上 下
17 / 52
第1章

16話

しおりを挟む
「どう言う事だ、シューベルト侯爵。
 貴君がノアを逃がしたのか。
 帝国とグルになって、余と大公国を愚弄するか!」

「滅層もない。
 臣が殿下を愚弄するなど、絶対にございません。
 ノアの馬鹿が、勝手に逃げ出したのでございます」

「では、決闘逃亡罪で、死罪として構わないのだな。
 シューベルト侯爵家の名誉が地に落ちるが、それでいいのだな」

「恐れながら殿下。
 ノアは既に勘当しておりまして、シューベルト侯爵家とは何の関係もございません」

「シューベルト侯爵。
 矢張り貴君は、大公国と余を愚弄しているのだな。
 ノアの勘当届など、何処にも出ておらんではないか!」

「いえ、ノアがレーナ嬢に無礼を働いて直ぐに、勘当しております。
 大公府に確かめて頂ければ分かります。
 ノアの逃亡にシューベルト侯爵家は関係ありません」

「では、ノアの決闘逃亡罪による、死罪は認めるのだな。
 賞金を懸けて、大公国と帝国に手配をする事を認めるのだな」

「認めます」

「では、ノアがシューベルト侯爵家の一員であった時に、レーナに対して無礼を働いた事も認めることになるが、それで構わないのだな」

「構いません」

「では裁定を下す。
 レーナを我が公女と知っていながら、度重なる無礼を働いたノアに対して、斬首を命じる。
 更に、決闘を申し込まれながら、卑怯にも逃亡した事、斬首の上にさらし首を命じる。
 ノアを捕らえた者は、生死を問わず賞金として銀千枚を与える」

「「「「「はっはぁぁぁ」」」」」

「まだだ。
 まだ裁定終っておらん。
 全てを知った上で、ノアにレーナへの愚弄を許したシューベルト侯爵家は、侯爵の地位を剥奪し、全ての家財を没収し、大公領から追放する」

「なぁ!
 不当だ!
 それは不当過ぎる!」

「黙れ、ゲオ!
 御前がユリアとレーナを殺せと言った事、一日たりとも忘れたことはない。
 余はこの日を一日千秋の思いで待っていたのだ。
 死罪にならない事を感謝するのだな」

「おのれ、昏君がぁ!
 忌み子を生かしておいて、帝国に睨まれたではないか!
 しかも忌み子を嫡女にするだと?
 大公国を滅ぼす暗君がぁ!」

「黙れ不忠者!
 余を昏君、暗君と呼ぶなら、御前は売国奴だ!
 大公国は、帝国の譜代ではないぞ。
 帝国に望まれて、傘下に加わっただけだ。
 シューベルト侯爵家も帝国の臣ではない。
 大公家の加護の下で、大魔境の災厄を逃れてきたのではないか!」

「う!
 それは、大昔の話だ。
 今の大公国は、帝国の庇護なしでは成り立たぬ」

「そこまで言うのなら、地獄で確かめよ」

「え?」

 シューベルト侯爵のゲオ・シューベルトは、反乱の罪でその場で斬られた。
 シューベルト侯爵家は、先に逃亡したノア以外皆殺しとなった。
 大公殿下の恩情で、拷問などは行われなかったが、シューベルト侯爵の血縁縁者は皆殺しとなった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

王太子が悪役令嬢ののろけ話ばかりするのでヒロインは困惑した

葉柚
恋愛
とある乙女ゲームの世界に転生してしまった乙女ゲームのヒロイン、アリーチェ。 メインヒーローの王太子を攻略しようとするんだけど………。 なんかこの王太子おかしい。 婚約者である悪役令嬢ののろけ話しかしないんだけど。

婚約破棄の上に家を追放された直後に聖女としての力に目覚めました。

三葉 空
恋愛
 ユリナはバラノン伯爵家の長女であり、公爵子息のブリックス・オメルダと婚約していた。しかし、ブリックスは身勝手な理由で彼女に婚約破棄を言い渡す。さらに、元から妹ばかり可愛がっていた両親にも愛想を尽かされ、家から追放されてしまう。ユリナは全てを失いショックを受けるが、直後に聖女としての力に目覚める。そして、神殿の神職たちだけでなく、王家からも丁重に扱われる。さらに、お祈りをするだけでたんまりと給料をもらえるチート職業、それが聖女。さらに、イケメン王子のレオルドに見初められて求愛を受ける。どん底から一転、一気に幸せを掴み取った。その事実を知った元婚約者と元家族は……

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

【完結】ドケチ少女が断罪後の悪役令嬢に転生したら、嫌われ令息に溺愛されました。

やまぐちこはる
恋愛
仁科李依紗は所謂守銭奴、金を殖やすのが何よりの楽しみ。 しかし大学一年の夏、工事現場で上から落ちてきた鉄板に当たり落命してしまう。 その事故は本当は男子学生の命を奪うものだったが、李依紗が躓いた弾みで学生を突き飛ばし、身代わりになってしまったのだ。 まだまだ寿命があったはずの李依紗は、その学生に自分の寿命を与えることになり、学生の代わりに異世界へ転生させられることになった。 異世界神は神世に現れた李依紗を見て手違いに驚くが今回は李依紗で手を打つしかない、いまさらどうにもならぬと、貴族令嬢の体を与えて転生させる。 それは李依紗の世界のとある小説を異世界神が面白がって現実化したもの。 李依紗も姉のお下がりで読んだことがある「帝国の気高き薔薇」という恋愛小説。 それは美しい子爵令嬢と王太子のラブストーリー。そして李依紗は、令嬢を虐めたと言われ、嫌われることになるありがちな悪役令嬢リイサ・サレンドラ公爵令嬢の体に入れ替わってしまったのだ。 =============================== 最終話まで書き終え、予約投稿済です。年末年始は一日3〜4話、それ以外は毎日朝8時に更新です。 よろしくお願い致します。

乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった

恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。 そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。 ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。 夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。  四話構成です。 ※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです! お気に入り登録していただけると嬉しいです。 暇つぶしにでもなれば……! 思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。 一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【完結】メンヘラ悪役令嬢ルートを回避しようとしたら、なぜか王子が溺愛してくるんですけど ~ちょっ、王子は聖女と仲良くやってな!~

夏目みや
恋愛
「レイテシア・ローレンス!! この婚約を破棄させてもらう!」 王子レインハルトから、突然婚約破棄を言い渡された私。 「精神的苦痛を与え、俺のことを呪う気なのか!?」 そう、私は彼を病的なほど愛していた。数々のメンヘラ行動だって愛の証!! 泣いてレインハルトにすがるけれど、彼の隣には腹黒聖女・エミーリアが微笑んでいた。 その後は身に覚えのない罪をなすりつけられ、見事断罪コース。塔に幽閉され、むなしくこの世を去った。 そして目が覚めると断罪前に戻っていた。そこで私は決意する。 「今度の人生は王子と聖女に関わらない!!」 まずは生き方と環境を変えるの、メンヘラは封印よ!! 王子と出会うはずの帝国アカデミーは避け、ひっそり魔法学園に通うことにする。 そこで新たな運命を切り開くの!! しかし、入学した先で待ち受けていたのは――。 「俺たち、こんなところで会うなんて、運命感じないか?」 ――な ん で い る ん だ。 運命を変えようともがく私の前に、なぜか今世は王子の方からグイグイくるんですけど!!   ちょっ、来るなって。王子は聖女と仲良くやってな!!

処理中です...