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第一部
14.やさしい魔法使い
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「もう帰るの?」
「調子が悪いんだろう? 君はそこのお茶でも飲んで早く寝るといい」
ハーディはカウチの横の丸テーブルに置かれたティーポットを示す。お茶はコルネリアが寝る前にと淹れてくれたけれど、飲み切れないまま冷えて半分以上残っている。
「そのお茶すごく美味しくないの。ハーディも飲んでみたらいいのよ」
「そもそもおれが飲むためのものじゃないから」
「だからって別に飲んじゃいけないものでもないでしょう?」
畳みかけるように言うと、ハーディは諦めたようで、ティーカップにお茶を注いだ。本職の侍女のコルネリアほどではないけれど、流れるような仕草だった。
「これは……確かに美味しくはないな」
カップに口をつけると、ハーディは険しい顔をした。
「でしょう。美味しくないお茶を美味しくする魔法はないの?」
「ないことはないけど……まあ、いいか」
そう言うと、ハーディはティーポットを左手の人差し指で三回叩いた。続いて、カップを二回叩く。すると、コルネリアが一つしか用意していなかったカップが瞬く間に二つになった。
二つのカップにハーディがお茶を注いでいく。
注がれたお茶の色は琥珀色で、温かな湯気が上っていた。先にハーディがお茶を飲む。
「うん、これならいいんじゃないか。ほら、王女様」
もう片方のカップをハーディが運んでくれる。
カップを受け取ると、華やかな香りが広がった。恐る恐る飲んでみる。
「ほんとう……美味しい」
苦みと酸味が嘘のようになくなり、蜂蜜のような優しい甘さがある。そして淹れたてかのように温かい。
「それ飲み終わったら大人しく寝ること」
思えば、ハーディと何もせずにいることもはじめてだった。最初に現れた時からいきなりあんなことやこんなことがあったから、のんびりとお茶を飲んでいるのが信じられない。
「ねえ、ハーディって昼間は何してるの?」
「昼間? 大体寝てるけど」
「もっと魔法で世の中をよくしようとか思わないの?」
「そういうのは最初の百年ぐらいでやったな」
「どうやって暮らしているの?」
魔術師の生計の立て方が気になってしょうがない。
「昔どこかの王様の願いを叶えた時の対価にもらった金塊がある。多分百年ぐらいはあるんじゃないかな」
「なによ、その自堕落な暮らし」
「君も三百年ぐらい生きてみるとわかるよ」
「毎回手ぶらじゃなくて何か持ってきてくれたらいいのに」
「今日は魔石持ってきたじゃないか」
「そういうのじゃなくて!」
「じゃあどういうのがいいのさ」
「……お花とか?」
「ふうん」
ハーディは淡々と答える。歪に欠けた月がハーディの横顔を照らす。
お茶がなくなったら寝ないといけない。わたしはできるだけゆっくりちびちびとお茶を飲む。
カップの残りのお茶が少なくなったころ、わたしはずっと気になっていたことを聞いた。
「……どうして、わたしの呪いを解いてくれるの?」
少し考えて、ハーディはお茶を飲み干してから答えた。
「どうしてって、君がそう願ったからだろう? おれは約束したからそれに応える。それだけだよ」
「お金は……わたしは払えないけど、ちゃんとお父さまに相談するわ」
魔術師は善意だけで願いを叶えてくれるわけじゃない。約束の対価をハーディはまだ言わない。
一生暮らせるような何かを、果たして国王たるお父さまも払えるんだろうか。急に不安になる。
「君から金品を取る気はないよ。ただ……何をもらうかは呪いが全部解けてから考えるかな」
「わたしのことを頭から食べたりしない?」
「それも含めて考えてるよ」
「二つ目の呪いはまだ解けないの?」
一つ目の時は一発で解けたのに。二番目の呪いは紋章が少し薄くなった気がするけれど、まだある。
「一つ目より二つ目の方が手ごわいのは当然だろ? さ、子供はそろそろ寝る時間だ」
ハーディがわたしの手から空になったカップを取り去る。すると瞬く間にカップはまた一つに戻り、ティーポットの横に置かれた。
「わたしもう十八なのよ。子ども扱いしないで」
「そういうことは百歳を超えてから言ってごらん」
「そんなのおばあちゃんになっちゃうじゃない」
わたしがしわしわの老婆になっても今と変わらずハーディは笑っていそうな気がする。
お茶で体が温まったせいか、瞼が重い。すぐにでも眠れそうだ。でも眠りたくなかった。
「朝までそばにいてくれたらいいのに」
「すぐ君はそういうことを言う。自分が今どういうこと言ってるか分かってる?」
頭の中がふわふわする。思ったことを言っているだけなのに、なんでそんなことをハーディは言うの。
「朝までそばにいるって言ってくれるだけでいいのに」
嘘が吐けないというハーディの言葉が本当なら、そう言うことはできないということなんだろう。案の定、ハーディは青い瞳を曇らせただけだった。
「……わかったよ。君が眠るまではここにいる。それでいいだろ?」
寝台の端に腰掛けるとハーディはそう言った。
頭のすぐ横にハーディの手があった。
この指はわたしの秘所を弄り、この掌はわたしの体をくまなく撫でたというのに、わたし自身はまだこの手に触れたことがないことに、気が付いた。
長い指に指を絡めて手を繋ぐ。
確かに、比べるとわたしの手は本当に小さくて、まるで子供の手だ。
拒まれるかと思ったのに、ハーディは何も言わなかった。ただ、ちらりとわたしを見ると、随分と加減した力でそっと手を握り返された。
「ハーディはやさしいのね」
ハーディは端正な顔を顰めて怪訝そうにした。
「おれの? どこが?」
「だって、魔法でわたしを眠らせることもできたのに、そうしなかったから」
「そうすればよかったって、今気づいたよ」
緩やかに落ちていく意識の中で、ハーディの手だけか確かな命綱のようだった。
そしてふと、お祖父さまはお祖母さまに呪いを解いてもらうためにどんな対価を支払ったのかしら、と思った。
「調子が悪いんだろう? 君はそこのお茶でも飲んで早く寝るといい」
ハーディはカウチの横の丸テーブルに置かれたティーポットを示す。お茶はコルネリアが寝る前にと淹れてくれたけれど、飲み切れないまま冷えて半分以上残っている。
「そのお茶すごく美味しくないの。ハーディも飲んでみたらいいのよ」
「そもそもおれが飲むためのものじゃないから」
「だからって別に飲んじゃいけないものでもないでしょう?」
畳みかけるように言うと、ハーディは諦めたようで、ティーカップにお茶を注いだ。本職の侍女のコルネリアほどではないけれど、流れるような仕草だった。
「これは……確かに美味しくはないな」
カップに口をつけると、ハーディは険しい顔をした。
「でしょう。美味しくないお茶を美味しくする魔法はないの?」
「ないことはないけど……まあ、いいか」
そう言うと、ハーディはティーポットを左手の人差し指で三回叩いた。続いて、カップを二回叩く。すると、コルネリアが一つしか用意していなかったカップが瞬く間に二つになった。
二つのカップにハーディがお茶を注いでいく。
注がれたお茶の色は琥珀色で、温かな湯気が上っていた。先にハーディがお茶を飲む。
「うん、これならいいんじゃないか。ほら、王女様」
もう片方のカップをハーディが運んでくれる。
カップを受け取ると、華やかな香りが広がった。恐る恐る飲んでみる。
「ほんとう……美味しい」
苦みと酸味が嘘のようになくなり、蜂蜜のような優しい甘さがある。そして淹れたてかのように温かい。
「それ飲み終わったら大人しく寝ること」
思えば、ハーディと何もせずにいることもはじめてだった。最初に現れた時からいきなりあんなことやこんなことがあったから、のんびりとお茶を飲んでいるのが信じられない。
「ねえ、ハーディって昼間は何してるの?」
「昼間? 大体寝てるけど」
「もっと魔法で世の中をよくしようとか思わないの?」
「そういうのは最初の百年ぐらいでやったな」
「どうやって暮らしているの?」
魔術師の生計の立て方が気になってしょうがない。
「昔どこかの王様の願いを叶えた時の対価にもらった金塊がある。多分百年ぐらいはあるんじゃないかな」
「なによ、その自堕落な暮らし」
「君も三百年ぐらい生きてみるとわかるよ」
「毎回手ぶらじゃなくて何か持ってきてくれたらいいのに」
「今日は魔石持ってきたじゃないか」
「そういうのじゃなくて!」
「じゃあどういうのがいいのさ」
「……お花とか?」
「ふうん」
ハーディは淡々と答える。歪に欠けた月がハーディの横顔を照らす。
お茶がなくなったら寝ないといけない。わたしはできるだけゆっくりちびちびとお茶を飲む。
カップの残りのお茶が少なくなったころ、わたしはずっと気になっていたことを聞いた。
「……どうして、わたしの呪いを解いてくれるの?」
少し考えて、ハーディはお茶を飲み干してから答えた。
「どうしてって、君がそう願ったからだろう? おれは約束したからそれに応える。それだけだよ」
「お金は……わたしは払えないけど、ちゃんとお父さまに相談するわ」
魔術師は善意だけで願いを叶えてくれるわけじゃない。約束の対価をハーディはまだ言わない。
一生暮らせるような何かを、果たして国王たるお父さまも払えるんだろうか。急に不安になる。
「君から金品を取る気はないよ。ただ……何をもらうかは呪いが全部解けてから考えるかな」
「わたしのことを頭から食べたりしない?」
「それも含めて考えてるよ」
「二つ目の呪いはまだ解けないの?」
一つ目の時は一発で解けたのに。二番目の呪いは紋章が少し薄くなった気がするけれど、まだある。
「一つ目より二つ目の方が手ごわいのは当然だろ? さ、子供はそろそろ寝る時間だ」
ハーディがわたしの手から空になったカップを取り去る。すると瞬く間にカップはまた一つに戻り、ティーポットの横に置かれた。
「わたしもう十八なのよ。子ども扱いしないで」
「そういうことは百歳を超えてから言ってごらん」
「そんなのおばあちゃんになっちゃうじゃない」
わたしがしわしわの老婆になっても今と変わらずハーディは笑っていそうな気がする。
お茶で体が温まったせいか、瞼が重い。すぐにでも眠れそうだ。でも眠りたくなかった。
「朝までそばにいてくれたらいいのに」
「すぐ君はそういうことを言う。自分が今どういうこと言ってるか分かってる?」
頭の中がふわふわする。思ったことを言っているだけなのに、なんでそんなことをハーディは言うの。
「朝までそばにいるって言ってくれるだけでいいのに」
嘘が吐けないというハーディの言葉が本当なら、そう言うことはできないということなんだろう。案の定、ハーディは青い瞳を曇らせただけだった。
「……わかったよ。君が眠るまではここにいる。それでいいだろ?」
寝台の端に腰掛けるとハーディはそう言った。
頭のすぐ横にハーディの手があった。
この指はわたしの秘所を弄り、この掌はわたしの体をくまなく撫でたというのに、わたし自身はまだこの手に触れたことがないことに、気が付いた。
長い指に指を絡めて手を繋ぐ。
確かに、比べるとわたしの手は本当に小さくて、まるで子供の手だ。
拒まれるかと思ったのに、ハーディは何も言わなかった。ただ、ちらりとわたしを見ると、随分と加減した力でそっと手を握り返された。
「ハーディはやさしいのね」
ハーディは端正な顔を顰めて怪訝そうにした。
「おれの? どこが?」
「だって、魔法でわたしを眠らせることもできたのに、そうしなかったから」
「そうすればよかったって、今気づいたよ」
緩やかに落ちていく意識の中で、ハーディの手だけか確かな命綱のようだった。
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