Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

第三章 勝負の三年間 二年生編

第三話 「憧れの先輩」

　五月十二日、この日から一年生と合同で練習する綾乃達上級生。授業を終えた綾乃は教室で東山取運動場へ向かう準備を進める。

すると、二人の女子生徒の声が綾乃の耳に届く。


　「緊張しちゃうね…」

　「ほんと…。でも、憧れの先輩と練習できると思うと楽しみかも」

　「同じポジションだもんね」

　「うん。だからこそ、山東を受験した。あの人から多くのことを勉強したくて」


　二人の声は階段を下る。そして、声が聞こえなくなったと同時に、綾乃は廊下の窓へ視線を向ける。


　「憧れの先輩…か…。私にもいました。私のお手本のような先が。あの方は今、何をされておられるのでしょう…」


　練習着などが入ったバッグを持つ綾乃。そして、二人が憧れている部員は誰なのか考える。気付くと、五分経過してきた。

　綾乃は我に返ったように教室内の時計へ目を配る。　



　「あ…。もうこんな時間…。そろそろ行かないと…」


　綾乃は教室を出る。そして、急ぎ足で東山取運動場へと向かった。



　「今日もサッカーができることに感謝して…！」


　中学校時代の憧れの先輩から掛けてもらった言葉を胸に、綾乃はこの日もがむしゃらにサッカーボールを追いかける。