上 下
58 / 700
chapter3 シングルマザーの秘密兵器

14

しおりを挟む
「このままずっとバレないとでも思っていたのか?」



宗一郎は言った




「いいえ・・・・
この会社の買収計画が出た時・・・
私はすぐに麗華を保育園に入れました

でも・・・
今保育所は大変な事になっているんです
流行りのウィルスに侵された保育士さんが
皆体調不良でベビーシッターも・・・
どこも保育士不足なんです・・・
麗華の保育園も来週まで再園されないんです・・・」




「それでここに連れて来たのか?
他に見てくれる家族は?」




「そんなものがいたらとっくに預けています
私だって娘の生活リズムを崩したくありません
しかし・・・・
私はたった一人で娘を育てていますし
働かないことには家賃を払えません
私しか出来ない案件をかかえています
この会社は在宅ワークを禁止しています」




宗一郎は答えなかった
険しく細めた目で見つめられ
いたたまれなかったが
真紀は必死に踏ん張った




「・・・・連れて来るしかなかったんです・・・
会社の規則を破ったことは認めます
今日中には退職届を出します   」





とりあえず言うべきことは言った
あとは向こうがどう返してくるかだ



麗華は相変わらず真紀の膝の上で
クピクピと小さな声を漏らし
おしゃぶりを吸っている



よく泣くタイプだとこうはいかないけれど
麗華はとても育てやすい赤ん坊だ
真紀は麗華の頭をそっと撫でてやった



宗一郎は彼女の膝の上でうとうとしている
赤ん坊に目を落とした

その拍子に真紀の濃いまつ毛が揺れるのを見て
思わず彼女から目が離せなくなった




彼女のまなざしは愛しい我が子を
見つめる母親そのものだった
何かが自分の中からこみ上げてくる



彼女が立ち上がり
寝てしまった赤ん坊を
手際よくファイルボックスに寝かした



赤ん坊の名前を聞こうとしないのは
冷たいだろうかと宗一郎は思った






「オフィスは託児所ではない」




「ハイ・・・自覚しています  」







真紀が下を向いて目を閉じた








「しかし俺自身
働き者のシングルマザーの息子として
個人的に君を支援したいと思っている」





「え?」





真紀が言葉に詰まっているうちに
宗一郎が何やらガタガタと大きな荷物を
扉から資料室に運びこんできた



真紀の背丈ほどある
大きな段ボールを開封するとそこには
真っ白なベビーベッドのパーツが沢山入っていた





「しばらくここで作業するんだろ?
ファイルボックスはその子にはあまりにも可哀そうだし
ファイルボックスは資料を入れておくものだ」






え?・・・今笑った?






途端に真紀の心臓がはねた
そして信じられない事に彼が無言で
ベビーベッドを組み立て出した





まだ状況を飲み込めず
沢山の種類のネジがビニール袋に入れられてる
のを真紀が途方に暮れて見ている






「アイツらが君をかくまう理由を知ってるぞ
君はなかなかの経歴だな」






今度はハッキリ彼は笑って言った








「君こそ神崎広告代理店の秘密兵器なんだろ?
天才WEBデザイナーの山田真紀さん」












しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~

ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。 2021/3/10 しおりを挟んでくださっている皆様へ。 こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。 しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗) 楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。 申しわけありません。 新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。 修正していないのと、若かりし頃の作品のため、 甘めに見てくださいm(__)m

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~

泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の 元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳  ×  敏腕だけど冷徹と噂されている 俺様部長 木沢彰吾34歳  ある朝、花梨が出社すると  異動の辞令が張り出されていた。  異動先は木沢部長率いる 〝ブランディング戦略部〟    なんでこんな時期に……  あまりの〝異例〟の辞令に  戸惑いを隠せない花梨。  しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!  花梨の前途多難な日々が、今始まる…… *** 元気いっぱい、はりきりガール花梨と ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。

冷徹上司の、甘い秘密。

青花美来
恋愛
うちの冷徹上司は、何故か私にだけ甘い。 「頼む。……この事は誰にも言わないでくれ」 「別に誰も気にしませんよ?」 「いや俺が気にする」 ひょんなことから、課長の秘密を知ってしまいました。 ※同作品の全年齢対象のものを他サイト様にて公開、完結しております。

処理中です...