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第2章

22話

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「それは本当ですか」

「はい。
 残念ながら事実でございます」

「おのれ、オットー。
 護るべき民を人質にするとは!
 見下げ果てた奴!」

 レーナは帝国軍を領外で迎え撃つべく、急いで軍を出陣させた。
 同時にアローン・ワイス副騎士団長の献策を受けて、冒険者上がりの騎士と徒士を大量に斥候として派遣した。
 敵の正確な情報を得ることが、戦いの勝利には必要不可欠だと言う事を、三年間に大魔境冒険経験で得ていたのだ。

 だがその斥候がもたらした情報は、レーナが予想もしていない事だった。
 事もあろうに、帝国軍大将のオットーは、帝国領内に商売に入っていた大公国民を捕らえて人質にしたのだ。

 いや、単に人質にしただけでなく、女子供の別なく木に釘で打ち付けて晒し者にしていたのだ。
 いや、それだけでなく、老若男女問わず、日夜兵達の慰み者にして、輪姦させていたのだ。
 それを聞いたレーナの怒りが爆発した。

「フィン。
 アローン。
 テオ。
 助けに行きますよ」

「罠だと言っても、聞き入れてもらえないでしょうね」

「聞き入れるような、仁道に反した主君になって欲しいのですか?
 アローン」

「参謀としては、聞き入れて欲しい気もしますが、騎士としては、助けに行くと言って頂けて、心から誇りに思っております」

「だがアローン。
 実際問題どうするよ?
 レーナ様を危険に晒すわけにはいかないぞ」

 熱血漢だが、同時に騎士としての礼節も大切にする、騎士団長のフィン・ユングがアローンに問いかけた。

「俺に任せろ。
 オットーは卑怯で臆病な奴だ。
 俺が奴に迫れば、必ず逃げる。
 大将が逃げれば、強制的に集められた貴族の兵など総崩れだ」

「そうだな。
 他の者達が踏ん張っていれば、自分達だけ逃げる事など出来ない。
 だが、いったん誰かが逃げ出せば、わずかな勇気も砕けてしまうだろう」

 何時も先駆けを務め、ただ一騎で敵の中に斬り込むテオ・メラ―が決意を語れば、団長のフィンも同意した。

「そうですね。
 むりやり徴兵された者達には、領地で家族が待っている事でしょう。
 死ぬことは勿論、怪我をしても、後々の生活に支障が出るはずです。
 五体無事で領地に帰りたいのが人情でしょう」

「そうですね。
 姫様の申される通りでしょう。
 臆病などと言っては可哀想ですな。
 むりやり兵に仕立てられた民は、我らとは違うのでしたな」

 フィンがレーナの言葉に同意し、少し反省した返事を返した。

「では、今回は手加減して攻めましょう。
 大勢で攻め込めば、どうしても領民兵を巻き込んでしまいます。
 ですが我一騎ならば、領民兵を無視して、騎士や徒士だけを狙うことが出来ます」

「それでは、テオが危険すぎませんか?」

「大丈夫です。
 大魔境の魔獣の群れに比べれば、いかほどの事もありません」
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