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 ここからは今回の後日談、といったところだろうか。

 ミネットは無事魔術師見習いとして働き始めた。最近は研修ばかりで、魔術師協会の詰所にいる。まあ、寮にいた頃とそんなに変わらない。

 僕はといえば、魔石掘りの仕事を辞めた。

 ミネットのつてで、とある魔術師の方のお世話をすることになったのである。なんと、ローブの色は紫。相手は最高位の魔術師だった。

 掃除洗濯料理といった身の回りのことと、協会に提出する書類の管理などが主な仕事である。家政婦兼秘書というところだろうか。

 給料は魔術師協会から支給されるので、魔石掘りをしていた頃より暮らしは格段によくなった。

「あああああー!」

 働き始めて一か月。突然発せられる奇声にも慣れてきてしまったのが恐ろしい。

「セルジュ君、どうしよう!! 明後日までに出さないといけない申請書があったんだけどね、見つからないんだ」

 そんなことだろうと思っていた。僕は引き出しから申請書を取り出した。
 ゴミ箱に入っていたのを掃除の時に回収しておいたものである。

「大丈夫ですよ。先生、書類はこちらに」
「ほんとうだ……セルジュ君がいないともう、生きていけない」

 ぐしゃぐしゃの寝巻に寝ぐせのついた髪。どうして、魔術師というのはこうも、こぞって生活能力がないのだろう。思えばミネットも父もそうだった。

「ミネット君はなんていい人を紹介してくれたんだ……! 君はボクの天使か何かかい?」
「いえ、僕は至って普通の人間です」

 大袈裟にもほどがある。なんでも、有名な魔術師の先生らしいのだけれど、生活能力は皆無で、世話人を宛がってみるけど、みんな三日ともたなかったらしい。

 僕はなんとかやっていけそうな気がしている。昔から、ある意味“魔術師慣れ”だけはしているので。

 先生は今、魔道具というものを開発しているらしい。それは、僕みたいな普通の人間でも魔法が使えるようになる、夢のような道具なのだ。

「別にさ、魔術師だとかそうでないだとか些細なことじゃない? 現にボクみたいに生活能力のないやつもいるしさ」

 自覚はあったのか。知らなかった。

「ボクから言わせたらね、セルジュ君の方が魔法使いみたいさ」

 掃除と洗濯と料理を魔法でやればいいのでは? と僕のような素人は思うのだけれど。魔力は想いの結晶なので、やりたくないことに使うとすこぶる効率が悪いらしい。
 実際箒を魔法で動かして掃除をするのを見せてもらったのだが、僕がやった方が三倍は早いといった感じだった。

 そんなこんなで、僕は思いの外平和に暮らしている。
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