55 / 68
第二部
22.全部君のせい
しおりを挟む「できるだけ力抜いて。そう、ちゃんと息して」
ゆっくりとなかを熱いものが侵入してくる。小刻みに揺らされながら、進んでいく。言われるがまま、なんとか息を吸う。収縮する奥が屹立にまとわりついていく。
苦しそうな顔をしたハーディが、宥めるようにわたしの腰や胸を撫でる。痛みがないわけではないけれど、想像していたよりは恐ろしくなかった。ちゃんとやさしくされているのだと、わかっていたから。
空っぽの奥が満たされる。わたしが、彼でいっぱいになる。
「挿入ったよ、全部」
わたしの前髪を上げて、額にキスを落とす。そのまま、ぎゅっとわたしを抱き締めて、ハーディは動かなかった。時折ぴくりと、肩が震える。
汗ばんだ背中から立ち上る彼の匂いにくらくらしてくる。
このままじゃ終わらないことぐらい、いくらわたしでも知っている。
「はーでぃ……?」
「どうしたらいいかはわかってるのに、“おれ”が追い付いてこない」
首筋にかかる吐息はびっくりするほど熱い。
「君をめちゃくちゃに甘やかしたいのに、めちゃくちゃにもしたい」
掠れた声にはもう、わたしを揶揄った色はない。
「全部ルイーゼのせいだ」
ぜんぶ、わたしのせい。
「ハーディは、わたしで……いっぱい?」
揺らいだ青い瞳には、わたししか映っていなかった。
「いっぱいだよ。溢れそうだ」
わたしだって、もうとっくに、溢れている。
立ち上がっている時は届かない銀色の頭が目の前にあった。ふわふわとやわらかい銀髪と撫でる。首に手を回して、わたしもぎゅっと彼を抱きしめ返した。同時に、わたしのなかの彼自身を締め付けてしまって、ハーディが小さく呻くような声を上げた。
抱かれているのに、わたしが彼を抱いているみたいだ。
「いいわ、好きにして」
強い光が青い瞳に煌めいた。わたしのなかでずくりと圧迫感が増す。
「煽るなって……言って、るだろっ」
「ひゃああっ」
ハーディが喉の奥で低く唸って、急に激しい一突きが繰り出された。体の奥深くまで貫かれる。なかが大きく拡がる。箍が外れたように、繰り返し繰り返し突き上げられて、抜き差しの度に空っぽになるなかが切なくなって追い求めるように蠢いてしまう。
胸に伸びた手が、きゅっと頂を摘まむ。痺れるような快感に奥が収縮する。
何度か突き上げられる時、一点に男根が触れると、一際大きな声が漏れた。腰が勝手に揺れて、浮かび上がるような感じがした。
勿論それを、ハーディが逃すわけもなかった。大きな手が、腰を掴む。
「はあ……ここがいいんだ…っ」
どうしてこんなにも気持ちいいんだろう。狙いすましたように執拗にそこ突き上げられて、悲鳴のような嬌声を上げることしかできない。いつの間にかハーディの腰に足を絡めて、わたしは一人で達した。
飢えた獣のような目をして、ハーディがわたしに口づけてくる。何度も何度も、角度を変えてキスが続く。じゅくじゅくとした淫靡な水音が、キスによるものなのか律動によるものなのかもわからない。夢中で、わたしも彼の舌に応える。
熱くて苦しくて、それでもそれがちゃんとわかることが嬉しい。
「ああっ……はあ」
溶けてしまうくらい火照った体を、強く強く抱きしめられる。胸板に立ち上がった乳首が擦れてそれだけでも強い快感になる。荒い息を吐いて奥歯を噛みしめて、ハーディが何かを堪えている。
「……ハルト……エアハルト、すき」
縋るように、ほとんど何も考えずに口から言葉が出ていた。がつがつと突き上げられて翻弄されて、でもあの夜とは全然違う。
「…おれ…だって…はあっ………っく」
大きく膨らんだハーディの楔が弾けて、熱い迸りが広がっていく。力の抜けたハーディの体がわたしの上に落ちてくる。肩を上下させて、荒い息を吐いている。
「おれのほうが、きっと、ルイーゼのことがすきだよ」
覚えているのはそう得意げに返したハーディの声までで、甘い官能に満たされて、わたしは意識を手放した。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【R18】出来損ないの魔女なので殿下の溺愛はお断りしたいのですが!? 気づいたら女子力高めな俺様王子の寵姫の座に収まっていました
深石千尋
恋愛
バーベナはエアネルス王国の三大公爵グロー家の娘にもかかわらず、生まれながらに魔女としての資質が低く、家族や使用人たちから『出来損ない』と呼ばれ虐げられる毎日を送っていた。
そんな中成人を迎えたある日、王族に匹敵するほどの魔力が覚醒してしまう。
今さらみんなから認められたいと思わないバーベナは、自由な外国暮らしを夢見て能力を隠すことを決意する。
ところが、ひょんなことから立太子を間近に控えたディアルムド王子にその力がバレて――
「手短に言いましょう。俺の妃になってください」
なんと求婚される事態に発展!! 断っても断ってもディアルムドのアタックは止まらない。
おまけに偉そうな王子様の、なぜか女子力高めなアプローチにバーベナのドキドキも止まらない!?
やむにやまれぬ事情から条件つきで求婚を受け入れるバーベナだが、結婚は形だけにとどまらず――!?
ただの契約妃のつもりでいた、自分に自信のないチートな女の子 × ハナから別れるつもりなんてない、女子力高めな俺様王子
────────────────────
○Rシーンには※マークあり
○他サイトでも公開中
────────────────────
冷酷無比な国王陛下に愛されすぎっ! 絶倫すぎっ! ピンチかもしれませんっ!
仙崎ひとみ
恋愛
子爵家のひとり娘ソレイユは、三年前悪漢に襲われて以降、男性から劣情の目で見られないようにと、女らしいことを一切排除する生活を送ってきた。
18歳になったある日。デビュタントパーティに出るよう命じられる。
噂では、冷酷無悲な独裁王と称されるエルネスト国王が、結婚相手を探しているとか。
「はあ? 結婚相手? 冗談じゃない、お断り」
しかし両親に頼み込まれ、ソレイユはしぶしぶ出席する。
途中抜け出して城庭で休んでいると、酔った男に絡まれてしまった。
危機一髪のところを助けてくれたのが、何かと噂の国王エルネスト。
エルネストはソレイユを気に入り、なんとかベッドに引きずりこもうと企む。
そんなとき、三年前ソレイユを助けてくれた救世主に似た男性が現れる。
エルネストの弟、ジェレミーだ。
ジェレミーは思いやりがあり、とても優しくて、紳士の鏡みたいに高潔な男性。
心はジェレミーに引っ張られていくが、身体はエルネストが虎視眈々と狙っていて――――
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
元男爵令嬢ですが、物凄く性欲があってエッチ好きな私は現在、最愛の夫によって毎日可愛がられています
一ノ瀬 彩音
恋愛
元々は男爵家のご令嬢であった私が、幼い頃に父親に連れられて訪れた屋敷で出会ったのは当時まだ8歳だった、
現在の彼であるヴァルディール・フォルティスだった。
当時の私は彼のことを歳の離れた幼馴染のように思っていたのだけれど、
彼が10歳になった時、正式に婚約を結ぶこととなり、
それ以来、ずっと一緒に育ってきた私達はいつしか惹かれ合うようになり、
数年後には誰もが羨むほど仲睦まじい関係となっていた。
そして、やがて大人になった私と彼は結婚することになったのだが、式を挙げた日の夜、
初夜を迎えることになった私は緊張しつつも愛する人と結ばれる喜びに浸っていた。
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
美貌の騎士団長は逃げ出した妻を甘い執愛で絡め取る
束原ミヤコ
恋愛
旧題:夫の邪魔になりたくないと家から逃げたら連れ戻されてひたすら愛されるようになりました
ラティス・オルゲンシュタットは、王国の七番目の姫である。
幻獣種の血が流れている幻獣人である、王国騎士団団長シアン・ウェルゼリアに、王を守った褒章として十五で嫁ぎ、三年。
シアンは隣国との戦争に出かけてしまい、嫁いでから話すこともなければ初夜もまだだった。
そんなある日、シアンの恋人という女性があらわれる。
ラティスが邪魔で、シアンは家に戻らない。シアンはずっとその女性の家にいるらしい。
そう告げられて、ラティスは家を出ることにした。
邪魔なのなら、いなくなろうと思った。
そんなラティスを追いかけ捕まえて、シアンは家に連れ戻す。
そして、二度と逃げないようにと、監禁して調教をはじめた。
無知な姫を全力で可愛がる差別種半人外の騎士団長の話。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる