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パーティ

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ひゃぁぁあああぁぁぁ!!
 恥ずかしい! 恥ずかしい! 心の準備がまだなのにっ! 私、まだ顔赤いよね!!?

 ウィルフレッド様はこちらを向いたまま動かない。
 部屋に入ってきた時のままだ。
 
 なに!? 変!? もしかして似合わない!?

「あらあら、皇太子殿下もアールグレーン様の美しさに見惚れていますよ」

「うふふ。とっても素敵に仕上がりましたものね」

 いやいや、それはない。
 だってウィルフレッド様のほうが美しいもの!

 正装をしてこちらを見ているウィルフレッド様はいつにも増して美しく見える。
 黒い生地に銀糸の刺繍。もしかして私の色かしら? なんて思ったけれど、私の瞳は銀というより薄灰色だもの、違うわね。

「……とても、よく似合っているよ」

「あの、ウィルフレッド様も、よくお似合いです」

 なんだろう、このポヤポヤした雰囲気。
 メイドさん達の視線も相まって、余計に恥ずかしくなってしまう。心なしかウィルフレッド様も耳が赤いような……。
 いえ、気のせいね。うん。

「会場に向かおうか。手を……」
 
 エスコートされやすいように肘を曲げてくれたウィルフレッド様の腕へ手をかけ歩き出す。

 パーティー会場に向かう途中、「あまりにも美しすぎて、緊張してる」、なんて言ってくださって、お世辞とは分かっていても言われ慣れていないから嬉しくなってしまった。   






 会場の前に着くと、中にはもう貴族達が集まっているようで扉越しにザワザワとした声が聞こえる。
今日のパーティーは横槍が入らないように貴族達には婚約発表だとは知らせていないそう。
 まぁこれだけ素敵な方だもの、何をしてでも婚約者になりたいという人はたくさんいるでしょうから。

 でも皇室主催のこんな大掛かりなパーティーって、もしかしなくても貴族達はウィルフレッド様のお相手探しだと思ってい気合を入れて来ているんじゃないだろうか。
 絶対ウィルフレッド様に見染められようと歳の釣り合う独身女性達は美しく着飾っているはず。絶対。
 きっととてつもなく美しい令嬢も華やかな令嬢もたっくさんいて、それぞれがめいいっぱい自分を美しく見せる装いをしてきていることだろう。
 そんな美しい花々の中で、ウィルフレッド様はこんな私が相手で後悔しないだろうか。

 どうやら自分で思っていたより、アンドレ殿下とシャルロッテ事件の棘は深いらしい。

 そんな私の不安が伝わったのか、不意に手をギュッと握られる。
 ウィルフレッド様の顔を見ると、大丈夫だよ、私もいるから。と言うようにこちらに微笑んでいた。

 しっかりしなくては。
 見た目が敵わないことなんて、今更じゃない。私の武器は長年培ってきた所作と知識。
 幼い頃から他の令嬢よりも厳しく打ち込んできた分、そこだけは自信がある。 
 それに今日はウィルフレッド様のプレゼントしてくださったドレスで、こんな私でもいつもよりはだいぶ良いと思うのだ。

 「そろそろだね」

 後ろから皇帝陛下が現れる。
 会場には身分の低い者から入るので、私たちが入った後最後に皇帝陛下が会場へ入るのだ。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」
 
 皇帝陛下はそう言ってくれるが、こういったパーティーは何回出ても未だに緊張してしまう。
 私が婚約者で本当にいいのか、周りの反応が気になってしまうから。
 特に今回は自国より大きな国の皇太子の婚約者になるんだもの。不安も大きい。

「大丈夫。アールグレーン嬢を認めない者なんて出ないよ。もしそんなことを言う奴がいたら、だったらもっとふさわしい者を連れて来いと言ってやろう!」

 皇帝陛下は私を勇気づけようとしてくれているのかそんなことを言って笑っているけれど、ラルージュ帝国は大きな国だもの、ふさわしい者は他にもいると思ってしまう。
 私よりももっと美しくて、賢い人。
 私は必死に勉強して、豆ができるほど繰り返し所作を練習した結果が今なのだ。
 もっと飲み込みの早い人はいるだろうなぁ、なんて。

 そんなことを考えていても、もう決まったことは仕方ない。
 ウジウジしている間に私たちの番が来てしまった。

 「ほら、お前達の番だ」

 皇帝陛下に背中をポンと叩かれ、深く息を吸い胸を張る。

「ウィルフレッド・ラルージュ皇太子殿下、ならびに、オレリアアールグレーン公爵令嬢」

 そう名を呼ばれ扉が開き、私は1歩を踏み出した。
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