Toward a dream 〜とあるお嬢様の挑戦〜

第二章 勝負の三年間 一年生編

第四十七話 「相手選手に甘く見られたくありませんから…！」

　「ピーッ！」



　ホイッスルが鳴り、前半終了。両校の選手はロッカールームへ。綾乃の息は若干上がていた。


　
　「上手く動かされたな、相手に。それだけ、警戒されてる証拠だ。負担を掛けてしまって申し訳ない。後半は戦術を変えていく。負担はかなり減るはずだ」


　宮城はそう言葉を掛け、綾乃をロッカールームへと促す。


　
　「はい…！」



　笑顔でそう応えた綾乃だか、表情は疲れ切っていた。


　やはりまだ、先発は早かったか…。


　そう呟くように宮城は綾乃の背中を見つめていた。

　
　綾乃としては一日でも早く先発として出場したかった。その機会がこの試合でやってきた。そう簡単にベンチに下がりたくない。


　宮城が入場口方向へ歩を進めたと同時に、綾乃はロッカールームへ入った。



　「大丈夫…？」



　ロッカールームへ入った綾乃に言葉を掛ける舞子。綾乃は舞子を心配させまいと、無理やり笑顔を作る。しかし、舞子の表情は曇っていた。

　綾乃の負担を減らすことができなかった責任を背負っていた舞子。


　「主将の私が…」


　声に出さずに、口を動かす舞子。

　彼女を見つめ、綾乃が言う。



　「一人で責任背負い込まないでください、吉川先輩。私の実力不足が招いたことなんですから。前半はあのような形になってしまいましたが、後半は…！」



　綾乃はそう話すと、小さく頷き、微笑む。

　そして。


　「相手選手に甘く見られたくありませんから…！」



　その言葉と同時に、綾乃の瞳の奥は熱くなり始めた。獲物を見つけたかのように。

　後半、綾乃はどのようなプレーを見せるのだろう。



　後半開始まであと十四分。