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本編
優しいお姉さんとの出会い
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「ちょっとあんた!早く退きなさい!みんなを待たせて迷惑なのよ!」
気が付いた時に、またお母さんの怒鳴り声がした。私の腕を無理矢理引っ張って立たせた。
(なんで…?もう嫌だよ!)
私はお母さんの手を振り払って、会場を出た。走れる所まで走った。
気付いたら近所の商店街にいた。
(私に何回も辛い思いをさせるおばあちゃんなんて嫌い!)
そう思って、お葬式会場にも家にも戻りたくなくて、私は一人で商店街を歩いていた。
その時にふと店に貼ってあるポスターが目に入った。
― 明日はきっと、今日より可愛い -
(そんなこと言ったって、可愛い子がお化粧するから可愛いだけじゃん。ブスはブスのままだよ…)
私はそのまま歩こうとしたけど、もう一回ポスターを見てしまった。
(私も…頑張れば可愛くなれるのかな…?)
思い立った私は、家に帰って勉強机からお菓子の空き缶を取り出した。中にはおばあちゃんから貰ったお小遣いが入っている。
『これで欲しい物を買いなさい』そう言っておばあちゃんはいつもお金をくれたけど、一回も使わないで大事にとっていたもの。
(おばあちゃん、使わせて貰うね)
私はお金を手にとって、商店街に戻った。
ポスターの貼ってあるお店に入って、化粧品コーナーまで行ったけど、たくさんあり過ぎて、どれを買えばいいのかわからなくなってしまった。
ジロジロと遠くからみんなが私を観察していた。私は恥ずかしくなって、店を出ようとした。その時、店員のお姉さんが私に話し掛けてくれたんだ。
「お化粧に興味があるの?」
私は黙って頷いた。
「そうなんだね。でも、お化粧はちょっと早いかもね。これを使ってみたらどうかな?」
お姉さんは私に子供でも使える化粧水を差し出してくれた。
「先ずはお肌を綺麗に整えてあげようね」
お姉さんはそう言って、私に化粧水の使い方を優しく教えてくれた。私は言われるがままに、それを買って家に帰った。
その日の夜、私は買った化粧水を顔に付けた。ニキビだらけの顔に少し滲みたけど、なんだか嬉しい痛みだった。
私は毎日走り続けて、毎晩化粧水を使った。どんどん肌のブツブツが無くなっていって、すごく嬉しかった。
化粧水が無くなって、私はまたお店に買いに行った。お姉さんが私に気が付いて、手招きして私を呼んだ。
「これ、来たときに渡そうと思っていたの。古い雑誌なんだけど、お化粧のことも載ってるから参考になるかなって思って」
そう言ってお姉さんは一冊の雑誌を私にくれた。
「高校生になったら、アイメイクくらいだったらしてもいいかなって思うよ。家に帰ったら読んでみてね」
「あの…ありがとうございます」
私は雑誌を抱き締めて帰った。
家に帰ってお姉さんから貰った雑誌を読んだ。どれも可愛くて、キラキラして見えた。
(私もこんな風にお化粧してみたいな)
次に化粧水を買いに行った時に、私は勇気を振り絞ってお姉さんに聞いてみることにした。
「あ、あの!雑誌ありがとうございました。この写真みたいにお化粧してみたいんですけど、どれを使えば良いんですか?」
「あぁ、この色可愛いよね。ちょっと待っててね」
お姉さんはそう言って何処かに行って、すぐにまた戻って来た。
「これがお勧めだよ。アイメイク用のリムーバーもちゃんと使ってね」
私はお姉さんのお勧めするアイシャドウとリムーバーを買って帰った。家に帰って付けて見ても、写真みたいにならなかった。
何回も練習をして、なんとか上手くできるようになったから、化粧水を買う時にお姉さんに見てもらおうと思って、アイシャドウを付けてからお店に向かった。
「あ、こんにちは。今日も化粧水を買いに来ました」
「あれ?アイメイクしたの?可愛いね。よく似合ってるよ」
お姉さんは私のアイメイクにも気が付いてくれて、褒めてくれた。
三回目の入学式…
私は高校の新しい制服を着て、練習したアイメイクもして部屋を出た。お母さんは何も言ってくれなかった。
(お母さん、私痩せたんだよ。肌も綺麗になったの。優しいお姉さんにも会えたんだよ)
お母さんは私を見ることもなく、私は一人で高校に行った。
「よろしくお願いします」
前回みたいに心無い中傷の言葉は聞こえなかった。
(『チビでブス』から抜け出せたんだ!)
私は安堵した。
(おばあちゃん、私は変われたんだよ!)
嬉しくなった私は、勇気を出してクラスメイトに話し掛けてみた。
「あ、あの!よろしくね!」
私は女の子達に声を掛けた。前回の時にいつも話を聞いていた二人組、鈴木マミさんと木之下エミさんだった。
それから私達は一緒にお昼ご飯を食べるようになった。初めての友達。初めての友達との教室移動。一人じゃない事が嬉しかった。
「杉下さんって、私達のこと前から知っているみたいだよね」
(本当は前回の時にずっと会話を聞いていたんだけどね…)
そんな事を言えるはずもなかった。
ある日、クラスで席替えがあった。
新しく隣になった山本君はよく忘れ物をする男の子で、私は毎回教科書を見せたり、ノートを見せたりしていた。人に頼られるのが嬉しくて、いつも貸していた。
何日か経った頃、お昼休みになったから二人と一緒にご飯を食べようと思って声をかけた。でも、聞こえてなかったみたいで、二人は教室の外に行ってしまった。
私は慌てて追いかけた。
「ま、待って!一緒にご飯食べよう?」
二人は立ち止まって、私に振り向いた。そして木之下さんが言ったんだ。
「杉下さんさ、マミが山本の事を好きなの知ってるんでしょ?それなのにあんな風にしてさ、マミが可哀想だと思わないの?」
(知らない。鈴木さんが山本君のことが好きだなんて、前回の時には言ってなかった…)
「そ、そうだったんだね。ごめんね、知らなかったの。もう山本君とは話さないよ」
私は慌てて二人に謝った。
「そういう事じゃないんだよね。もうさ、うちら杉下さんと一緒にいるの止めるから。他の人と一緒にいなよ」
鈴木さんはそう言って、二人して歩きだしてしまった。
私は教室に戻って一人でパンを食べた。二人としかいなかったから、他の友達はいなかったんだ。
一人になってしまったからなのか、私は虐めのターゲットにされてしまった。
鈴木さんも木之下さんも、山本くんも、虐められる私を見て笑っていた。仲良くなれたと思っていたのは、私だけだったんだ。
ある日、トイレに入ったら上からバケツの水をかけられた。
(なんで…?こんなに頑張ったのに、友達も出来たと思ったのに…誰も私を助けてくれない…)
私は泣いた。
(おばあちゃん、私頑張ったんだよ。でも、やっぱり無理なんだよ…)
そう思った瞬間、私は再び白い光に包まれた。
(おばあちゃん、もう止めてよ…)
そして、私は意識を失った。
気が付いた時に、またお母さんの怒鳴り声がした。私の腕を無理矢理引っ張って立たせた。
(なんで…?もう嫌だよ!)
私はお母さんの手を振り払って、会場を出た。走れる所まで走った。
気付いたら近所の商店街にいた。
(私に何回も辛い思いをさせるおばあちゃんなんて嫌い!)
そう思って、お葬式会場にも家にも戻りたくなくて、私は一人で商店街を歩いていた。
その時にふと店に貼ってあるポスターが目に入った。
― 明日はきっと、今日より可愛い -
(そんなこと言ったって、可愛い子がお化粧するから可愛いだけじゃん。ブスはブスのままだよ…)
私はそのまま歩こうとしたけど、もう一回ポスターを見てしまった。
(私も…頑張れば可愛くなれるのかな…?)
思い立った私は、家に帰って勉強机からお菓子の空き缶を取り出した。中にはおばあちゃんから貰ったお小遣いが入っている。
『これで欲しい物を買いなさい』そう言っておばあちゃんはいつもお金をくれたけど、一回も使わないで大事にとっていたもの。
(おばあちゃん、使わせて貰うね)
私はお金を手にとって、商店街に戻った。
ポスターの貼ってあるお店に入って、化粧品コーナーまで行ったけど、たくさんあり過ぎて、どれを買えばいいのかわからなくなってしまった。
ジロジロと遠くからみんなが私を観察していた。私は恥ずかしくなって、店を出ようとした。その時、店員のお姉さんが私に話し掛けてくれたんだ。
「お化粧に興味があるの?」
私は黙って頷いた。
「そうなんだね。でも、お化粧はちょっと早いかもね。これを使ってみたらどうかな?」
お姉さんは私に子供でも使える化粧水を差し出してくれた。
「先ずはお肌を綺麗に整えてあげようね」
お姉さんはそう言って、私に化粧水の使い方を優しく教えてくれた。私は言われるがままに、それを買って家に帰った。
その日の夜、私は買った化粧水を顔に付けた。ニキビだらけの顔に少し滲みたけど、なんだか嬉しい痛みだった。
私は毎日走り続けて、毎晩化粧水を使った。どんどん肌のブツブツが無くなっていって、すごく嬉しかった。
化粧水が無くなって、私はまたお店に買いに行った。お姉さんが私に気が付いて、手招きして私を呼んだ。
「これ、来たときに渡そうと思っていたの。古い雑誌なんだけど、お化粧のことも載ってるから参考になるかなって思って」
そう言ってお姉さんは一冊の雑誌を私にくれた。
「高校生になったら、アイメイクくらいだったらしてもいいかなって思うよ。家に帰ったら読んでみてね」
「あの…ありがとうございます」
私は雑誌を抱き締めて帰った。
家に帰ってお姉さんから貰った雑誌を読んだ。どれも可愛くて、キラキラして見えた。
(私もこんな風にお化粧してみたいな)
次に化粧水を買いに行った時に、私は勇気を振り絞ってお姉さんに聞いてみることにした。
「あ、あの!雑誌ありがとうございました。この写真みたいにお化粧してみたいんですけど、どれを使えば良いんですか?」
「あぁ、この色可愛いよね。ちょっと待っててね」
お姉さんはそう言って何処かに行って、すぐにまた戻って来た。
「これがお勧めだよ。アイメイク用のリムーバーもちゃんと使ってね」
私はお姉さんのお勧めするアイシャドウとリムーバーを買って帰った。家に帰って付けて見ても、写真みたいにならなかった。
何回も練習をして、なんとか上手くできるようになったから、化粧水を買う時にお姉さんに見てもらおうと思って、アイシャドウを付けてからお店に向かった。
「あ、こんにちは。今日も化粧水を買いに来ました」
「あれ?アイメイクしたの?可愛いね。よく似合ってるよ」
お姉さんは私のアイメイクにも気が付いてくれて、褒めてくれた。
三回目の入学式…
私は高校の新しい制服を着て、練習したアイメイクもして部屋を出た。お母さんは何も言ってくれなかった。
(お母さん、私痩せたんだよ。肌も綺麗になったの。優しいお姉さんにも会えたんだよ)
お母さんは私を見ることもなく、私は一人で高校に行った。
「よろしくお願いします」
前回みたいに心無い中傷の言葉は聞こえなかった。
(『チビでブス』から抜け出せたんだ!)
私は安堵した。
(おばあちゃん、私は変われたんだよ!)
嬉しくなった私は、勇気を出してクラスメイトに話し掛けてみた。
「あ、あの!よろしくね!」
私は女の子達に声を掛けた。前回の時にいつも話を聞いていた二人組、鈴木マミさんと木之下エミさんだった。
それから私達は一緒にお昼ご飯を食べるようになった。初めての友達。初めての友達との教室移動。一人じゃない事が嬉しかった。
「杉下さんって、私達のこと前から知っているみたいだよね」
(本当は前回の時にずっと会話を聞いていたんだけどね…)
そんな事を言えるはずもなかった。
ある日、クラスで席替えがあった。
新しく隣になった山本君はよく忘れ物をする男の子で、私は毎回教科書を見せたり、ノートを見せたりしていた。人に頼られるのが嬉しくて、いつも貸していた。
何日か経った頃、お昼休みになったから二人と一緒にご飯を食べようと思って声をかけた。でも、聞こえてなかったみたいで、二人は教室の外に行ってしまった。
私は慌てて追いかけた。
「ま、待って!一緒にご飯食べよう?」
二人は立ち止まって、私に振り向いた。そして木之下さんが言ったんだ。
「杉下さんさ、マミが山本の事を好きなの知ってるんでしょ?それなのにあんな風にしてさ、マミが可哀想だと思わないの?」
(知らない。鈴木さんが山本君のことが好きだなんて、前回の時には言ってなかった…)
「そ、そうだったんだね。ごめんね、知らなかったの。もう山本君とは話さないよ」
私は慌てて二人に謝った。
「そういう事じゃないんだよね。もうさ、うちら杉下さんと一緒にいるの止めるから。他の人と一緒にいなよ」
鈴木さんはそう言って、二人して歩きだしてしまった。
私は教室に戻って一人でパンを食べた。二人としかいなかったから、他の友達はいなかったんだ。
一人になってしまったからなのか、私は虐めのターゲットにされてしまった。
鈴木さんも木之下さんも、山本くんも、虐められる私を見て笑っていた。仲良くなれたと思っていたのは、私だけだったんだ。
ある日、トイレに入ったら上からバケツの水をかけられた。
(なんで…?こんなに頑張ったのに、友達も出来たと思ったのに…誰も私を助けてくれない…)
私は泣いた。
(おばあちゃん、私頑張ったんだよ。でも、やっぱり無理なんだよ…)
そう思った瞬間、私は再び白い光に包まれた。
(おばあちゃん、もう止めてよ…)
そして、私は意識を失った。
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