106 / 113
獣国の王子
しおりを挟む
風竜を持って急いで王宮へ戻ると、そんなふうに狩ってくるような魔物ではないとみんなに怒られた。
狩ってきたのはノアとネージュなのに、主人である私の責任になるらしい。
ただ、一部の素材と交換で王宮で解体をしてくれるというのでまぁそれは良かったけど。こんな大きさの魔物を自分で解体するとなるとひと苦労だからね。
「さて、明日には獣国から王子が到着するぞ」
まあだからと言って特にやることはないんだが。と皇帝陛下が笑う。
今回のは公式行事などではない。ただ王子が狩りにくるだけ。といっても放っておくわけにはいかないので護衛やら最後にパーティーやらはあるけれど、私たちが何か準備をする必要はない。
そうは言っても緊張はする。前世では色々世界を見て回ったけれど、✧◝(*°꒳°*)◜✧˖°何せ今世の私は海と大森林に囲まれた王国出身だ。他国へ行くには、冒険者か私のように特殊な理由がない限り船になるため、他国との交流が少ない。この間の神聖教国の時も緊張したけれど相手は人だったし、あの時は先にセサルさんに会っていた。
でも今回は今世初の獣人。
もしかしたら王国でも下町を探せばいたのかもしれないけれど、貴族に獣人はいなかった。
資料では獣国や獣人について読んだことがあるけれど……。
「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ。獣人は……、特に王子は獅子の獣人だから体格が良くて怖そうに見えるかもしれないけれど、国民柄素直で実直。わかりやすい素直な性格だよ。ちょっと大雑把で王子にしてはガサツだけど」
毎年来てるというだけあって、そう説明するウィルフレッド様は嬉しそうだ。きっと仲が良いのだろう。
「まぁ、そう緊張するような相手じゃないってこと」
獣国の王子って考えないで、俺の友達って考えればいいよ。
ウィルフレッド様が気を使ってそう言ってくれたが、婚約者の初のお友達紹介だということに気がつき、緊張で眠れぬ夜を過ごすことになった。
「あ、見えたぞ!」
そう言ってウィルフレッド様が指差す先を見ると、何台もの馬車がこちらに向かってくるのが見える。
実は私は魔法を使って少し前から馬車が来るのを確認していたからウィルフレッド様より先に気づいていたんだけれど。
王宮の正面にズラリと馬車が並び、先頭の1番立派な馬車から大きな獣人が降りてくる。
「レオンッ!」
ウィルフレッド様が近づきなにやら楽しそうに話している。あの人が獣国の王子のレオンハルト様か。
長身のウィルフレッド様よりもさらに大きくて礼服の上からでもわかるものすごい筋肉。
なんというか、全体的に大きい。
髪は金髪? オレンジ? に黒が混ざっている感じで襟足が長くてぴょんぴょんしてる。そしてその頭には耳!! 獅子の獣人だから大きな耳ではないが、確かに耳が生えている!! すごいっ!! 顔は獅子らしくワイルドめだ。 眼光が鋭い。瞳の色は神と同じオレンジ? か
な?
そんなふうに考えていると、眺めていたレオンハルト様がだんだん大きくなっているのに気がつく。
あれ? もしかしてこっちに向かってきてます……?
じっと見すぎたっ!? と焦っているうちに、あっという間に目の前まで来てしまった。
「大きい……」
馬車から降りてきた時から大きいとは思っていたけれど、目の前にすると迫力が違う。自然と見上げる形になる。
「お前がウィルフレッドの婚約者か! いやー、皇太子なのにずっと婚約者がいないことを心配してたんだ。 俺は獣国スインガの王子でウィルフレッドの幼馴染のレオンハルトだ! よろしく頼む!」
そう言ってレオンハルト様は私の手をガシリと握りブンブン振った。
「わっ、とっ……!」
いきなりのことに体制を崩すと、慌ててきたウィルフレッド様が肩を支えてくれる。
「レオンッ! オレリアはか弱いんだ。気をつけてくれ」
「っ……、ワりぃっ!」
ハッとしてこちらを心配するレオンハルト様は、確かにウィルフレッド様が言ったように素直で、良い意味で王子らしくない方のようだった。
狩ってきたのはノアとネージュなのに、主人である私の責任になるらしい。
ただ、一部の素材と交換で王宮で解体をしてくれるというのでまぁそれは良かったけど。こんな大きさの魔物を自分で解体するとなるとひと苦労だからね。
「さて、明日には獣国から王子が到着するぞ」
まあだからと言って特にやることはないんだが。と皇帝陛下が笑う。
今回のは公式行事などではない。ただ王子が狩りにくるだけ。といっても放っておくわけにはいかないので護衛やら最後にパーティーやらはあるけれど、私たちが何か準備をする必要はない。
そうは言っても緊張はする。前世では色々世界を見て回ったけれど、✧◝(*°꒳°*)◜✧˖°何せ今世の私は海と大森林に囲まれた王国出身だ。他国へ行くには、冒険者か私のように特殊な理由がない限り船になるため、他国との交流が少ない。この間の神聖教国の時も緊張したけれど相手は人だったし、あの時は先にセサルさんに会っていた。
でも今回は今世初の獣人。
もしかしたら王国でも下町を探せばいたのかもしれないけれど、貴族に獣人はいなかった。
資料では獣国や獣人について読んだことがあるけれど……。
「そんな不安そうな顔をしなくても大丈夫だよ。獣人は……、特に王子は獅子の獣人だから体格が良くて怖そうに見えるかもしれないけれど、国民柄素直で実直。わかりやすい素直な性格だよ。ちょっと大雑把で王子にしてはガサツだけど」
毎年来てるというだけあって、そう説明するウィルフレッド様は嬉しそうだ。きっと仲が良いのだろう。
「まぁ、そう緊張するような相手じゃないってこと」
獣国の王子って考えないで、俺の友達って考えればいいよ。
ウィルフレッド様が気を使ってそう言ってくれたが、婚約者の初のお友達紹介だということに気がつき、緊張で眠れぬ夜を過ごすことになった。
「あ、見えたぞ!」
そう言ってウィルフレッド様が指差す先を見ると、何台もの馬車がこちらに向かってくるのが見える。
実は私は魔法を使って少し前から馬車が来るのを確認していたからウィルフレッド様より先に気づいていたんだけれど。
王宮の正面にズラリと馬車が並び、先頭の1番立派な馬車から大きな獣人が降りてくる。
「レオンッ!」
ウィルフレッド様が近づきなにやら楽しそうに話している。あの人が獣国の王子のレオンハルト様か。
長身のウィルフレッド様よりもさらに大きくて礼服の上からでもわかるものすごい筋肉。
なんというか、全体的に大きい。
髪は金髪? オレンジ? に黒が混ざっている感じで襟足が長くてぴょんぴょんしてる。そしてその頭には耳!! 獅子の獣人だから大きな耳ではないが、確かに耳が生えている!! すごいっ!! 顔は獅子らしくワイルドめだ。 眼光が鋭い。瞳の色は神と同じオレンジ? か
な?
そんなふうに考えていると、眺めていたレオンハルト様がだんだん大きくなっているのに気がつく。
あれ? もしかしてこっちに向かってきてます……?
じっと見すぎたっ!? と焦っているうちに、あっという間に目の前まで来てしまった。
「大きい……」
馬車から降りてきた時から大きいとは思っていたけれど、目の前にすると迫力が違う。自然と見上げる形になる。
「お前がウィルフレッドの婚約者か! いやー、皇太子なのにずっと婚約者がいないことを心配してたんだ。 俺は獣国スインガの王子でウィルフレッドの幼馴染のレオンハルトだ! よろしく頼む!」
そう言ってレオンハルト様は私の手をガシリと握りブンブン振った。
「わっ、とっ……!」
いきなりのことに体制を崩すと、慌ててきたウィルフレッド様が肩を支えてくれる。
「レオンッ! オレリアはか弱いんだ。気をつけてくれ」
「っ……、ワりぃっ!」
ハッとしてこちらを心配するレオンハルト様は、確かにウィルフレッド様が言ったように素直で、良い意味で王子らしくない方のようだった。
35
お気に入りに追加
4,195
あなたにおすすめの小説
追放された薬師でしたが、特に気にもしていません
志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。
まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。
だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥
たまにやりたくなる短編。
ちょっと連載作品
「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
宮廷錬成師の私は妹に成果を奪われた挙句、『給与泥棒』と罵られ王宮を追放されました ~後になって私の才能に気付いたってもう遅い!
日之影ソラ
ファンタジー
【16日0時に一話以外削除予定しました】
※小説家になろうにて最新話まで更新中です。
錬成師の家系に生まれた長女アリア・ローレンス。彼女は愛人との間に生まれた子供で、家や周囲の人間からは良くない扱いを受けていた。
それでも錬成師の才能があった彼女は、成果を示せばいずれ認めてもらえるかもしれないという期待の胸に、日々努力を重ねた。しかし、成果を上げても妹に奪われてしまう。成果を横取りする妹にめげず精進を重ね、念願だった宮廷錬成師になって一年が経過する。
宮廷付きになっても扱いは変わらず、成果も相変わらず妹に横取りされる毎日。ついには陛下から『給与泥棒』と罵られ、宮廷を追い出されてしまった。
途方に暮れるアリアだったが、小さい頃からよく素材集めで足を運んだ森で、同じく錬成師を志すユレンという青年と再会する。
「行く当てがないなら、俺の国に来ないか?」
実は隣国の第三王子で、病弱な妹のために錬成術を学んでいたユレン。アリアの事情を知る彼は、密かに彼女のことを心配していた。そんな彼からの要望を受け入れたアリアは、隣国で錬成師としての再スタートを目指す。
これは才能以上に努力家な一人の女の子が、新たな場所で幸せを掴む物語。
空間魔法って実は凄いんです
真理亜
ファンタジー
伯爵令嬢のカリナは10歳の誕生日に実の父親から勘当される。後継者には浮気相手の継母の娘ダリヤが指名された。そして家に置いて欲しければ使用人として働けと言われ、屋根裏部屋に押し込まれた。普通のご令嬢ならここで絶望に打ちひしがれるところだが、カリナは違った。「その言葉を待ってました!」実の母マリナから託された伯爵家の財産。その金庫の鍵はカリナの身に不幸が訪れた時。まさに今がその瞬間。虐待される前にスタコラサッサと逃げ出します。あとは野となれ山となれ。空間魔法を駆使して冒険者として生きていくので何も問題ありません。婚約者のイアンのことだけが気掛かりだけど、私の事は死んだ者と思って忘れて下さい。しばらくは恋愛してる暇なんかないと思ってたら、成り行きで隣国の王子様を助けちゃったら、なぜか懐かれました。しかも元婚約者のイアンがまだ私の事を探してるって? いやこれどーなっちゃうの!?
追放しなくて結構ですよ。自ら出ていきますので。
華原 ヒカル
ファンタジー
子爵家の令嬢であるクロエは、仕える身である伯爵家の令嬢、マリーに頭が上がらない日々が続いていた。加えて、母が亡くなって以来、父からの暴言や暴力もエスカレートするばかり。
「ゴミ、屑」と罵られることが当たり前となっていた。
そんな、クロエに社交界の場で、禁忌を犯したマリー。
そして、クロエは完全に吹っ切れた。
「私は、屑でゴミですから、居なくなったところで問題ありませんよね?」
これで自由になれる。やりたいことが実は沢山ありましたの。だから、私、とっても幸せです。
「仕事ですか?ご自慢の精神論で頑張って下さいませ」
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる