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第二部

22.全部君のせい

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「できるだけ力抜いて。そう、ちゃんと息して」
 ゆっくりとなかを熱いものが侵入してくる。小刻みに揺らされながら、進んでいく。言われるがまま、なんとか息を吸う。収縮する奥が屹立にまとわりついていく。

 苦しそうな顔をしたハーディが、宥めるようにわたしの腰や胸を撫でる。痛みがないわけではないけれど、想像していたよりは恐ろしくなかった。ちゃんとやさしくされているのだと、わかっていたから。
 空っぽの奥が満たされる。わたしが、彼でいっぱいになる。

「挿入ったよ、全部」
 わたしの前髪を上げて、額にキスを落とす。そのまま、ぎゅっとわたしを抱き締めて、ハーディは動かなかった。時折ぴくりと、肩が震える。

 汗ばんだ背中から立ち上る彼の匂いにくらくらしてくる。
 このままじゃ終わらないことぐらい、いくらわたしでも知っている。

「はーでぃ……?」
「どうしたらいいかはわかってるのに、“おれ”が追い付いてこない」
 首筋にかかる吐息はびっくりするほど熱い。

「君をめちゃくちゃに甘やかしたいのに、めちゃくちゃにもしたい」
 掠れた声にはもう、わたしを揶揄った色はない。

「全部ルイーゼのせいだ」
 ぜんぶ、わたしのせい。

「ハーディは、わたしで……いっぱい?」
 揺らいだ青い瞳には、わたししか映っていなかった。

「いっぱいだよ。溢れそうだ」
 わたしだって、もうとっくに、溢れている。

 立ち上がっている時は届かない銀色の頭が目の前にあった。ふわふわとやわらかい銀髪と撫でる。首に手を回して、わたしもぎゅっと彼を抱きしめ返した。同時に、わたしのなかの彼自身を締め付けてしまって、ハーディが小さく呻くような声を上げた。

 抱かれているのに、わたしが彼を抱いているみたいだ。

「いいわ、好きにして」
 強い光が青い瞳に煌めいた。わたしのなかでずくりと圧迫感が増す。

「煽るなって……言って、るだろっ」
「ひゃああっ」

 ハーディが喉の奥で低く唸って、急に激しい一突きが繰り出された。体の奥深くまで貫かれる。なかが大きく拡がる。箍が外れたように、繰り返し繰り返し突き上げられて、抜き差しの度に空っぽになるなかが切なくなって追い求めるように蠢いてしまう。

 胸に伸びた手が、きゅっと頂を摘まむ。痺れるような快感に奥が収縮する。
何度か突き上げられる時、一点に男根が触れると、一際大きな声が漏れた。腰が勝手に揺れて、浮かび上がるような感じがした。

 勿論それを、ハーディが逃すわけもなかった。大きな手が、腰を掴む。

「はあ……ここがいいんだ…っ」
 どうしてこんなにも気持ちいいんだろう。狙いすましたように執拗にそこ突き上げられて、悲鳴のような嬌声を上げることしかできない。いつの間にかハーディの腰に足を絡めて、わたしは一人で達した。
 飢えた獣のような目をして、ハーディがわたしに口づけてくる。何度も何度も、角度を変えてキスが続く。じゅくじゅくとした淫靡な水音が、キスによるものなのか律動によるものなのかもわからない。夢中で、わたしも彼の舌に応える。

 熱くて苦しくて、それでもそれがちゃんとわかることが嬉しい。

「ああっ……はあ」
 溶けてしまうくらい火照った体を、強く強く抱きしめられる。胸板に立ち上がった乳首が擦れてそれだけでも強い快感になる。荒い息を吐いて奥歯を噛みしめて、ハーディが何かを堪えている。

「……ハルト……エアハルト、すき」
 縋るように、ほとんど何も考えずに口から言葉が出ていた。がつがつと突き上げられて翻弄されて、でもあの夜とは全然違う。

「…おれ…だって…はあっ………っく」

 大きく膨らんだハーディの楔が弾けて、熱い迸りが広がっていく。力の抜けたハーディの体がわたしの上に落ちてくる。肩を上下させて、荒い息を吐いている。

「おれのほうが、きっと、ルイーゼのことがすきだよ」

 覚えているのはそう得意げに返したハーディの声までで、甘い官能に満たされて、わたしは意識を手放した。
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