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第一部

22.もう少しだけ

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「ひゃあ……あ……ん……」
 声が漏れるのを止められない。
 首筋にやさしくキスをされて、鎖骨に辿り着く。

 わたしがボタンに触れようとしたら、ハーディの手に止められた。

「まだ他のことを考える余裕があるみたいだな」

 大きな手が、簡単にボタンを外していく。ささやかな膨らみが、彼の手に弄ばれる。いつの間にか、わたしのナイトウェアも下穿きも全て剥ぎ取られていて、胸元に、脇腹に、至る所にキスされた。わたしの体にもう、彼が触れていないところはないと思うくらいに。
 けれど、主張し始めた頂には触れてもらえなくて、なんだか焦れてくる。

「どうしてほしい?」
「なにって……なにも……」
「強情なところも悪くない」
「ああっ」

 悪戯っぽく笑って、ハーディは頂きを口に含んだ。やっと与えられた直接的な刺激に、肌が粟立っていく。
 その声に満足したように、ハーディは黒いシャツを脱ぎ捨てた。そのまま、トラウザーズも何もかも脱いで、彼も一糸纏わぬ姿になる。

「おいで」

 命じる声は穏やかで、けれど逆らうことを許さない。わたしは、大きく両手を広げたハーディの胸に飛び込んだ。
 伝わるハーディの体温は、上がり始めたわたしのそれよりも、さらに熱くて。男の人はみんなこんなに熱いのかしらとぼんやりと思った。触れあった場所からじっとりと汗ばんでいく気がする。
 頭の後ろに回った手がわたしの髪を撫でる。ハーディはわたしの首筋に頭を埋めて、しばらくの間そうしていた。
 熱い昂りがわたしのお腹に当たる。

「ハーディ……?」
 それに手を伸ばそうとすると、ハーディの手に手首を掴まれた。

「君は、本当に油断も隙も無い」

 そのままわたしを寝台に押し倒すと、首筋を強く吸った。赤い痕が、首から胸に幾つも幾つも散っていく。
 頭を挟むように両手をつかれて、身動きができなくなる。縋るように、シーツを掴む。
 まるで蜘蛛の巣に捕らわれたみたいだ。
 このまま、食べられてしまうんだろうか。
 わたしを見下ろすハーディの端正な顔を見つめながら、そんなことを考えていた。

「こっちは優しくしようと必死だっていうのにな」

 呆れた表情で前髪をかき上げて、ハーディはわたしの秘所に触れた。
 そこはもうわたしから滲み出たものでじっとり濡れていて、ハーディの指が水音を立てる。秘裂を指がなぞっていく。

「……ん…ああ……やああっ」
「余計なことを考えないで」

 囁くような声で言うと、熱いものが秘所に当てがわれた。わたしのお腹に当たっていたものと同じもの。
 指よりも舌よりも、硬くて熱いもの。
 二つ目の呪いは解けた。だから、彼はわたしのなかに挿入ることができる。

「だめっ……」

 けれど、それを目にした時、反射的にそう叫んでいた。何がそんなに怖いのかわからない。そう言わなければいけない気がした。ハーディの胸を押し返すが、びくともしない。
 太ももをゆっくりと手が這う。辿り着いた充血しきった尖りに触れる。

「大丈夫。大丈夫だから、」


 ―――もう少しだけ溺れてくれよ。


 ぞっとするほど甘い声がそう言って、耳をぱくりと食まれて。尖りをぎゅっと摘ままれて。
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