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chapter1処女の憂い
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しおりを挟む彼女が処女で
男と一度も?
なぜだ?
機会がなかっことはないだろう?
確かに彼女は元妻の晴美ほど
ハッとするような美人ではないが
けっしてブスな部類に入るわけではない
内気でおとなしいがうちとけてしまえば
知性があり礼儀正しく
言葉づかいがとても丁寧な所も
気に入っている
きっと良い親御さんに育てられたのだろう
彼女の軽い冗談も気が利いて心が軽くなる
実に気持ちの良い娘さんだ
彼女を好きになる男も一人や二人いて
当然だと思っていた
しかし思い返してみると
彼女が院内でも男と気安く話しているのを
見たことが無い
服もいつも今日みたいな
茶色の大人しいものを着ている
おそらくガードが堅いと思われて
手を出す段階までいかないのだろう
でも今彼女は酒にほろ酔いになり
もともと色白な肌が桃色にそまり
瞳は恥ずかしさのあまり潤んで震えている
決して男がその気にならないわけじゃない
准看護師の高山桃子が突然謎に包まれた
女性のように思われ
新藤の好奇心をそそった
「処女なのは悪いことじゃない」
新藤は言った
「逆の立場になってお考えになって・・・」
桃子はすねたように唇をとがらせて言った
なんともかわいい仕草をするじゃないか・・・・
桃子は涙が溢れてくるのを
目を瞬かせて防いだ
ああ・・・・
きっと先生はあきれているに違いない
なのに彼は手をひっこめないのが桃子には
意外だった
それどころかきつく握りしめてくる
なんて温かくて大きな手だろう
心が落ち着き思わず握り返さずには
いられなかった
新藤は自分の立場になって考えていた
でも断然違うのは男は金を出して
そういう店に行くことができる
でも女はそういうわけには
いかないのだろう
色々考えを巡らしていると
桃子がポツリポツリと話し出した
「いろいろな事を
経験できてないってことは私だけが
子供で未熟者なような気がして・・・
ああ・・・
すいません
うまくしゃべれない 」
「未熟者だなんて思った事ないよ」
桃子は涙をきらめかせて
手をひっこめた
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