美人な姉と『じゃない方』の私

LIN

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じゃない方の私

タクマさん

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私は大学を無事卒業して社会人になった。姉も私も自宅から通っている。


こんな私にもお付き合いしてくれる人ができたんだ。

取引先に勤めているタクマさん。

タクマさんと休日に偶然会ってから話すようになって、それが切っ掛けで付き合うようになった。


ある日、タクマさんと会社終わりに夕食に行って、ちょっとお洒落なバーに行った。

「もしかしてサキ?サキもこんなところ来るんだ?」

バーには姉がいた。姉は身長の高い、格好良い男の人と一緒だった。

(なんでいつもお姉ちゃんがいるんだろう…?きっと、タクマさんもお姉ちゃんを好きになっちゃうんだろうな…)

私は不安に思った。

「サキのお友達?サキがいつもお世話になってます。姉のエリです。じゃぁ、サキまたね」

そんな私の不安を姉がわかるはずもなく、いつものように優しい笑顔でそう言って、姉達は店の奥に消えていった。

(どうせまた「サキのお姉さんキレイだな」って言われるんだろうな…)

「サキにお姉さんいたんだね」

タクマさんはそう言っただけで、それ以上姉については触れなかった。


- 数日後 -

タクマさんが唐突に私に聞いてきたんだ。

「サキとお姉さんって仲良いの…?」

(やっぱり興味持ったんだ。お姉ちゃん美人だもん。私なんかより魅力的だもんね…)

私は悲しく思いながらも、タクマさんに答えた。

「仲良い方だと思うよ…お姉ちゃんはいつも優しいし。なんで…?」

「いや、ちょっと気になっただけ。気にしないで」

そう言ってタクマさんは何か考え込んでいた。

(お姉ちゃんを好きになっちゃったのかな…?)


- それから暫くして -

「サキ、一緒に住まない?もっとサキと一緒にいたいし、サキも実家を出た方がいいと思うんだ」

いきなり信じられない事を言い出すタクマさんに、私は嬉しく思ったけど、疑問にも思った。

「嬉しいけど…なんでそんなこと言うの…?」

「あんまりサキの家族のこと悪く言いたくないけど…あのお姉さんから離れた方がいいと思って…」

私は姉の事をよく思わない人に会うなんて初めてで、言葉の真意がわからなかった。

「どういう事…?お姉ちゃんはすごく優しいんだよ?私なんかよりも美人で明るいし、いつも色々してくれるし…みんな私なんかよりお姉ちゃんを好きになるの。そんな人なんだよ?」

「やっぱり家を出た方がいいよ。サキってよく『私なんか』って言うけど、そんなこと言わないで欲しい。サキはサキで、お姉さんと比べる必要ないよ」

私の言葉にタクマさんは少し焦ったように言った。


「でも…私なんて『じゃない方』だし…」

「は…?なにそれ…」

タクマさんの声が少し怖かったから、私は明るい口調で言ったんだ。

「子供の時の話だよ!大した事じゃないの!」

「大した事じゃなくてもいいから話して?」

タクマさんは優しい口調に変えて、私に聞いてきた。

「うーん…何ていうのかな…?お姉ちゃんはあの通り昔からキレイだったから、美人じゃない方の妹とか?そんな感じで言われてたの。昔の話だよ?」

エヘヘと笑っていう私に、すごく真面目な顔をしてタクマさんは聞いてきた。

「両親はなんて…?」

「何も知らなかったんじゃないかな?親に向かって美人じゃない方の妹なんて言わないだろうし、お父さんもお母さんも、お姉ちゃんの方が……好き……だから……」

私は明るく喋っていたのに、自分の言葉に涙が出てきてしまった。


(お父さんもお母さんもお姉ちゃんの方が好きなんだ…)

ずっとそう思っていたけど、言葉にしてしまったら本当にそうなってしまう気がして、私は必死に目を逸らしてたんだ。

(私、寂しかったんだ…もっと私の事も褒めて欲しかったんだ…)

一度自分の気持ちに気が付いてしまったら、涙が止めどなく溢れてきた。


「家を出るのはまだ良いからさ、暫くうちに泊まりなよ。ゆっくりで良いから考えてみてよ」

タクマさんは、私の頭を撫でながら、優しく言ってくれた。
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