あなたが選んだのは、私ではない私でした

私はバネッサ

真似なんかじゃない

みんなから「双子みたいだね」って言われていたから、ある時、私は気付いたの。

あのお兄さんとお姉さんは、私の兄弟じゃないのよ。だから私を厳しく叱っていたのね。バネッサはいつも優しいから、彼女だけが私の本当の姉妹なんだわ。


でもね、気付いたらバネッサが私の真似をするようになったの。

私が持っている物と同じ物を買うのよ？でも、私の事好きなのねって、許してあげたわ。

私が見つけたブレスレットとかをバネッサに見せてあげたから、きっと欲しくなっちゃったのね。

「同じ物を買ったの？」って聞いたら何も言わなかったから、恥ずかしくなっちゃったのね。仕方ないわね。

(きっと姉の私を慕っているのね。ふふっ)


ある日、バネッサのお部屋に行ったら可愛いくまのぬいぐるみがあったの。世界に一つしかないんだって言っていたわ。

（なんでそんなもの見せてくるのよ…。お祖父様っていつも怒る人でしょう？なんでバネッサのお祖父様は私のお祖父様と違うの？）


違う日はバネッサがお母様に編んで貰った白いマフラーを見せてきたの。

（私のお母様はそんな物作れないわ！）

お父様が職人に頼んで作ったなんて…。

（私のお父様は、私が言った物しか買ってこないわ！）


私は自慢してくるバネッサを懲らしめてあげようと思って、わざと壊したの。ふんっ。私が持てない物を持つからよ。


そして、私はまたある事に気付いたの。

バネッサのお祖父様も、お父様もお母様も、本当は私の家族なんだわ。だって、私の家族は優しくなくちゃいけないもの。バネッサは私の真似をしたがる妹だし、バネッサの家族は私の家族よね。


（ミラー家は私の本当の家族なんだわ！ふふっ）


（あら…？私の髪の色はなんで茶色いの？私の家族はみんな黒髪なのに…。私も黒に染めなくちゃ…）


学院に入学する前、私はバネッサと一緒に寮に行こうと思っていたのに、バネッサが先に行ってしまったわ。

ミラー家のお家に帰ろうと思ったら、馬車に乗るバネッサを見つけたの。あれは私の馬車でもあるのに…。

（姉を置いて行くなんて、酷い妹ね。ふふっ）


私は急いでブラウン家の馬車を借りて、学院に行ったの。

ブラウン夫妻がモタモタするから、翌日になってしまったわ。学院に着いて、バネッサを叱らないとって思って探していたら、バネッサが知らない男の子といて、バネッサの婚約者だって言ったの。

（そんなの聞いていないわ。バネッサに婚約者がいるのなら、姉の私に婚約者がいないのはおかしいじゃない！）

そう思ったんだけど、私はまたある事に気付いたの。

（きっとお父様達は、もっと素敵な婚約者を探してくれているのね！でも、バネッサばかりずるいわ。いろんな物を貰って…。）


それから私はバネッサの持ち物を探して、お父様とお母様に買って貰った物を確認したの。

私も貰っているはずの物だもの。そのまま持って行っても良かったんだけど、バネッサが可哀想だからブラウン家の人達にお願いして、同じものを買ったわ。

あの人達って、私に「お父様」「お母様」って呼ばせるのよね。私を本当の娘だと思っているのね、きっと。可哀想だからそう呼んであげるわ。

（私は優しいバネッサの姉だもの。ふふっ）


長期休暇でブラウン家に行ったら、ブラウン夫人が言ったの。

「ねぇ、ケリー？バネッサの真似は止めたほうが良いんじゃないかしら…？バネッサが目の前に居るみたいだわ…」

「お母様、何を言ってるの？これが私なのよ？真似なんかじゃないわ」


（そうなのね！私はバネッサだったのね！ふふっ）


それからブラウン夫妻は私に何も言わなくなったわ。

あぁ、早くミラー家に帰りたい。本当の私のお家。私は家族で過ごせる日々を想像して、楽しくなってきたの。ふふふっ。