンを押してみた
しかし目の前の白い大きな機械は虚しく
”コピーできません”
と表示を点滅させるだけだった
「どうしたの?アリスちん」
固まっているアリスを見かねた藤子が
アリスの後ろからぬっと現れた
いきなり話しかけられてアリスは緊張した
「あ・・あの・・・
コピーが出来なくて・・・・ 」
「ああ!それね!時々こうなるの!
ジェニが得意よ、ジェニ――――! 」
途端にアリスは青くなった
「い・・・いえ・・
大丈夫です!皆さんお忙しいのに・・・」
アリスは声を潜めて身を震わせた
「はーい!何ーー?」
ジェニがパタパタとやってきた
ジェニは大股で颯爽とアリス達がいる方へ
向かって来た
シルバーのブリーフケースをコピー機の前に置く
「コピーできなくて
アリスちんが困っているわ
いつものアレやって! 」
「ああ!それならもっと早く言ってくれたら
よかったのに!
アリスちんのせいじゃないわよ
これ最近紙詰まりよくするの 」
アリスちん・・・・・
アリスは心の中でつぶやいた
こんなおかしなあだ名で呼ばれたことは
今までなかったがあえて口には出さなかった
するとジェニがコピー機を信じられない
力で斜めに三回チョップした
アリスの目が点になって固まった
するとさっきまで頑固としてエラー表示を
出していたコピー機が轟音を立てて動き出した
「ここの角度を45度で叩くのがコツよ」
藤子が笑った
「もうそんなことしないで
新しいの買ったら?アリスちんが怖がってるわよ」
「真紀ちゃんの旦那様に新予算を提案するわ 」
「ごめんねアリスちん、これで大丈夫よ
他に何か困ったことある?」
ジェニが微笑んでアリスに言った
「え?いっいいえ!
そんなっ・・・・ありがとうございます」
慌ててアリスは米つきバッタのように
ペコペコした
そこに動画制作エースの小林が三人の前を
ふらふら歩いて去って行った
げっそり疲れ切った顔で
ヌラヌラとナメクジのように歩く
小林の後ろ姿を三人は見つめた
「なぁに~?
辛気臭いわねぇ~~~ 」
藤子が半笑いで言った
「今、彼に五件動画制作案件が来てるの
すっかり生気を吸われちゃって・・・・」
「すごいわね!大人気じゃない!」
「ただ「ファンタスティック色白」の
字幕文字のフォントが小林君だと―― 」
「ああ!その件なら真紀ちゃんから聞いているわ
同じフォントだと視聴者に飽きられるってヤツでしょ?
それに関しては真紀ちゃんの作戦があるの――」
ワイワイと話し込みながら二人が去って行って
アリスは両手を組みホッと胸をなでおろした
ああ・・・
あの二人に話しかけられると
緊張しますわ・・・
アリスから見たあの二人は同じ世界に新しく
生まれ変わった別の人種のように見えていた
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