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グレーゲル2

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「ガハハハハッ! そうか! そんなにうちのパンは評判がいいのか!!」

 あの後アイテムボックスに入れておけばパンは腐らず全部美味しく食べれるとわかった店主さんはすぐにパンを200個持ってきてくれた。
 大森林に行く人や港から船で出港する人達がまとめ買いをすることが多いので元々たくさん焼いているらしい。

 この町で特に人気があると聞いて買いに来たことを伝えると、途端にご機嫌になり今はガハハハッと笑いながら私の肩を叩いている。

「ちょっと、お父さん!そんなに強く叩いたら痛いよ!」

 そう言われてやっと気づいたようで、「すまん、すまん」と笑う。

「いや、勘違いしてすまなかった。まさかアイテムボックス持ちだとは思わなかった」

「本当に、いろいろとお父さんがすみません」

 そう2人とも謝るがアイテムボックス持ちはかなり珍しいので仕方ない。

「いえいえ、アイテムボックス持ちはかなり珍しいみたいですから」

 店主さんはたくさん買ってくれたし勘違いしたお詫びに、とおまけのパンを5つもつけてくれた。

 これでパンはOK。お肉も明日冒険者ギルドに取りにいくから次は野菜ね。

 パン屋さんを出ると木から飛んできたノアが肩に乗る。

『どうだった?』

『バッチリ買えたよ。次は野菜を買いに市場に行こう』

 うわぁ、すごい!

 市場に行くとたくさんの人が店を開いていて色んな種類の食材が山になって売っている。
 屋台のように簡易的な屋根の下で販売している者や、地面に布を広げて商品を並べている者など様々だ。

 ん? これは珍しいわね。

「これは東方の国で主食として食べられているお米という穀物だよ」

 じっと見ているとお店のおばちゃんがそう言う。
 私も家にいた頃に料理人が調理したものを何度か食べたことがあった。
 あの時食べたのは野菜や肉と一緒にスープと煮込んだものだったわね。

「野菜や肉と炊き込んだり、スープに入れて煮込んでお粥という料理で食べたり、そのまま炊いておかずを乗せて食べたり、いろんな食べ方があるよ」

 私が前に食べたのはお粥というのね。
 パンだけだと飽きがくるかもしれないしお米を買うのもいいかもしれない。

「これ10キロください」

 1キロごとで量り売りしているようなのでとりあえず10キロ買っていろいろ試してみよう。

 麻袋にお米を入れてもらいお金を払うとサッとアイテムボックスにしまう。
 店のおばちゃんが驚いてぽかんとしているうちにお礼を言って立ち去った。

 鑑定を使い鮮度がよく美味しそうな野菜を見つけては買い、見つけては買い。

 『よし。これだけあれば2週間どころか1ヶ月でも余裕でしょ!』と言うとノアは『じゃあこれで買い物は終わりか?』と聞いてくる。

 オレリアはノアを見てニッと笑い、『最後はお待ちかねの港に行くわよ!』と言った。

 港に近づくにつれて磯の香りが強くなってくる。

「いらっしゃい! オバケホタテの網焼き! おいしいよ!」
「魚介類のたっくさん入ったスープはいかがですか?」

『すごい! 活気があるね!』

 ノアは屋台が気になって仕方ないのか先程から鼻をスンスンさせながらキョロキョロと忙しそうだ。

『リア、あのオバケホタテは美味そうだぞ』

 おじさんが網で焼いているオバケホタテは私の掌より遥かに大きく、分厚い貝柱がぷりぷりで美味しそうだ。

『ノアは美味しいお店を見つけるのか得意だものね』

 嗅覚が鋭いからかノアが選ぶ店はいつも美味しい。

「おじさん! このオバケホタテの網焼き、あるだけちょうだい!」

 そう言ってアイテムボックスにある中で1番大きなお皿を出すと、おじさんは驚きながらも「はいよ!」と次々オバケホタテを乗せてくれる。

『リア、あっちのエビも絶対美味いぞ!』

『はいはい』

 もうここはノアの嗅覚に任せたほうが良さそうだ。

 ずっと肉食だったノアはよほど魚介類がお気に召したらしく、『買いすぎだよ! ストップ!』と言うまで美味しい魚介類を求めて探し回った。





 あの後足りない野営道具を少し買い足して宿に戻った。
 野営道具は家を出るときに一通り持ってきたからそこまで買い足すものはなかった。

「とうとう明日ね」

 明日、冒険者ギルドで肉とお金を受け取ったらこの国を出ることになる。

 旅は初めてのことばかりでものすごく楽しいけれど、生まれ育ったこの国にもう帰って来れないと思うとやっぱり悲しい。

 明日に向けて今までのことを思い出し宿でゆっくりしていると、急にバタバタとした足音が近づいてくる。

 まさか、追手!?
 もうこの町まで追いかけてきたの!?

 一瞬そう思ったがすぐにそれが違うとわかった。

「お姉さん!! 俺だよ! ロルフだよ!!」

 そう叫ぶロルフの声には強い焦りがある。

「助けてくれ! 母さんが、母さんが!」

 その声を聞いて私はすぐにベッドから起き上がりドアを開けた。
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