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chapter1処女の憂い
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しおりを挟む2年前
別れた妻の晴美は細見の美人で
華やかだった
新藤は彼女を愛していた
しかし夜通し大きな手術を手掛けて
疲れ果てていた新藤は早退し
家でゆっくり休もうと珍しく
午前も早く帰宅した
手土産に有名なパティシエの店の
ケーキを持って
しかし夫婦の寝室には別の男が寝ていた
そしてその横に眠る裸の妻が驚いた目で
自分を見据えていた
新藤は思わず手土産を床に落とした
無理に蓋をしていても時々こうして
沸騰するようにその光景が溢れ出してくる
クソッ・・・もう二年も経っているのに
ハッと我に返った
「すまない・・・
それで泣いていたんだね 」
思わず新藤は桃子の手を握った
桃子は新藤の顔を見つめた
その目には涙が光っている
「見ただけでお分かりになるんですか?
だとしたら重症だわっ
わたし・・・・ 」
「は?見ただけで? 」
新藤は不思議に繰り返した
「その・・・・
おわかりになるんでしょ?
私はいないって 」
桃子はそれ以上言えず言葉を切った
新藤はわけがわからず顔をしかめた
「いない?」
「恋人ですっ!」
桃子は顔から火が噴きそうだった
新藤は驚いた
「ああ・・・
彼氏と別れたってことかい?
君は若いんだしそのうちいい人が
見つかると思うよ」
桃子はわっと泣き出した
「やめてくださいっっ
元からいないってことです!
生まれてこのかた!
男の人とつきあったことないんです!
これからだって!
きっと私は一生処女のままなんだわっ 」
一瞬二人は無言で見つめ合った
「ああ・・・・・
わたしったら・・・
よりによって・・・・
何て事を・・・ 」
桃子は何を
しかも誰に向かって言ったかに気付き
胸元から髪の生え際まで
全身真っ赤になった
彼女のみるみる赤くなっていく
その様子を新藤は興味深く見つめた
血液が興奮で桃子の体の中で暴れて
激流しているのがわかる
桃子は燃えるような頬を両手で
押さえて隠した
「すみません!
本当にバカなことを言ってしまって
忘れてください!
今のことは
酔ったうえでのたわごとです・・・ 」
「そんなふうに考えないで 」
新藤は何を言っていいかわからず
無意識に彼女の右手を握った
あっけにとられていた
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