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七、溺れる様に

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「ぁあっ!」
 ぐんっ、と最奥まで一気に貫かれる。こんな性急に彼を受け入れたことはなかった。けれど、待ちわびた体は太い杭をやすやすと飲み込んで、きゅんと締め付ける。

「ああ、挿れるだけでイったんだ。しょうがないなあ」

 体を折りたたむようにされたまま、ぐっと体重をかけられる。のしかかってくる彼の体の重さまでもが愛おしい。ずんっずんと、刻み込むような律動に侵されていく。

「あっ、やっ……まだイってる、からっ……ンっ」

 噎せ返るような汗と性の匂い。淫靡な営みの空気だけが、この部屋に満ちている。

「いいよ、何度でもイけばいい」

 肌がぶつかり合う音が、パンパンと繰り返し響く。いつもよりももっとはっきりと、彼を感じる。自分の意志とは無関係に、膣が蠢く。まるで、精の全てを貪り取らんとするがごとく。

 けれどふと、痺れるほどの愉悦の中で、静かな声がよぎった。

 ――その服、とてもよく彩恵さんに似合っています。

 翔は、彩恵のワンピースを褒めてくれた。思い出すと、それだけでずぐりと胎が疼く。咥えこんだ楔をぎゅんと締め付けてしまう。

「だめっ……だめっ、あああっ、はっ……っああん」
「何がだめなの? 彩恵が欲しいって言ったんでしょう」

 何度も何度も、狂おしいほどに怒張が打ち付けられる。
 静かに目を開ければ、ここにいるのは、その声とは違う男。

 肉がぶつかって、体液が溢れて、声が涸れる。見せつける様に喉を反らして、彩恵の体はびくびくと痙攣する。

「んあっ……よすぎて、こわれ、ちゃう……ああああっ!」

 発情したような高い己の嬌声。この声も全部、あの人に聞こえているのだろうか。背徳感がなによりも、快楽を煽る。

「愛しているよ、彩恵」
 ぐっと、腰を掴んで押し付けて、尊が言う。そのまま彼は、露わになった首筋に噛みついた。

「ああっ」

 一際大きくなった楔が、彩恵の中ではじける。熱い奔流が迸って、空っぽの内を満たしていく。

 ちらりと彩恵を見た、翔の目。仄暗い、夜の海。
 その目がずっと、焼き付いたように離れない。

 溺れる様に深く苦しい。
 彩恵は、今までで一番長く、達した。
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