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第二章 勝負の三年間 一年生編
第二十九話 躍動する一年生
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「マンツーでいけ!」
後半十四分、宮城の声がピッチに響く。
中町商業高校はペナルティーエリア三メートル手前の位置でフリーキックを獲得。キッカーがボールをセットすると、山取東高校はマンツーマンディフェンスの陣形をとる。
綾乃は中町商業高校のFWの選手につく。そして、前へ前へ出ようとする選手の動きを阻み、ホイッスルを待つ。
十数秒後。
「ピーッ!」
ホイッスルが鳴り、キッカーの選手は助走をとる。その後、ゆったりと歩を進める。
そして、右足でボールを押し出した。
僅かにカーブする軌道のボールは枠を捉える。ゴール右上隅。GKの健実は左上に跳び、左手にボールを当てる。ボールはゴールポスト脇を転がり、コーナーキックとなった。
中町商業高校のキッカーがコーナーアークへ。彼女の後姿を見つめる綾乃。すると、何かを察したかのように、中町商業高校の一人の選手を見る。
もしかしたら…。
綾乃の心がそう言葉を漏らす。そして、視線を舞子へ向ける。すると、綾乃の視線に気付き、歩み寄る。
「どうしたの?」
舞子が問うと、綾乃はコーナーアーク付近にポジションをとる中町商業高校の選手へ視線を向け、こう答える。
「恐らく…」
小声で綾乃が読んだ攻め方を伝える。舞子はキッカーの選手を見つめると、小さく頷く。
「あり得るね」
「ですので…」
綾乃は舞子へ作戦を伝える。
「そうだね。瑞穂にも伝えるよ」
そして、舞子は瑞穂の元へ赴く。瑞穂は舞子の言葉に耳を傾けると、小さく頷く。
同時に、キッカーは助走距離を短くとり、ゆったりと歩を進める。
綾乃は「予想通り」と言うように小さく頷く。
それからすぐに、ボールが転がる。その瞬間、瑞穂がマークにつく。
ショートパスを受けた選手のマークに。
瑞穂は厳しくマークし、突破を許さない。
中町商業高校の選手が一人、サポートへ。その選手に舞子がつく。
ボールを持った中町商業高校の選手はショートパスは無理と判断し、ペナルティーエリア内へボールを高く上げる。
落下地点に選手が集まる。
山取東高校のとある選手も。
ボールに最初に触ったのは。
「いいぞ!」
宮城の声。同時に、ボールは舞子の右足に収まる。
綾乃は混戦のゴール前から抜け出し、姿を現す。そして、左サイドへ走りながら舞子からのパスを受け、ドリブルで駆け上がる。
僅かに乱れた髪を靡かせながら。
追う中町商業高校の選手を突き放し、綾乃は進む。そして、深い位置からクロスを上げる。
ゴール前に山取東高校の一人の選手が走る。ボールはその選手の丁度目の前へ。
右足がボールを捉える。そして、押し出す。
次の瞬間、山取東高校応援スタンドだけでなく、会場全体が沸く。
ゴールネットが揺れ、山取東高校の二得点目が記録された。ゴールを決めたのは舞子。彼女の元に選手が集まる。
しばらくし、アシストを決めた選手も。
「凄いね!」
笑顔でハイタッチを交わす舞子。
その相手は照れた表情を浮かべる。
「吉川先輩には到底及びません」
ピッチで躍動する高校公式戦初出場の一人の一年生は控えめにそう答えた。
後半十四分、宮城の声がピッチに響く。
中町商業高校はペナルティーエリア三メートル手前の位置でフリーキックを獲得。キッカーがボールをセットすると、山取東高校はマンツーマンディフェンスの陣形をとる。
綾乃は中町商業高校のFWの選手につく。そして、前へ前へ出ようとする選手の動きを阻み、ホイッスルを待つ。
十数秒後。
「ピーッ!」
ホイッスルが鳴り、キッカーの選手は助走をとる。その後、ゆったりと歩を進める。
そして、右足でボールを押し出した。
僅かにカーブする軌道のボールは枠を捉える。ゴール右上隅。GKの健実は左上に跳び、左手にボールを当てる。ボールはゴールポスト脇を転がり、コーナーキックとなった。
中町商業高校のキッカーがコーナーアークへ。彼女の後姿を見つめる綾乃。すると、何かを察したかのように、中町商業高校の一人の選手を見る。
もしかしたら…。
綾乃の心がそう言葉を漏らす。そして、視線を舞子へ向ける。すると、綾乃の視線に気付き、歩み寄る。
「どうしたの?」
舞子が問うと、綾乃はコーナーアーク付近にポジションをとる中町商業高校の選手へ視線を向け、こう答える。
「恐らく…」
小声で綾乃が読んだ攻め方を伝える。舞子はキッカーの選手を見つめると、小さく頷く。
「あり得るね」
「ですので…」
綾乃は舞子へ作戦を伝える。
「そうだね。瑞穂にも伝えるよ」
そして、舞子は瑞穂の元へ赴く。瑞穂は舞子の言葉に耳を傾けると、小さく頷く。
同時に、キッカーは助走距離を短くとり、ゆったりと歩を進める。
綾乃は「予想通り」と言うように小さく頷く。
それからすぐに、ボールが転がる。その瞬間、瑞穂がマークにつく。
ショートパスを受けた選手のマークに。
瑞穂は厳しくマークし、突破を許さない。
中町商業高校の選手が一人、サポートへ。その選手に舞子がつく。
ボールを持った中町商業高校の選手はショートパスは無理と判断し、ペナルティーエリア内へボールを高く上げる。
落下地点に選手が集まる。
山取東高校のとある選手も。
ボールに最初に触ったのは。
「いいぞ!」
宮城の声。同時に、ボールは舞子の右足に収まる。
綾乃は混戦のゴール前から抜け出し、姿を現す。そして、左サイドへ走りながら舞子からのパスを受け、ドリブルで駆け上がる。
僅かに乱れた髪を靡かせながら。
追う中町商業高校の選手を突き放し、綾乃は進む。そして、深い位置からクロスを上げる。
ゴール前に山取東高校の一人の選手が走る。ボールはその選手の丁度目の前へ。
右足がボールを捉える。そして、押し出す。
次の瞬間、山取東高校応援スタンドだけでなく、会場全体が沸く。
ゴールネットが揺れ、山取東高校の二得点目が記録された。ゴールを決めたのは舞子。彼女の元に選手が集まる。
しばらくし、アシストを決めた選手も。
「凄いね!」
笑顔でハイタッチを交わす舞子。
その相手は照れた表情を浮かべる。
「吉川先輩には到底及びません」
ピッチで躍動する高校公式戦初出場の一人の一年生は控えめにそう答えた。
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