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第二章 勝負の三年間 一年生編
第八話 入学後最初の試合
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四月二十七日。
山取東高校女子サッカー部一年生はこの日、練習試合に臨む。相手は同じ県南地区の岩浜西高校。
試合前の練習を終え、宮城が一年生部員を集める。
「君達にとっての高校入学後、初の試合。こちらは一年生のみという形。しかし、これにはしっかりとした狙いがあるということを理解してほしい。岩浜西高校さんは上級生の選手も出場する。経験という意味では相手が上。しかし、君達にしかないものが相手の上をいくかもしれない。それを存分に発揮してほしい」
「はい!」
一年生部員が声を揃えると、宮城は練習試合のスターティングメンバーを発表する。綾乃は緊張の面持ちで自身の名前が呼ばれる瞬間を待つ。
GK、DFの発表が終了し、MFの発表へ。一人の名前が読み上げられると同時に、綾乃の鼓動は高鳴る。
そして、スターティングメンバーMF、最後の一枠。
「一ノ瀬」
宮城がそう読み上げる。
綾乃の苗字。
宮城の声を聞き、小さく「ふぅ」と息をつく綾乃。同時に、鼓動の高鳴りは徐々に収まる。気持ちを引き締めるように、小さく頷くと、スターティングメンバーの発表が終了した。
「男女ともに去年、見事に躍進。更なる躍進には君達の力が必要だ。この練習試合は更なる躍進への第一歩」
綾乃達は真剣な表情で宮城を見つめる。
「最後に一言。全力でボールに食らいつけ」
「はい!」
綾乃達の心にエンジンが入った。
キックオフの時刻まで綾乃は即席のベンチ前で体を温める。すると、校舎の廊下に一人の男子生徒の姿が。綾乃は彼の目の前へ。
「宮本さん!」
その男子生徒は潤だった。
「練習が休みだから観に来たんだ。宮城先生に許可を取って。綾乃ちゃんが試合でプレーする姿って俺達はなかなか観ることはないからね」
綾乃は口元を緩めると、軽く目を閉じる。
「恥ずかしいプレーをお見せするわけにはいきませんね…」
囁くように綾乃が言う。それからすぐに、ゆっくりと目を開ける。そして、視線を潤へ。
綾乃の緩めた口元が動く。
「サッカー選手としての一ノ瀬綾乃の姿をお見せします」
同時に、山取東高校のベンチで美幸と美智恵がハイタッチを交わす。そして、彼女達は綾乃の元へ。
「絶対勝とうね、綾乃ちゃん!」
美幸が笑顔で言葉を掛ける。
綾乃は美幸をじっと見つめる。そして、微笑みながら小さく頷く。
「ええ!絶対勝ちましょう!」
綾乃の言葉と同時に、日差しが強くなる。そして、気温が若干上がった。
それは、グラウンド内のボルテージが上がった瞬間だったのかもしれない。
山取東高校女子サッカー部一年生はこの日、練習試合に臨む。相手は同じ県南地区の岩浜西高校。
試合前の練習を終え、宮城が一年生部員を集める。
「君達にとっての高校入学後、初の試合。こちらは一年生のみという形。しかし、これにはしっかりとした狙いがあるということを理解してほしい。岩浜西高校さんは上級生の選手も出場する。経験という意味では相手が上。しかし、君達にしかないものが相手の上をいくかもしれない。それを存分に発揮してほしい」
「はい!」
一年生部員が声を揃えると、宮城は練習試合のスターティングメンバーを発表する。綾乃は緊張の面持ちで自身の名前が呼ばれる瞬間を待つ。
GK、DFの発表が終了し、MFの発表へ。一人の名前が読み上げられると同時に、綾乃の鼓動は高鳴る。
そして、スターティングメンバーMF、最後の一枠。
「一ノ瀬」
宮城がそう読み上げる。
綾乃の苗字。
宮城の声を聞き、小さく「ふぅ」と息をつく綾乃。同時に、鼓動の高鳴りは徐々に収まる。気持ちを引き締めるように、小さく頷くと、スターティングメンバーの発表が終了した。
「男女ともに去年、見事に躍進。更なる躍進には君達の力が必要だ。この練習試合は更なる躍進への第一歩」
綾乃達は真剣な表情で宮城を見つめる。
「最後に一言。全力でボールに食らいつけ」
「はい!」
綾乃達の心にエンジンが入った。
キックオフの時刻まで綾乃は即席のベンチ前で体を温める。すると、校舎の廊下に一人の男子生徒の姿が。綾乃は彼の目の前へ。
「宮本さん!」
その男子生徒は潤だった。
「練習が休みだから観に来たんだ。宮城先生に許可を取って。綾乃ちゃんが試合でプレーする姿って俺達はなかなか観ることはないからね」
綾乃は口元を緩めると、軽く目を閉じる。
「恥ずかしいプレーをお見せするわけにはいきませんね…」
囁くように綾乃が言う。それからすぐに、ゆっくりと目を開ける。そして、視線を潤へ。
綾乃の緩めた口元が動く。
「サッカー選手としての一ノ瀬綾乃の姿をお見せします」
同時に、山取東高校のベンチで美幸と美智恵がハイタッチを交わす。そして、彼女達は綾乃の元へ。
「絶対勝とうね、綾乃ちゃん!」
美幸が笑顔で言葉を掛ける。
綾乃は美幸をじっと見つめる。そして、微笑みながら小さく頷く。
「ええ!絶対勝ちましょう!」
綾乃の言葉と同時に、日差しが強くなる。そして、気温が若干上がった。
それは、グラウンド内のボルテージが上がった瞬間だったのかもしれない。
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