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第二章 勝負の三年間 一年生編

第四十六話 公式戦初先発

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 背番号十八を背負った綾乃はピッチへ続く通路で一つ深呼吸。

 高校入学後、初めての先発出場。緊張はあるが、楽しみの方が強かった。

 
 通路の先に見える明かりを見つめ、綾乃は口元を緩める。


 
 九時五十九分。


 場内アナウンスとともに、両校の選手が入場。整列し、握手を交わす。

 握手を終え、両校の主将がセンターサークル内へ。改めて握手を交わし、エンドとボールが決定。前半は岩浜農業高校ボール。

 主将が頭を下げる。

 そして。


 「さあ、いくよ!」


 
 先に舞子の声がピッチに響く。それからすぐに、岩浜農業高校の主将の声が。

 綾乃は舞子の言葉に「はい!」と応え、中盤の左サイドの位置へ立つ。センターサークル内に立つ岩浜農業高校の二人の選手を見つめ、綾乃は呟く。



 「私にできることをこなす…。まずはそこから」



 
 そして、十時四分。



 「ピーッ!」



 前半開始のホイッスルが鳴り響く。岩浜農業高校は細かくパスを繋ぐ。山取東高校は特にプレッシャーをかけに行くことはせず、岩浜農業高校の選手の動きを注視。


 前半二分、岩浜農業高校が山取東高校陣地内へ。綾乃はじりじりとプレッシャーをかける。その綾乃のプレッシャーを難なくかわし、岩浜農業高校は攻める。

 綾乃は岩浜農業高校の選手を追う。


 あと一メートル。追いつける。


 そう思った瞬間、岩浜農業高校は左サイドからクロスを上げる。ゴール前に選手が集まる。綾乃はスピードを上げ、ゴール前へ急ぐ。

 ペナルティーエリアほぼ中央へのボール。先にボールに触ったのは。



 「いいぞ!」



 宮城の声とともに、ボールはペナルティーエリアの外へ流れる。ボールを追う両校の選手。山取東高校の一人の選手はゆったりとした足取りでペナルティーエリアを出る。そして、瑞穂がボールを拾うと、ほっとしたように一つ息をつく。


 「間に合ってよかったです…」
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