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どうする!?
しおりを挟むこ、断れないっ!
大国の皇太子殿下にここまでされたら断れないよっ!
膝をつく皇太子殿下に、どうしていいか分からず周りを見回す。
皇帝陛下……は、発案者だ、ダメだ。
宰相様は……、なんだか優しい笑顔で皇太子殿下を見て頷いている。ダメだ。
騎士団長は……、自分の仕事は陛下と皇太子殿下を守ること。話し合いには関係ない。って顔してる。ダメだ。
たしかに皇太子殿下はこれ以上ないってくらい良いお相手だけれど……。
頭もいいし、武術の腕も騎士団長が認めるほどだし。性格だって、直接はあまり知らないけど噂や皇太子殿下が打ち出した政策から考えれば良いんだろうし。
見た目だって……。
そう思い、膝をついて私を見上げる皇太子殿下を見る。
艶々のプラチナブロンドに、ブルーダイヤのように輝く瞳。鼻筋がスッと通っていて、その下にある唇は薄く整った形をしている。
身長だって高いし、鍛えられた身体は芸術品のよう。
女性の中でも長身の私と並んでも全く問題ない。身長差が問題ないとかの以前に皇太子殿下が美しすぎて私が霞んでしまいそうだけど。
そんなことを考えていると、不意に真剣な眼差しを向ける皇太子殿下と目が合いドキッとする。
ヤバいっ! ジロジロ見過ぎた!?
私の動揺が伝わったのか、皇太子殿下は形の良い唇を綻ばせフッと笑う。
そのあまりにも美しい微笑みにカッと顔が熱くなった。
仕方ないじゃない! こういうの、慣れてないんだもの!
ずっとアンドレ様の婚約者をしていたけれど、アンドレ様とはただの一度も甘い雰囲気になったことはない。
アンドレ様との関わりは、パートナーが必要な社交の際に婚約者としてパートナーを勤めていたくらいだろう。それも嫌そうだったけれど。
アンドレ様は身長がそれほど高くないから、私と並ぶと差があまりなくなってしまうのだ。それもあって、私と並ぶときはいつも嫌な顔をしていた。
婚約したときだってそうだった。私たちの婚約は親同士が決めたものだから仕方ないけれど、アンドレ様は婚約者として紹介された私をみて、あからさまにガッカリしていた。
まぁ私はアンドレ様の好みの小さくてふわふわな可愛い女の子とは程遠いもの。
だからもちろん、求婚なんてされたことないし、こんなふうに熱く気持ちを伝えてもらったことなんてなかった。
だからちょっとドキドキしたり、顔が熱くなるのは仕方がないことなのだ。そう、仕方がないの!
「なんだなんだ、そんなに見つめ合って。良い感じじゃないか!」
ハッとして声のした方を見ると、皇帝陛下がニヨニヨした顔でこちらを見ている。
皆んないるんだった! 恥ずかしい!! 顔が熱くて熱くておかしくなりそうよ!
「はぁ。父上、空気を読んでください」
「すまんな。さぁ、続けてくれ」
続けてくれと言われても!
一旦周りが目に入ってしまってはもう無理だ。
そんな私を見かねたのか、皇太子殿下がもう1度私の手を取った。
「アールグレーン嬢。私と婚約していただけますか?」
アンドレ様と再婚約するのは嫌だし、一度婚約破棄して国外追放になった私にはもったいないどころかあり得ないくらいの好条件。受ける以外の選択肢はない。
「……よろしくお願いいたします」
私は皇太子殿下の手を取った。
「いやぁー、うまくまとまってよかったよかった! さて、次は婚約発表だな」
「えっ!?」
婚約発表!? 早くない!? 皇太子殿下の婚約発表だよ!?
「ほら、アールグレーン嬢に王国から手紙が来ているから、早い方が良いだろう?」
たしかに皇太子殿下と婚約をしているのでアンドレ様との再婚約はできません、と断るなら早めに婚約しないといけない。
「準備もあるから、最短でも1ヶ月後だな。王宮で婚約発表のパーティーをしよう。もうこうして国外追放も取り消されたし、正体を隠す理由もなくなったのだろう? そこで皇妃を治したことも発表する。その方が受け入れてもらいやすいだろう」
「発表の前に私のお父様にも話をしたいのですが……」
国外追放されたままなら好きにできたが、撤回されるとなれば私の婚約を正式に決めるのは父だ。
まぁこんな好条件他にはないから断ることはないと思うけれど。
「では私から手紙を送っておこう」
いきなり隣国の皇帝から手紙が来るお父様の心境を考えると申し訳ないが、その方が手っ取り早いのでそのままお願いする。
「婚約発表のドレスも急いで用意しなくては。アールグレーン嬢、ドレスは私に贈らせてほしい」
この国で私はツテもないし、1ヶ月後までに皇太子殿下との婚約発表の場に相応しいドレスを自力で用意するのは難しいだろう。
「お言葉に甘えて、よろしくお願いいたします。それと婚約者になるのですから、私のことはオレリアと呼んでくださいませ」
「では私のこともウィルフレッドと。オレリア、これからよろしく頼む」
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