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第2章
02-3 ちょっとだけ大学見学
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4月最後の日曜日。
午後1時過ぎ、自室で本を読んでいると、スマホに翼咲単語兄さんから電話がかかってきた。
「すまない、紅優単語。僕の机にあるファイルを大学まで持ってきてくれないか。紙袋に入っているやつだ」
翼咲兄さん、今日は大学にいるんだ? 日曜日なのに大変だな。
翼咲兄さんの大学までは、家からだと電車を使って40分ほどで行ける。
「わかりました」
でも家族といっても、大学の中にまで入れないと思う。
そうつげると、
「そうだな、キャンパスの南側にカフェテリアがあるんだ。そこなら誰でも入れるから、1時間後にそこで待っていてくれるか」
電話を切り、おれは翼咲兄さんの部屋に入る。
机の上……勉強机の上に、紙の袋が置かれたいた。
おれはその紙袋を手に取り、一応開けてみる。
ファイルを持ってきてって言ってたから、確認したほうがいいだろう。
紙袋の中には、ひとまとめにされたコピー用紙が20枚ほど入っていた。
これがファイルかな?
パッと見で英語ではない外国語で書かれたなにかだったけど、医学に関係したものなんだろうな。
1時間後に大学のカフェテリアで。
そこまで急がなくても大丈夫だ。
おれは外出用の上着だけはおり、財布、スマホ、頼まれた紙袋。ちゃんと確認して家を出た。
大学の最寄駅に到着したのは、約束の時間の20分前だった。考えてた以上に速くついたな。
大学は駅からすぐ。というか、改札を出たらもう見えていた。
南側のカフェテリア。
ここは、どこ側なんだ?
と思ったけど、少し大学に近づいただけで、「南門」と書かれた看板を見つけることができた。
そして、「カフェ」と書かれた看板を掲げた建物が門をくぐったすぐそばにあって、おれは迷うことなく目的地に到着できた。
まだ、約束の時間まで15分以上ある。どうしよう。
大学の敷地の中に入るには、ゲートみたいなところがあって、学生の人たちは電子カードのようなものでゲートを開けているように見える。
今日は日曜日なのに、大学には結構人がいるものなんだな。
中には入れなくても、少し辺りを歩くだけでもおれにとっては珍しいものがたくさん見れて、大学ってこんなところなんだと知れて楽しかった。
と、ゲートの奥から待ち合わせの相手が現れた。
「翼咲兄さん」
おれは彼の名を呼んで手を振る。
兄さんもおれに気がついて、手を振り返してくれた。
隣に女の人を連れている。誰だ? 彼女がいないのは聞いているから、友達かな。
そう思いながらふたりが近づいてくるのを待っていたけど、
「すまないな、紅優」
目の前まで来た翼咲兄さんと女の人。
というか女の人。
なに、この人。女神かなんかなの? めちゃくちゃ美人なんだけど!?
スタイルも完璧だし、ホント人間じゃないくらいにキレイだ。隣にいる翼咲兄さんが霞んじゃうくらいの美人で、人間離れした美しさだった。
「こんにちは、緋水緑単語くんの弟さんよね?」
女神がおれに声をかけてきた。
「は、はいっ。兄がいつもお世話になっておりますっ!」
あまりの緊張で、声が上ずってしまう。こんな美人に声かけられるなんて、きっと、一生に一回あるかないかの経験だ。
「まぁ、しっかりした弟さんね。くすくすっ」
上品に笑う女神。うっとりしちゃうくらい美しい。
「でしょう? よくできたほうの弟ですからね」
翼咲兄さんが女神につげる。
「なにそれ、よくできてない弟さんもいるの?」
「いますよ? こいつの下に」
ぼーっと女神に見とれているおれの手から、翼咲兄さんが紙袋を奪い、それを女神に渡す。
受け取った女神は中を確認してうなずき、
「ありがとうね、よくできたほうの弟くん」
おれに笑いかけてくれた。
おれは、
「は、はい……」
としかいえなかった。
紙袋を手に、おれと翼咲兄さんに手を振ってから、ゲートの向こうへと歩いていく女神。
女神の姿が完全に見えなくなるまで、おれは動けなかった。
「なんですかあの人。なんの女神ですか?」
おれの問いに翼咲兄さんは苦笑して、
「僕の先輩だよ。医学部の」
「はぁ、すごい存在感ですね。圧倒されました」
「美人だろ? 将来は女医さんだよ?」
「美人だとは思いますけど、あそこまでいっちゃってると、現実世界の住人とは思えませんよ」
というか、女医さんになるの? あんなお医者さんがいたら、病気になってまで通う人が大量に出てくると思うけど。
はぁ、世の中には「怪物」がいるもんなんだな。いや、「女神」か。
あんな超絶美人とおれに、これ以上の接点も関係も生まれないだろう。
おれは翼咲兄さんにカフェテリアでパフェとコーヒーをおごってもらって、それを食べてから帰宅した。
午後1時過ぎ、自室で本を読んでいると、スマホに翼咲単語兄さんから電話がかかってきた。
「すまない、紅優単語。僕の机にあるファイルを大学まで持ってきてくれないか。紙袋に入っているやつだ」
翼咲兄さん、今日は大学にいるんだ? 日曜日なのに大変だな。
翼咲兄さんの大学までは、家からだと電車を使って40分ほどで行ける。
「わかりました」
でも家族といっても、大学の中にまで入れないと思う。
そうつげると、
「そうだな、キャンパスの南側にカフェテリアがあるんだ。そこなら誰でも入れるから、1時間後にそこで待っていてくれるか」
電話を切り、おれは翼咲兄さんの部屋に入る。
机の上……勉強机の上に、紙の袋が置かれたいた。
おれはその紙袋を手に取り、一応開けてみる。
ファイルを持ってきてって言ってたから、確認したほうがいいだろう。
紙袋の中には、ひとまとめにされたコピー用紙が20枚ほど入っていた。
これがファイルかな?
パッと見で英語ではない外国語で書かれたなにかだったけど、医学に関係したものなんだろうな。
1時間後に大学のカフェテリアで。
そこまで急がなくても大丈夫だ。
おれは外出用の上着だけはおり、財布、スマホ、頼まれた紙袋。ちゃんと確認して家を出た。
大学の最寄駅に到着したのは、約束の時間の20分前だった。考えてた以上に速くついたな。
大学は駅からすぐ。というか、改札を出たらもう見えていた。
南側のカフェテリア。
ここは、どこ側なんだ?
と思ったけど、少し大学に近づいただけで、「南門」と書かれた看板を見つけることができた。
そして、「カフェ」と書かれた看板を掲げた建物が門をくぐったすぐそばにあって、おれは迷うことなく目的地に到着できた。
まだ、約束の時間まで15分以上ある。どうしよう。
大学の敷地の中に入るには、ゲートみたいなところがあって、学生の人たちは電子カードのようなものでゲートを開けているように見える。
今日は日曜日なのに、大学には結構人がいるものなんだな。
中には入れなくても、少し辺りを歩くだけでもおれにとっては珍しいものがたくさん見れて、大学ってこんなところなんだと知れて楽しかった。
と、ゲートの奥から待ち合わせの相手が現れた。
「翼咲兄さん」
おれは彼の名を呼んで手を振る。
兄さんもおれに気がついて、手を振り返してくれた。
隣に女の人を連れている。誰だ? 彼女がいないのは聞いているから、友達かな。
そう思いながらふたりが近づいてくるのを待っていたけど、
「すまないな、紅優」
目の前まで来た翼咲兄さんと女の人。
というか女の人。
なに、この人。女神かなんかなの? めちゃくちゃ美人なんだけど!?
スタイルも完璧だし、ホント人間じゃないくらいにキレイだ。隣にいる翼咲兄さんが霞んじゃうくらいの美人で、人間離れした美しさだった。
「こんにちは、緋水緑単語くんの弟さんよね?」
女神がおれに声をかけてきた。
「は、はいっ。兄がいつもお世話になっておりますっ!」
あまりの緊張で、声が上ずってしまう。こんな美人に声かけられるなんて、きっと、一生に一回あるかないかの経験だ。
「まぁ、しっかりした弟さんね。くすくすっ」
上品に笑う女神。うっとりしちゃうくらい美しい。
「でしょう? よくできたほうの弟ですからね」
翼咲兄さんが女神につげる。
「なにそれ、よくできてない弟さんもいるの?」
「いますよ? こいつの下に」
ぼーっと女神に見とれているおれの手から、翼咲兄さんが紙袋を奪い、それを女神に渡す。
受け取った女神は中を確認してうなずき、
「ありがとうね、よくできたほうの弟くん」
おれに笑いかけてくれた。
おれは、
「は、はい……」
としかいえなかった。
紙袋を手に、おれと翼咲兄さんに手を振ってから、ゲートの向こうへと歩いていく女神。
女神の姿が完全に見えなくなるまで、おれは動けなかった。
「なんですかあの人。なんの女神ですか?」
おれの問いに翼咲兄さんは苦笑して、
「僕の先輩だよ。医学部の」
「はぁ、すごい存在感ですね。圧倒されました」
「美人だろ? 将来は女医さんだよ?」
「美人だとは思いますけど、あそこまでいっちゃってると、現実世界の住人とは思えませんよ」
というか、女医さんになるの? あんなお医者さんがいたら、病気になってまで通う人が大量に出てくると思うけど。
はぁ、世の中には「怪物」がいるもんなんだな。いや、「女神」か。
あんな超絶美人とおれに、これ以上の接点も関係も生まれないだろう。
おれは翼咲兄さんにカフェテリアでパフェとコーヒーをおごってもらって、それを食べてから帰宅した。
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